昇進試験とは、社員が昇進するために必要な試験のことで、職務に必要な知識やスキル、経験を評価するために行われます。昇進試験を実施することで、組織内の優秀な社員を発掘し、キャリアアップの機会を提供することができます。しかし、試験の内容や設計によっては、公平性や透明性が担保されていない場合もあるため注意が必要です。今回は、昇進試験の目的や意義、試験の設計や評価基準、実施のポイントについて解説します。
目次
そもそも「昇進」とは、職務上の地位である職位が上がることです。例えば、一般社員から係長、係長から課長、課長から部長などへ役職が上がることを昇進といいます。一方、「試験」は人の知識や能力を検査することです。入学試験や就職試験をイメージすると分かりやすいでしょう。
すなわち昇進試験とは、昇進させるか否かを判断するために知識や能力を検査するための試験です。昇進試験では、職務を遂行するための知識や能力は十分か、役職が上がることで必要となる統率力や管理能力は備わっているかなどを確認します。
対して「昇格」とは、職能資格制度において資格が上昇することです。職能資格制度では、社員の職務遂行能力を判断し、能力にあわせて等級を決定します。昇格試験とは、社員の職務遂行能力を検査し、等級の上昇を判断するための試験です。
ただし、職務遂行能力の上昇とともに等級および給与は上昇しますが、役職とは連動しません。同一等級を有する社員の中から、昇進試験によって役職にふさわしい社員を選抜するのが一般的です。また、職能資格制度では職務遂行能力を判断基準としているため、一度上がった等級が下がることは基本的にありません。
昇進と昇格の違いについて改めておさらいすると、下記のとおりです。
すなわち、昇進試験と昇格試験の違いは下記のようになります
ここで注意しなければならないのが、昇格試験に合格し等級が上がったからといって、職位が上がるとは限らないという点です。上位の役職に空きがなければ、昇進しないことも十分考えられます。昇進するためには、あくまで昇進試験に合格しなければなりません。昇進と昇格は必ずしも連動しない、ということを覚えておきましょう。
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昇進試験を実施する目的は、上位の役職にふさわしい知識と能力を有しているかを見極めることです。加えて、管理職には配下の社員をまとめ上げる統率力と管理能力が求められます。昇進試験では、リーダーシップとマネジメント能力を有していることを確認するのが一般的です。
勤続年数や実務経験が長いからといって、これらの能力が優れているとは限りません。プレイヤーとしては優秀でも、マネージャーには向かないケースも考えられます。ミスマッチが起こると能力を十分発揮できないだけでなく、社員のモチベーション低下にもつながりかねません。
年功序列などで安易に役職を決めるのではなく、昇進試験でしっかりと適性を見極めることが重要です。
リーダーシップとマネジメントについて、以下の記事にまとめています。より詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
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さらに、昇進は公平公正に判断しなければなりません。基準が明確ではない昇進は、社員の納得を得にくく不満の原因となります。例えば、上司の主観や独断で昇進を判断してしまうと、社員のモチベーションは低下するでしょう。判断した上司だけでなく、昇進した社員にも批判が集まる恐れがあります。
社員の納得を得るためには、昇進の基準を明確にする必要があります。昇進試験によって、客観的かつ公平公正に判断することが重要です。
昇進試験は、キャリアアップの機会を与えるという観点でも非常に重要です。昇進は、社員にとって最も分かりやすい評価の一つです。昇格試験による客観的な判断に基づく昇進は、日頃の頑張りが正しく評価されたという印象を与え、社員のモチベーションアップに大きく寄与します。
昇進した社員は会社への帰属意識や仕事への責任感が高まり、より一層の活躍が期待できるでしょう。昇進試験という制度によって、全社員に広く成長の機会を与えるということが重要です。
適性検査とは、社員の職務遂行能力や指向性を判断するための検査です。主な適性検査には下記のものがあります。
能力適性検査は、文字通り社員が有している能力を確認するための検査です。昇進後の職務を滞りなく遂行できるだけの知識やスキルを有しているかを確認します。
性格適性検査は、社員の性格・特性・人柄などを確認するための検査です。管理職としてふさわしい人格や価値観を有しているかを確認します。
指向適性検査は、職務態度やキャリア指向など、社員の指向性を確認するための検査です。嗜好や興味関心など、よりパーソナルな事柄を確認します。
通常、適性検査は一問一答型式や選択型式で行われるため、社員の適性を数値化して客観的に判断することが可能です。
面接では、経営陣や役員が社員と直接コミュニケーションを取って、昇進に値する適正や意欲を有しているかを確認します。面接は面接官の主観が入るため、適性検査より客観性が劣る手法です。しかし、管理職にふさわしい人材かを総合的に判断するためには、重要な評価手法となっています。
小論文では、課題発見能力・課題解決能力・リスク管理・マネジメント・チームワーク・リーダーシップ・コンプライアンスなどについて問われるのが一般的です。いずれも、昇進に資する適性やポテンシャルを有しているかを判断するためのテーマとなっています。社員の問題意識や論理的思考能力を判断するためにも重要な手法です。
昇進の可否は、適性検査・面接・小論文などの昇進試験だけでなく、人事評価や勤続年数も考慮し多角的に判断することが重要です。面接を行う際は必ず複数人の面接官をアサインし、客観的に判断するようにしましょう。なお、実力主義や成果主義が主流となっている現代では、年功序列の人事では社員の納得を得られません。単に勤続年数だけを見るのではなく、必ず会社への貢献度を考慮するようにしましょう。
人事評価制度について、以下の記事にまとめています。より詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
【人材育成を目指す人事担当者必見!】人事評価制度 構築・運用マニュアル
人材要件が明確ではないまま昇進試験を実施すると、基準が曖昧で多くの社員は不満を覚えるでしょう。納得感のある人事とするためには、管理職にはどのような人材を求めているのか、人材要件を明確化する必要があります。会社が求める人材が明確であれば、社員は要件を満たすよう必要な努力をします。当然ですが、昇進試験は人材要件を満たしていることを確認できるような設計でなければなりません。なお、人材要件は会社の事業戦略によって変化するため、必要に応じて昇進試験の内容も見直しましょう。
昇進の可否を判断する際には、ポテンシャルも考慮しましょう。現在有している知識や能力が昇進に値するかを確認することはもちろん重要ですが、昇進後の役職で必要となるスキルについても適切に判断しなければなりません。特に、管理職には高い統率力や管理能力などが必要です。昇進後は現在の役職とは異なる能力が求められるため、現在のスキルとポテンシャルを切り分け、個別に見極める必要があります。
今回は、昇進試験について解説しました。昇進試験とは、職務上の地位である役職を上げるか否かを判断するために、知識や能力を検査する試験です。昇進試験には、適性を見極める・公平公正に判断する・社員に成長の機会を与えるなどの目的があります。
実施方法には適性検査・面接・小論文などがありますが、昇進試験だけでなく人事評価や勤続年数も考慮し、多角的に判断しなければなりません。また、管理職として活躍できるポテンシャルを有しているかを考慮するのも重要です。納得感のある人事を実現するには、会社が求める人材要件を明確化し、客観的かつ公平公正な昇進試験を設計しましょう。
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