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今後の採用に不可欠な採用CXとはWeb面接ツール「harutaka」の担当者との対談レポート

現在、コロナ禍を機に多くの企業がリモート面接を導入しています。リモートでの面接は、候補者が企業の雰囲気を把握しきれず、企業選びの決め手に欠けてしまう可能性があります。そのような事態を回避すべく、採用CX(Candidate Experience)を向上し、候補者から「選ばれる」企業になりましょう。今回は、Web面接ツール「harutaka」を提供している株式会社ZENKIGENの清水さんとソニービズネットワークス株式会社の採用担当者である渡邊さんへ、過去~現在~未来の採用トレンドに焦点を当てた、今後の採用の在り方についてお話を聞いてきました。

採用CXとは

採用CXが注目される理由

採用CX(Candidate Experience)とは、候補者が企業を認知してから選考活動を終えるまでの間、企業との間で起こる全ての体験のことを指します。採用CXでは、選考のあらゆるプロセスにおいて、「候補者にどのように感じてもらいたいか」を考慮することで、候補者体験を向上していきます。最終的に、候補者が入社するにしてもそうでないにしても、「この企業を受けて良かった」と思ってもらうことが重要なのです。
こうした採用CXが注目されている背景には、次のような事柄が挙げられます。

  • 労働人口の減少
    日本では少子高齢化が進み、人口が減少し続けています。当然、労働人口も減少していくため、今後企業間で優秀な人材を取り合う競争が激化することが予想されます。以前までは、「企業が上、候補者が下」といった図式が一般的でしたが、現在は企業と候補者の関係はフラット、あるいは「候補者に選んでもらう」といった関係にまで変化しています。そうした中で、採用CXへの取り組みは、他の企業との差別化を図る重要なポイントと考えられています。
  • 転職市場の拡大
    以前は一般的であった「入社した企業で定年まで働き通す」という考えは既に古くなっており、終身雇用制度の崩壊が危ぶまれているほどです。このようにして、人材の流動性が増し、転職市場が拡大しつつある現在では、優秀な人材をつなぎ止めることと、獲得することの双方が必要です。人材の流動性の増加は大企業でも懸念している事項であり、優秀な人材確保の競争に勝ち抜く手段として採用CXが注目されているのです。
  • より公正な採用活動の必要性
    候補者は選考活動においてインターネットを活用するようになり、口コミやSNSでリアルな情報に触れることができるようになりました。選考活動の社会的な透明性が増したことで、候補者体験を悪くするような行いが、企業の印象やその後の採用に悪影響を及ぼすリスクになりやすいため、十分に注意しましょう。

リモート面接で採用CXを向上するポイントとは

リモート面接では、候補者が企業やそこで働く従業員の雰囲気を掴みづらく、企業選びの決め手に欠けてしまうことがあります。そこで、候補者との接点を増やしたり、希望に応じて従業員や役員との面談、オフィス見学などをセッティングしたりすると良いかもしれません。
以下では、オンライン面接ツール「harutaka」のサービスを提供する株式会社ZENKIGENの清水さん、ソニービズネットワークス株式会社で採用を担当する渡邊さんの対談を通して、リモート面接の現状や採用CX向上のポイントをお伝えします。

  

対談から読み解く、コロナ禍での面接の変化

コロナ禍以前から現在に至るまでの面接に関する経緯

--まず初めに、ZENKIGEN様の事業内容を教えてください。

清水

ZENKIGENは2017年10月に創業し、現在4期目を迎えました。事業としては大きく分けて2つ展開しており、採用DXの推進をする事業と職場のDXを推進する事業です。私自身は2018年にZENKIGENに1号社員として入社し、社内全体のPRやブランディング、セミナーやイベント、インタビューなどの企画に携わっています。

--ソニービズネットワークス株式会社の面接ツールとしてharutakaを導入するに至った経緯や、harutakaを使ってみて感じたメリットを教えてください。

渡邊

初めは人事系の展示会で、ZENKIGEN様のharutakaの展示を見て、興味を持ちました。そして、コロナ禍でオンライン面接を導入することになり、ツールの候補として検討したのがきっかけです。
元々社内では、オンラインコミュニケーションツールを統一感なく使っていました。面接もその一環で同様のツールを試していましたが、使っている選考管理ツールとの親和性の観点からharutakaを導入しました。また、学生のログインの分かりやすさも選んだポイントの1つです。harutakaでは、学生がログイン時に身だしなみや、ネット環境の確認ができるなど事前準備ができる点もとても良いと思います。
あとは、ちょうど今harutakaを使わせていただいているので分かりますが、音質が良いですよね。

清水

音声の質にはこだわっていて、他のお客様にも良いと言っていただけることが多いです。回線が悪くなった時でも、画面の画素数を下げて、音声の質を上げることで、会話が途切れない工夫をしています。

左:ソニービズネットワークス株式会社 渡邊さん
右:株式会社ZENKIGEN 清水さん

--コロナ禍以前の採用面接について、どのような動向だったのでしょうか。

清水

コロナ禍以前は、当社の製品を導入して面接のオンライン化を進める企業が増えてきている状況でした。導入した企業様の考えとしては2つありました。1つは生産性をあげるという点です。学生と企業どちらも、移動時間や費用が抑えられるというメリットを感じていました。
もう1つは全国採用が可能になるという点です。以前は、地方在住の学生には就労機会が平等ではなく、例えば地方の学生と都市部の学生とでは就活費用に1.7倍の差があるというデータもありました。そういった部分で、コロナ禍以前からオンライン化で場所や費用の概念を平等化できる面も少しずつ注目されていました。

現在の採用トレンドの変化

--オンライン面接を導入してみて感じたメリットは、どのようなものがありますか。

渡邊

オンライン面接を始めてみて感じたメリットは2つあります。1つは、地方の学生へアプローチできるようになり、採用の幅が全国にまで広がったことです。エリアの制限なくアプローチができるようになったことで、結果的に我々とカルチャーフィットできる学生を獲得できるようになりました。
もう1つは、面接を録画できるようになったことです。当初は学生から聞き逃したものを見直して評価の精度を上げることに使えるかな、と思っていました。ただ、実際に録画してみると、選考官側が自身の面接を客観的な視点で見直すことができるため、場数を踏むことでしか高められなかった面接スキルを短期間で高めることができるようになりました。やはり、自分も面接をする上で録画されていると緊張してしまいます。言わなきゃいけないこと、言ってはいけないことを考えられるのは、良い意味で緊張感があると思いますね。

--現在の面接でharutakaの需要は増えていますが、要望の変化などはありましたか。

清水

コロナ禍前後でharutakaを使用していただける企業様の数は約3倍に増えました。そうした中でいただいた要望は大きく2つ挙げられます。 1つは、一気にオンライン面接ツールを使うことが増えたので、「通信が切れない・音声が切れない・画像が止まらないなど、とにかく安定稼働したい」という要望です。
もう1つは、「せっかくオンラインでやるので、データを活用したい」という要望です。従来の対面形式では面接内容がブラックボックス化していたため、ハラスメントが生じたり、候補者のニーズ喚起ができなかったりといった問題がありました。そういった問題を、オンラインでデータを取ることによって、解決につなげたいという相談を受けるようになりました。

▲オンライン面接ツール harutaka

--コロナ禍の採用トレンド変化についてどのようにお考えですか。

渡邊

当社では、感染症の発生リスクとオンライン化の不安の間で葛藤がありましたが、現在は最終選考まですべてオンラインでやると決め、全フローをオンラインで進めています。
しかし、学生と話していると、「対面での面接をやったことがある」と話す方も一定数います。我々が採用したいと思っている学生が他社と対面での面接をしていて、選択基準がその点になってしまったら嫌だなと思ったのですが、その点について清水さん目線ではどうでしょうか?

清水

やはり、候補者のニーズをどのように取れるかという点で、世の中全体の採用トレンドが変わってきていますよね。今までは、「企業が上、候補者が下」という構造が根強くありました。現在はSNSの発達で、「面接体験が良くなかった」「こんなことされた」というように社名を出して悪口を書かれることもあり、情報の流通が採用トレンドの大きな観点となっています。
候補者体験、いわゆるCX(Candidate Experience)を考えることが、採用を考える上で大きなトレンドになっていると思います。例えば、「社員が出社していないのに学生に来させるのはどうなのか」というのはCX向上において重要な考えです。当社が2021年3月に行った22卒学生へのアンケート結果では、「選考のオンライン化への要望に答えてくれるか」について、約60%の学生が「応募意欲に影響がある」と答えていました。 しかし、「最終面接までオンラインで行いたい」という学生は13%まで減ってしまいます。実際にharutakaを使用していただいている企業様は、「オンラインまたは対面」といった形で、学生が選べるようなプロセスを組んでいました。

渡邊

確かに、選択を学生に委ねるというのは非常に良いですね。

清水

地方の学生は、「最終面接までオンラインが良い」と言う方も多く、先ほどのように選択式に変えた企業の方は「内定者の中の地方学生比率が上がった」とおっしゃっていました。

今後のリモート面接の課題

--今後の採用面接が持つ課題について、どのようにお考えでしょうか。

渡邊

コロナが収束したからといってリモート面接をやめることはないと考えています。これは、テレワークをやめて全員が出社するようになるわけではないのと同じで、オンラインならではのメリットもあるので、ハイブリッドに落ち着いていくのではないかと思います。また、現在はデータとして残せるという面から面接内容の引き継ぎとしてharutakaを活用していますが、もっとデータを活用できないか、ZENKIGEN様と共に考えていきたいです。その点、清水さんはいかがですか?

清水

ビジネスは、本来全てについてPDCAサイクルが回るものですが、現在の採用ではこれが回っていない状況です。面接のブラックボックス化は改良されてきていますが、「そのデータをどうやって次につなげていくのか」のサイクルが実は回っていないというのが課題だと思います。このサイクルを回すためには、オンライン化だけで止めるのではなく、取れたデータをどうやって分析するかが重要です。

渡邊

我々もやはり、カルチャーフィットする学生に当社を選んでもらうために、多くの方に会いたいです。ただ、人事のリソースも限られていますので、量を担保しながらいかに質を向上していくのかが課題ですね。聞きたいことをきちんと聞き、候補者の方が本領を発揮できないような面接をしないように、テクノロジーを使って解決していきたいと思います。
あとは、大枠の傾向などをデータから導けるのはデジタルの強みだと思いますし、我々もIT業界でビジネスをやっているので、データ活用方法の成功事例としてアピールできるようチャレンジしていきたいですね。

--より多くの学生の方からエントリーしていただくには、どのようなことが必要とお考えでしょうか。

渡邊

我々らしさをアピールできればと思っています。また、ツールを活用しながら、効率的に時間を捻出していけば、学生との会話時間がもっと増えるはずです。そうして、学生が当社に入りたくなるような環境づくりをしていきたいです。

清水

実は、エントリーを増やすことにだけに重きを置くことは時代に合っていないと思います。
就活生は毎年45万〜50万人いますが、少子高齢化の影響で毎年減っています。一方で、新卒一括採用が始まって60年ほど経ちますが、面接にかける時間は日本全体で合わせて2500万時間です。10名採用するために100名面接するわけですから、2500万時間のうち90%が、候補者を落とすために使われています。この点は、一括採用の限界なのではないのかと思います。「大量に候補者を集めて大量に切って、エリートを獲得する」というやり方はすでに終わったのかもしれません。
こういった一括採用のやり方は時間の面だけでなく、LGBTQの方や体育会で時期的に厳しい学生などに全くケアがない状態だと思います。時代が変わる中で、多様な人と共創していくためには、エントリーを増やすだけという発想は変えていかなければなりません。データドリブンで学生と企業の採用マッチング率を上げていくことが重要です。このデータというのは、学生の個人データだけでなく、採用から育成そして活躍といった社内人事データのことです。これを採用に活かせるようデータ分析のサイクルを回していくことが大切でしょう。新卒採用や社内での1on1、活躍人材などの社内情報を動画データにして、AIエンジンに多くのデータを入れていけるよう、お客様と一緒にチャレンジしていきたいです。

渡邊

我々は、NURO Bizというサービスを売っていく仕事がメインですが、今後業務の幅を広げていく上で、人の配置が大事になるかと思います。色々な個性を持った人を、その仕事に合わせて配置していくことで、最大限の能力を発揮でき、企業としての成長につながるはずです。その配置にデータを活用していけるよう、データ化するところからチャレンジしようと思います。

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就活生の不安解消へ向けたアドバイス

--学生が多くの企業にエントリーできる時代に、学生は何に気をつければ良いのでしょうか。

清水

これは私個人の考えにはなりますが、「どういう企業を選ぶのか」ではなく、世の中の流れを捉え、自分を知ることが重要だと思います。自分が働く意味や価値観、倫理観、人間性を本気で考える機会は、長い人生でも少ないと思います。就活の時期を迎えて、「企業を選ぶ前に自分を知ろう」ということを学生に伝えたいです。「大企業に入れば安泰」の時代も「1人1社」の時代も終わり、ワークとライフの二者択一の時代でもありません。「どういう生き方をしたいのか」を本気で向き合っていくことが大事です。
その上で、これからの企業という観点でお話しをします。20世紀はエコノミーの1点に集中して企業の中の人がひたすら動いていくような時代でした。今後はそこに加えてテクノロジーとソーシャルが掛け算される企業原理に変わってくると思います。「この企業がどれほど社会にいる意義があるのか」が企業の価値に換算され始めているのです。そういった観点として、社会性を事業で体現できているか、事業内容や経営者の思想なども見るべきポイントとして追加されていると思います。

渡邊

なるほど、非常に勉強になりました。我々も利益だけではなく、社会に何ができるかを考えるフェーズに入っているので、そこをアピールすることが大事だと思いました。

--今後就活を控える学生に向けてアドバイスをお願いします!

清水

アドバイスなんておこがましいものではないですが、「一緒に頑張りましょう」ということを伝えたいです。色々な変化がある中で、正解のない問いに対して連続的に向き合っていかないといけない時代です。我々の働き方や生き方を、次世代に良い社会として残していければと思っていますので、これから社会で共に働く仲間へ向けて、「共に頑張りましょう」というのがメッセージです。

渡邊

企業として事業を継続していく中で、清水さんもおっしゃっていたように、この先どうなるか分からない状況です。今の時代、若い人たちの方が未来への感度が高いと思いますし、そういった部分で学生たちへの期待は強いです。就職活動されている学生は、今やっていることに自信を持って選考に臨んで、入社した企業の中で一緒に成長できる社会を創れたら良いなと願っています。

  

まとめ

今回は、株式会社ZENKIGENの清水さんとソニービズネットワークス株式会社の渡邊さんの対談インタビューで、過去~現在~未来の採用面接について語っていただきました。採用のトレンドが大きく変化したからこそ、候補者体験が重要となるというお話が印象的でした。本記事をきっかけに採用活動を見直してみるのも良いでしょう。

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