労働安全衛生法では一定の基準に該当する事業場に対して、安全委員会や衛生委員会、またはそれらを統合した安全衛生委員会を設置することを義務付けています。これらを設置する目的は労働災害防止や健康増進の取り組みを労使で一体となって行うことです。毎月1回以上の開催が義務付けられているため、必要なメンバー構成や審議内容についておさらいしましょう。今回は、安全衛生委員会と衛生委員会の意味、設置が必要な基準、必要なメンバー、審議の内容と設置の流れ、コロナ禍における対応について解説していきます。
目次
かつて、労働者の健康や安全を守るための環境整備の多くは、企業側が舵をとって行っていました。そのため、企業から労働者への一方通行な方策になりがちで現場の状況に適応していない場合もあり、それが原因で労働者が健康被害や労働災害に遭ってしまう例もみられたのです。
そこで、国は労働者の健康や安全を守るためには企業と労働者双方の意見交換が必要と考え、1972年6月に労働安全衛生法を公布し、一定の基準に該当する企業に対して安全衛生委員会の設置を義務付けました。
このように、安全衛生委員会は、企業が行う健康や安全に関する環境整備に対し、労働者が現状を報告し改善を求め環境整備に反映させる場として重要な役割を果たしています。
安全衛生委員会の審議内容は、労働安全衛生規則によって次のように定められています。なお以下は抜粋ですので、詳細は厚生労働省ホームページをご参照ください。
具体的なテーマとしては、職場の危険箇所の確認と対策やヒヤリハット事例、労働災害の事例、長時間労働やセクハラ・パワハラの有無、ストレスチェックなどが挙げられます。
安全衛生委員会には大きくわけて以下の三つのルールがあります
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委員会の設置基準は、安全委員会と衛生委員会で異なります。両方の基準に該当する企業は、それぞれの委員会をまとめて安全衛生委員会として開催することが認められています。
すべての業種において、常時使用している労働者が50人以上の場合は設置が必要です。
安全衛生委員会の構成員は、企業が自由に選べるわけではなく労働安全衛生法により規定されています。具体的には以下のとおりです。
なお、それぞれの委員会で、議長にあたる「統括安全衛生管理者(1名)」以外の構成員は企業側と労働者側(労働組合がある場合は組合からの推薦者、ない場合は従業員の過半数の代表による推薦者)が半数ずつになるように選出しなければなりません。人数には定めがないため、企業の規模により自由に決められます。
安全衛生委員会を設置する場合、次のような流れで行うと効率的です。
新型コロナ感染症の感染拡大にあたり、安全衛生委員会の実施について厚生労働省が2020年6月末までの対応としてホームページに記載していたのは、テレビ電話による会議形式にすることや開催を延期するなどの弾力的な運用を認める、というものでした。しかし現在は、法令に基づき毎月1回以上開催する必要があるため、三密を回避して充分な感染防止対策を講じたうえで開催するように、という記載となっています。
また、コロナ禍を議題としてとりあげ、積極的な調査審議に努めるよう求めています。新型コロナ感染症の感染拡大は従業員全員の健康に関わる重大事項であり、感染拡大防止対策について全員が高い意識を持つ必要があります。安全衛生委員会により対策を検討し周知徹底して、企業内での感染拡大を防ぎましょう。
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この記事では、労働者安全衛生法に定められた安全委員会、衛生委員会、安全衛生委員会について解説しました。これまでも企業は労働者の健康や安全に配慮した環境整備に努めてきました。しかし、近年では社会構造の変化や技術の進歩により働き方にも大きな変化が訪れています。今一度労働者の労働環境について見直す時期がきているといえるでしょう。それには、安全衛生に対する正しい取り組みが大切です。安全衛生委員会を形骸化させないよう、計画的に取り組んでいきましょう。
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