企業として事業を営むにあたり、「ヒト、モノ、カネ」は欠かすことのできない経営資源です。しかし、三菱リサーチ&コンサルティングが2019年に発表した「平成 30 年度中小企業の雇用状況等に関する調査研究報告書」によると、中小企業の約72.8%が人手不足を深刻な経営課題として頭を悩ませていることをご存知ですか?これは日本の労働力人口減少といった構造要因に影響を受けていると考えられています。このような潮流をうけ、従来の採用活動を実施するだけではなく、新たなアプローチを模索する企業の動きが見られるようになりました。中でも福利厚生の充実化は採用市場における競合他社との差別化や社員の定着率にも関わってくる要素の一つとなります。
今回は、社内改革の一環として福利厚生の見直しを行い、社員が納得のいく環境で働けるよう試行錯誤を重ねている株式会社タカサの鎗田様と小峰様にお話をお伺いしました。福利厚生を見直すきっかけや実際に導入したサービス、導入後に変化した点などをお伝えします。
目次
福利厚生が採用や定着率に与える影響
福利厚生と企業選択/退職理由の関係とは
株式会社リクルートキャリアは2018年12月に「就職先を確定する際に決め手になった項目」について調査を実施しました。その結果、「福利厚生の充実度」を挙げた学生が37.8%であり、「企業・業界の安定性」や「年収の高さ」を挙げた学生よりも多く、全体でも2番目に支持された項目であることが判明したのです。
また、転職サイト「ミドルの転職」が2008年に実施した「福利厚生」に関するアンケートにおいて、転職先を検討するときに「福利厚生を重視する」と回答した人は約74%と高い数値が出ています。
回答者からは「福利厚生の制度が整っていない企業は、他の雇用環境の面でもルーズな場合が多いように感じられるため」「社員に長く働いてもらいたいという企業の方針をはかる材料として重視している」といった声が挙がりました。
このように、採用・人材定着の両軸において福利厚生の充実度は働くモチベーションや満足度に直結する重要な要素であることが分かります。
中小企業における福利厚生の動向
三菱リサーチ&コンサルティングが2019年に発表した「平成 30 年度中小企業の雇用状況等に関する調査研究報告書」によると、81.4%の中小企業が法律で定められた社会保険料だけでなく、企業が任意で導入する福利厚生(法定外福利厚生制度)についても導入していると回答しました。ただし、福利厚生を設けていないと回答した企業の理由では「福利厚生にかかる費用を負担できないため」が 49.8%と最も多く、福利厚生で活用できるコストに限りのある中小企業ならではの課題が浮き彫りになっています。
各企業で福利厚生を整備する動きがみられるものの、大企業と比較すると十分とはいえないケースが多いといえるでしょう。
「充実した福利厚生」には何が必要?
多様な制度が利用できるよう整備することももちろん大事ですが、やみくもに複数の福利厚生を導入しないように気をつけましょう。社員が誰も利用せず、コストだけかさんでしまっては元も子もありません。コストと人員を多く割けない中小企業の場合、社員にとっても「充実した福利厚生」を整備するためにはニーズの高い制度に絞ることがポイントになります。
多様な福利厚生制度を導入する際の注意点
福利厚生を見直す場合、次の3点において問題ないか確認するようにしましょう。
導入コスト
継続的な運用が前提になるため、無理なく導入できるかランニングコストを算出するようにしましょう。また、安い費用で導入できる制度だったとしても、ニーズの低い制度を選んでしまうと利用率が伸びず、費用対効果が低い結果に終わります。
コストと社内でのニーズのバランスを考慮し、余分なコストを抑えつつ社員の要望を満たせるような制度を選定しましょう。
管理の手間
中小企業の場合、福利厚生を自社で全て管理することは時間的にも人員的にも負担が大きくかかってくるため、安定的な運用を考えると現実的な選択肢ではありません。そのため、導入後の手間や利用が簡単なサービスを導入することがポイントになります。この時、自主管理だけでなく制度に応じて外注を活用することで管理の手間を省けるでしょう。
満足度・利用率
福利厚生は「導入して終わり」ではありません。導入後も定期的に利用率や社員の声を調査し、より良い運用が出来ないか常に検討しましょう。特に利用率が低い場合は社内周知や制度の使いやすさに課題があることも考えられるため、都度改善案を試行することが重要です。
福利厚生サービスの導入で社員満足度はどう変わる?導入担当者へインタビュー
社員満足度を向上させるために着手した「社内改革」
──貴社では3年前から「社内改革」を推し進めていると伺いました。
鎗田
以前からローテクかつマンパワーで押し切るような現場のままで良くないよね、という漠然とした問題意識があったものの、現場で働く社員にとって何が一番問題に感じているかを知る機会はありませんでした。そこで、全社員向けにアンケートを実施し、生の声を聴きました。回答率は78%とかなり高く、そのほとんどが企業への不満を遠慮なくぶつけたものでした(苦笑)。様々な意見がありましたが、共通して「モチベーションを持って働けるような企業にしてほしい」という社員の思いが根底にあることを痛感しましたね。そこから2年かけてタスクの整理やプロジェクトの立ち上げを行い、現在も評価制度や待遇の見直しなどを筆頭に改革を進めています。
福利厚生を見直すきっかけと重視した選定基準
──福利厚生の見直しもこの社内改革のタイミングで行ったのでしょうか?
小峰
そうですね。これまでは福利厚生が喫緊の課題としてあがることもなければ、優先度の高い他の業務に人員とコストを割きたかったのでずっと放置していたのが正直なところです。
私は人事部なので、人材育成や採用領域から社内改革を推進する必要があったのですが、その時に「新卒採用において、福利厚生は企業選びの基準としてかなり重視されている」という事実を改めて突きつけられました。また、社員が毎日モチベーション高く働けるようにするためには正当な評価や待遇の他にも、楽しさを感じるような企業づくりも大事なんじゃないかと考えたのをきっかけに福利厚生を見直すようになりました。
──楽しさを感じる企業づくりで実現したい企業像とはどのようなものでしょうか?
鎗田
社員はもちろん、社員のご家族の方や地域の方からも「この会社で働いているとすごく楽しそうで良いよね」と思ってもらえるような雰囲気に溢れた企業ですね。元々弊社では地域の方が参加できるお祭りを開催したり、社員のお子様向けに開いたお薬体験教室では働くパパママの様子を見せたりしていました。これらのイベントの背景には「せっかくなら家族の方にも自社のことを気に入ってもらいたいし、『この会社楽しいね』って一緒に感じてもらえるような機会があると自社への愛着やモチベーションにもつながるんじゃないのかな」という気持ちがあります。
──社員だけでなく、ご家族にも気に入ってもらえるような企業は確かに素敵ですね。
鎗田
そのため、社内改革を期に新たに導入した福利厚生も、「せっかくなら社員だけでなくご家族の方にも利用していただけるものがいいな」という思いに合致したサービス内容だったのが導入の決め手となりました。
どのような福利厚生サービスを導入したのか
──導入したのはどのような福利厚生サービスなんですか?
小峰
ソフトバンク様が提供している「スマート福利厚生」です。弊社では割引サービス等が利用できるBenefit Stationにメリットを感じて契約しました。メインで活用できるBenefit Stationはグルメやショッピング、スポーツといった領域はもちろん、育児介護支援や自己啓発など多彩なコンテンツが用意されているので、誰もが利用しやすいサービスだと思います。
福利厚生サービス導入後の周囲の声
小峰
一番多く聞かれるのは「割引サービスがたくさんあるからお出かけするきっかけになる」という喜びの声です。食事やレジャーを家族と一緒に楽しむことで仕事の疲れもリフレッシュされるようです。なかでも映画を半額で視聴できるサービスは人気があります。家族と一緒に利用できるコンテンツはやはり満足度に直結すると感じましたね。また、コロナが流行ってなかなか外出が出来ない時期はe-Learningコンテンツが人気を集めました。余暇を有意義に使いたい社員のニーズにも応えられるのがいいなと思います。
今後の福利厚生への取り組み
鎗田
スマート福利厚生は利用できるコンテンツも豊富で、ご家族と一緒に過ごすプライベートな時間を充実させることが出来る制度だと感じています。プライベートが充実すると、その分仕事もまた頑張ろう、という気持ちにつながってくるのではないでしょうか。今後はより多くの社員に利用してもらえるよう社内周知を強化していきたいですね。また、こちらのサービスで利用できる施設割引やイベントを活用し、社員同士のコミュニケーションを活発化させる社内イベントの企画を積極的に打ち出すことで、社員全員を巻き込んだ楽しげな雰囲気に溢れる企業づくりを進めていきたいです。
社員満足度を向上させた「スマート福利厚生」とは?
「スマート福利厚生」の概要
「スマート福利厚生」は2018年9月よりソフトバンク株式会社が提供を開始したパッケージ型福利厚生サービスです。2020年4月時点で140万コンテンツを保有する業界No.1の総合福利厚生サービス・Benefit Stationをベースに、社員満足度UP、人材不足解消などの企業のニーズに合わせて下記サービスを組み合わせ、パッケージサービスとして利用することが可能です。
- 総合福利厚生「Benefit Station」
- ビジネス書要約「flier」
- 雑誌読み放題「ビューン@ for 福利厚生」
- 専門家相談窓口「専門家ProFile」
- ビジネスチャット「LINE WORKS」
- 安否確認サービス「安否確認bot for LINE WORKS」
- eラーニングサービス「BeneAcademy」
ワークライフバランスに取り組みたい企業や社員満足度を効率的に向上させたい企業からのニーズが高いサービスとなっています。
スマートSMEサポーターとは
中小企業の生産性向上を推進するITツールを提供するITベンダーなどを対象に、経済産業大臣が「情報処理支援機関」として認定する制度をスマートSMEサポーターと呼びます。
ソフトバンク株式会社は2019年4月にこのスマートSMEサポーター制度に認定されました。
スマート福利厚生も効率的な人材募集と離職防止に寄与し、担当者の管理の手間を省いたビジネスチャットを提供していることから、スマートSMEサポーターに認定された商材として公表されています。
人手も使用できるコストも限られた中小企業にとって、スマート福利厚生は人材獲得や社員の定着率改善といった業務課題を解決するのに最適なソリューションといえるでしょう。
コロナ禍における福利厚生サービスへのニーズの変化
福利厚生は社員食堂や社内研修支援など「出社しないと恩恵を得られない」ものが多い傾向にあります。
しかし、そのようなサービスの場合、コロナ禍では福利厚生のありがたみを実感する場面がどうしても少なくなります。今後は使える場面が制限されることなく、いつでも福利厚生のうまみを享受できるようなサービスへのニーズが高まると考えられます。
スマート福利厚生の場合、タカサ様事例でもみられた通り、自宅や休日でも利用できるe-Learningや宅配割引サービスの利用が伸びており、状況に応じて柔軟に活用できる部分が他の福利厚生にはない強みとなります。
まとめ
人手不足を解決するためには「この会社で働いてみたい」と思わせられるような差別化と、社員として長期的に働き続けられるような環境を整備することが重要になります。魅力的な福利厚生の導入および運用はこれらの課題を解決するポテンシャルを秘めています。導入の手間とコストの両方が抑えられたスマート福利厚生を活用し、人手不足の解消と社員満足度の二軸を一気通貫で改善してみませんか?
取材にご協力いただいたご担当者様/企業様
株式会社タカサ 鎗田吉正氏
専務取締役 営業開発部 部長
2020年10月に創業40周年を迎えるにあたり、社内改革を責任者として推し進めている。社員はもちろん、マネージャー層の業務上における役割や責任範疇を明確化し、正当で納得感のある評価制度や待遇の見直しを図ることで、モチベーション持って働ける職場作りを目指している。
株式会社タカサ 小峰健氏
人事部 担当者
属人的で形骸化した業務や紙ベースで運用している現場に課題を感じ、非効率な業務の見直しや生産性向上を目的に社内事務の電子化推進に取り組んでいる。
さらに、従業員向けの人事関係手続きマニュアルを作成することで、個別対応を都度行って発生していた労力や時間の軽減にも取り組んでいる。
お問い合わせ:https://www.takasa.co.jp/
ソフトバンク株式会社
通信事業を軸に様々なサービスソリューションを提供している。2018年9月よりスマート福利厚生の提供を開始。2019年4月にITツールの活用を通じ、中小企業の生産性向上を推進するスマートSMEサポーターに認定される。従業員数は約17,300人(2020年3月末時点)。
- 設立:1986年12月9日
- お問い合わせ(スマート福利厚生):https://www.softbank.jp/biz/other/smart_fukuri/