長期的な視野で企業価値を向上させるために不可欠なコーポレート・ガバナンスは、上場審査等の場面で整備が求められます。一方で近年の大企業の不祥事等で取り沙汰され、各企業のコーポレート・ガバナンスは見直しと拡充が迫られています。
そこでsomu-lierでは、法務担当者に向け、コーポレート・ガバナンスの基本ルールについて、マニュアルを作成しました。今回は、「コーポレートガバナンス・コード」における5つの基本原則について解説します。
目次
「コーポレート・ガバナンス」とは、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義されています。
東証一部・二部、マザーズ、JASDAQのすべてにおいて企業のコーポレート・ガバナンスが重視されており、適切な整備が求められています。
「コーポレートガバナンス・コード」は、東京証券取引所と金融庁が協力して開催した有識者会議によって平成27年に定められたものであり、企業がコーポレート・ガバナンスを実現するための指標となっています。「コーポレートガバナンス・コード」では、企業が行うべき、下記のような様々な原則を取り決めています。
マニュアルでは、コーポレートガバナンス・コードに取り上げられた5つの「基本原則」、30の「原則」、38の「補充原則」について、また企業の中長期的な成長にかかわる経営指標に関して、詳しく解説しています。今回は以上に挙げた5つの基本原則について簡単に解説していきます。
企業が持続的に成長を遂げるためには、資本提供者である株主との協働が出発点となりま す。そこで、株主の信頼を獲得して経営基盤を強化するためにも株主の権利を確保することは絶対条件となります。会社法において、株主は主に以下の 3 つの権利が与えられています
尚、少数株主のみに認められる権利は行使に懸念が生じやすいため、十分に配慮を行う必要があります。
企業は、以上に挙げたような株主の権利の重要性を認識し、権利確保のため適切に対応し なければなりません。特に、株主総会においては、定款の変更などの企業の根本に関わる事項、役員人事や株主の利害 に直結する内容について、取り決めを行うので、株主の権利行使に対する十分な対応が求められます。株主の権利と平等性を確保するためにも以下のようなポイントを心がけましょう。
マニュアルでは、株主の権利と平等性を確保するための7つの原則がまとめられており、以上に挙げたのはその一部となります。株主と企業の間で摩擦を起こさずに、円滑に協働していくための術が詳しく記載されていますのでご覧下さい。
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企業は、以下に挙げるような様々な情報を法令に基づき開示することを求められ、投資家 の保護や市場における信頼性の獲得に努めなければいけません。
日本では特に非財務情報に関する開示が不十分であると指摘されており、これらに関して も利用者にとって有用性の高い情報を提供することが求められます。適切な情報開示と透明性の確保のために情報開示の充実と外部会計監査人の設置を行うことがポイントです。
企業はコーポレート・ガバナンスの実効性を有意的なものにするために次のような情報の開示を株主に対して主体的に行う必要があります。
海外投資家などの存在も考慮し、合理的な範囲において英語での情報公開をすることも大切です。
適正な監査を維持するために、企業は外部会計監査人を設置しなくてはなりません。監査を設置するにあたって、以下の点注意しましょう。
企業の取締役会は株主に対する受託者責任と説明責任を踏まえ、経営戦略の方針を示したり、リスクテイクを支える環境を整えたり、経営陣を監督したりする責任があります。具体的な取締役会の責務について解説していきます。
経営理念などを基に会社の方向性を定める必要があります。この際に取締役会は次のような機能を満たしている必要があります。
取締役会は経営陣のリスクテイクを支える環境を整える必要もあります。このリスクテイクは企業が持続的に成長するため、そして企業価値を損なわないようにするために行います。こうした管理の甲斐もあって初めてコーポレート・ガバナンスが実現されるのです。
取締役会は独立した立場から、以下の点において経営陣・取締役を監督することが求められます。
こうした監督による評価や管理はリスクテイクを支える環境整備のための基盤としても働くため、コーポレート・ガバナンスにとってとても重要な観点の1つになります。
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企業の持続的な成長を支援している利害関係者(ステークホルダー)は株主だけではなく、次に挙げるような各主体も含まれています。そこで、企業はこれらの各主体とともに、企業の社会的責任(CSR)等の取り組みについて適切な恊働に努める必要があります。
また、経営者・取締役会は、これらのステークホルダーの権利や、協働を促す立場を尊重する企業風土の醸成に貢献し、シーダーシップを発揮しなければなりません。そのような企業風土の醸成、リーダーシップの発揮を行うにあたって、実際の行動としては次のようなものが挙げられます。
近年問題となっている女性の社会活躍の促進や、経験、技能、属性などの多様性を確保することは企業の生産性を向上する上で以下の点で大きく役立ちます。これらを意識しながら労働環境を整備したり柔軟な働き方を導入したりすることで多様性のある風土作りを推進する必要があります。
企業は、以下に注意した上で内部通報に係る適切な体制整備を行わなければならず、取締役会はその運用状況を監督するべきとされています。
企業が株主との会話を取り入れる機会は株主総会だけに限りません。例えば、上場企業では株主からの対話、説明申し込みに対して適切に対応し、対話を促進するための体制を整えるべきであると言われています。
対話によって得られる効果は以下のものが挙げられます。
以上から分かるように、株主と企業の対話は一方通行のものではなく、企業にとっても利点があります。株主との対話を促進させて企業価値を向上させましょう。
株主の対話については以下の2つの原則が定められています。
企業と株主との間で対話を促進するためには以下の5つの点を記載すべき、と言われています。
ここから分かるように、対話の機会の確保とそれを支えるための基盤づくりが大切になってきます。
収益計画や資本政策等の方針、目標、具体的な実行計画に関して、株主に明確な説明を行う必要があります。
コーポレート・ガバナンスマニュアルは、下記からダウンロードできます。本資料をぜひ参考にして、コーポレート・ガバナンスを拡充させましょう!
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