アルムナイ採用とは、自社を退職した人を再雇用する採用手法のことを指します。アルムナイ採用には、自社をよく理解した人を採用できるといったメリットがあります。在籍経験を持っているため、他の初対面の従業員よりも企業理解が進んでいます。また、アルムナイ採用を導入することによって、採用コストを抑えることができます。広く応募者を集め新たな人材を採用するには、多くの時間とコストがかかります。しかし、アルムナイ採用ではこれまでの関係を活かしながら採用活動を行えるため、時間やコストを減らすことが可能になります。一方で、アルムナイ採用によって「退職してもまた職場に戻れる」といった意識が生まれ、退職のハードルを下げてしまうといったデメリットもあります。
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「アルムナイ採用」とは、自社を退職した人材を再雇用する採用手法です。「アルムナイ(Alumni)」は「アルムナス(Alumnus)」「アルムナ(Alumna)」の複数形で、日本語では「卒業生」や「同窓生」を意味します。人事の分野では、定年退職以外の理由で自社を退職した元社員を指すのが一般的です。終身雇用が当たり前の日本では、一旦会社を退職した元社員が再度同じ会社に就職するケースはあまりありませんでした。しかし、近年では優秀な人材を確保するため、元社員の能力を適切に評価し再度雇用する企業も増えています。何らかの理由で会社を退職した社員を積極的に迎え入れる制度が「アルムナイ採用」です。
アルムナイ採用が注目を集める背景には、深刻な人材不足があります。少子高齢化に伴い労働力が減少するなか、人材の確保は企業にとって喫緊の課題です。特に、優秀な人材は市場価値が非常に高いため、採用のハードルはどうしても高くなってしまいます。また、従来は新卒社員を一括で採用し、終身雇用を前提に育成していくのが当たり前でした。しかし、近年では価値観や働き方の多様化に伴い、キャリアアップを目的とした転職も一般的となっています。人材の流動性が高まるなか、効率的に優秀な人材を確保する方法がアルムナイ採用です。一定のスキルを持った退職者にアプローチすることで、マッチング精度の高い即戦力人材を効率的に確保できます。
アルムナイ採用以外に、何らかの理由で一旦会社を離れた元社員を採用する制度に「ジョブリターン制度」や「再雇用制度」などがあります。ジョブリターン制度とは、出産や育児、介護などやむを得ない家庭の事情などで退職した元社員を再度雇用する制度です。再雇用制度は「定年後再雇用制度」などとも呼ばれ、定年を迎え退職した元社員を、希望に従い再び雇用する制度を指します。アルムナイ採用やジョブリターン制度もあわせて、広義の「再雇用制度」というのも一般的です。ジョブリターン制度や定年後再雇用制度では、家庭の事情や定年でやむなく退職した元社員を再雇用する一方、アルムナイ採用はあくまで自発的に退職した元社員を再雇用する点が異なります。
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広く一般に求職者を募って採用活動を進めるには、一定のコストと時間が必要です。特に、市場価値の高い優秀な人材を確保するには、ダイレクトリクルーティングやヘッドハンティングなど、コストや時間のかかる方法を選択せざるを得ません。アルムナイ採用であれば採用コストを大幅に抑え、マッチング精度の高い即戦力人材を確保できます。退職者であれば自社に対する理解も深いため、研修コストや育成コストも最小限に抑えることが可能です。アルムナイ採用は、最小限のコストで優秀な人材を確保できるというメリットがあります。
アルムナイ採用は、一般的な求人採用に比べミスマッチが少ない点も大きなメリットです。たとえ優秀な人材であっても、社風や働き方、人間関係などのミスマッチが生じてしまうと、本来の能力を最大限発揮できないかもしれません。特に中途採用の場合は、前職との違いに違和感を覚え、働きにくさを感じてしまう可能性もあるため注意が必要です。一方、退職者を対象としたアルムナイ採用の場合は、自社で働いたことのある元社員を再雇用するため、ミスマッチは起こりにくいでしょう。「こんなはずではなかった」「想像と違った」といったミスマッチを防げることは、アルムナイ採用の重要なメリットです。
アルムナイ採用で再雇用する元社員は、自発的に自社を退職した人材です。スキルアップやキャリアアップのため、転職を選択した人材も少なくありません。他の企業や業界で経験を積み、スキルを磨いた人材も含まれるため、転職によって退職した元社員を再雇用することで、客観的な意見や新たな知見を得られるケースもあります。元社員の立場から、客観的に見た自社の問題点や課題を抽出できるのも、アルムナイ採用のメリットです。再雇用した元社員の意見によって、競合他社との差別化を図り、自社の体制を強化できるかもしれません。
アルムナイ採用を推進することで、退職のハードルが下がってしまう恐れがあります。既存社員の間に「退職しても再雇用してもらえる」という認識が芽生えることで、気軽に転職を検討するかもしれません。例えば、勤続年数の長い社員より再雇用した元社員の方が好待遇だったり、給与が高かったりすると、「同じ会社で頑張り続けるより転職した方が得」という誤った認識が蔓延する恐れもあります。アルムナイ採用を取り入れる場合は、既存社員の意識が低下しないよう十分注意が必要です。
アルムナイ採用を取り入れるには、人事制度や賃金制度の見直しが求められます。人事考課や賃金査定では、いかに既存社員との公平性を担保するかが非常に重要です。特に、勤続年数を査定基準に取り入れている企業の場合、以前の在籍期間を算定に入れるか否かを決めなければなりません。前述のとおり、待遇差があまりに大きいと、既存社員の意識が著しく低下してしまう恐れもあります。既存社員に「転職した方が得」という認識を抱かせないよう、公平公正な人事制度・賃金制度の構築が必要です。
アルムナイとの関係を維持したり、元社員を再雇用する制度を構築・管理したりするには、一定のコストと手間が必要です。例えば、自社を退職した元社員と良好な関係を維持し続けるには、定期的にコンタクトを取ったり、イベントを開催したり、コミュニケーションサイトを立ち上げたりする必要があります。アルムナイ採用を推進する場合でも、元社員であれば無条件で再雇用するというわけにはいきません。一定の採用基準や労働条件、評価制度などを構築する必要があります。当然ですが、これらの制度を構築・運用・管理するには、一定のコストが必要です。
今回はアルムナイ採用について解説しました。アルムナイ採用とは、自社を退職した元社員を再雇用する採用手法です。終身雇用が当たり前の日本では、一旦退職した会社に再び就職するケースは稀でしたが、深刻な人材不足を解消するため、元社員にアプローチするアルムナイ採用に注目が集まっています。アルムナイ採用には、既存社員の意識が低下する恐れがある、人事制度・賃金制度の見直しが必要など、一定のデメリットがあるのも事実です。しかし、採用や育成のコストを削減できる、マッチング精度の高い即戦力人材を採用できるといった、メリットの多い採用手法でもあります。
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