Categories: インタビュー

オフィス環境をみんなで改善!「オフィスカイゼン委員会」の取り組みとは?

毎日、仕事をしながら長時間を過ごすオフィス。日常の見慣れた何気ない風景になっていて、改めてオフィス環境について考える機会はあまりないのではないでしょうか。しかし、実はそんな場所にこそ、思わぬ欠陥やムダが潜んでいるかもしれません。

文具とオフィス家具の製造販売、オフィス空間の提案を行っているコクヨ株式会社の「オフィスカイゼン委員会」では、オフィス環境を考え、改善する取り組みを5年以上にわたり行っています。今回は、コクヨグループのコクヨマーケティング株式会社のオフィスである「霞が関ライブオフィス(※)」で行われたオフィスカイゼン委員会へ、somu-lier編集部が潜入してきました。その活動の様子や運営の秘訣、成果についてご紹介します。

(※)ライブオフィスとは
コクヨが1969年から最先端のオフィスとワークスタイルを具現化しているのがライブオフィス。実際にコクヨ社員が働いているオフィスを見学することができ、新しい働き方を感じ、知ることができる。

オフィスカイゼン委員会とは?

どれほど入念な計画のもとにつくったオフィスでも、オフィスを使う人によってきちんと手入れをしなければ乱れてしまいますし、使っているうちに不便に思う事が目につくようになるものです。

コクヨ株式会社では、全国の主要オフィスで「オフィスカイゼン委員会」を立ち上げ、オフィス環境を快適な状態に維持するため、日常的にオフィスの問題を解決する仕組みづくりを行っています。

委員会のメンバー(委員)はオフィスで働いている部門それぞれから選出され、任期は1年間です。委員会の運営は事務局が行っており、委員は月に一度(1時間)のワークショップに参加することのみ、と負担が軽く抑えられているのがポイントです。

 

委員会活動の様子

霞が関ライブオフィスのオフィスカイゼン委員会は、事務局の矢島幸子さん(コクヨマーケティング株式会社)・一色俊秀さん(コクヨ株式会社)が中心となり進められています。

今回のテーマは「整頓」。

まず初めに、「カイゼン」歴5年のベテランで、多くのオフィスでアドバイザリー的な対応も行っている一色さんから、「整頓」についてミニレクチャーを行います。

ミニレクチャーでは、オフィス内のモノが「整頓」されているかどうか考えるにあたって注目するポイントや、過去に改善の取り組みを行って得られた事例などを学びます。

今回のテーマである「整頓」で一番大切なことは、「戻す」こと。モノをあるべき場所へ「戻す」ことをきちんと行えば、必要なモノをすぐに取り出せるようになります。

改善が必要か見極めるポイントとして、以下のものが挙げられました。

  • 置き場所がわかるか
  • 定位置に道具が戻っているか
  • 使用頻度としまう場所がマッチしているか
  • 在庫切れの対処法がわかるか

次に、委員が実際にオフィスを10分間歩き回り、改善すべきことを探します。

気になることを見つけたら、付箋に書き込んでいきます。他の人が一度読んでわかるように、フルセンテンスで書き込むことが決まりです。

そして10分後、全員が探し終えて戻ってきたら、付箋を模造紙に貼り、話し合いながら似ているものをグループ分けしていきます。

いつも生活しているオフィスですが、改めて見直すと多くの問題が出てきました。

「私はオフィスのどこに何がしまってあるのかわかっている方だと思うのですが、皆さん全員が同じというわけではありませんよね。」
「そうですね。例えば補充するものについて『収納庫にあります』と書かれていたりしますが、収納庫の位置すらわからない人もいると思います。」
「確かに。実は僕もわからないので、補充が必要なときに一人だったら困りそうです。」
「総務の方なら全部わかるのでしょうが、他の人も知っておきたいですよね。」

このように、委員が様々な部門から集まっていることで、「みんな知っている」「当たり前」と思われていたことが、実はそうではないことに気づかされる場面もありました。

一通り確認が済んだところで、特に重要と感じたもの3つに丸いシールを貼っていきます。

こうして優先順位を決めるところまでが、委員の仕事です。具体的な改善策については、事務局で検討することになります。

 

事務局が支え、委員は気軽に取り組める委員会

この取り組みの発端となったのは、2012年12月のオフィスのリニューアルでした。

リニューアル後は整っていた霞が関ライブオフィスですが、3ヶ月程経つと不便に思う事が出てきたため、総務担当者をサポートする形で働き方の提案に携わっているスタッフとオフィスのデザインに従事していた一色さんの2人が「カイゼンマン」として改善活動を始めたそうです。

当初は活動の重要性を周囲の社員から認識してもらい辛かったものの、1年ほど継続すると改善の効果が現れ、賛同・協力を得られるようになったため、委員会を立ち上げ周囲の社員を活動へと巻き込んでいくようになりました。

現在、一色さんは、複数のオフィスを回り、それぞれのオフィスの「カイゼンマン」へのアドバイスを行っています。霞が関ライブオフィスの担当である矢島さんも「カイゼンマン」の一人として、委員会の運営に加え、カイゼン活動を通じて得られた知見を広く伝えていく外部向けセミナーも行っています。

委員会運営の秘訣とは?

オフィスのみならず、委員会の運営も少しずつ改善しながら今の形になっていったそうです。
委員のモチベーションを維持するための事務局の方針を、一色さん・矢島さんにお伺いしました。

委員の負担は極力軽くする

オフィスカイゼン委員会の事務局の方針として、宿題は出さないことにしています。普段はいつも通り仕事をしてもらい、月に一度のワークショップで1時間しっかり考える、という形式にすることで、委員も負担を感じず続けやすいようです。

委員の意見はリスト化して進捗をすべて共有する

ワークショップで委員が気づいて付箋に書いた内容は、事務局がリスト化して管理し、改善の進捗も委員へ共有しています。
かつて、意見を出しても予算の都合などでなかなか実現されない状態になった際、出席率が低下してしまったという事があったそう。その反省として、委員の意見すべてに対して、「この様に解決した」もしくは「こういう理由で実行に至らなかった」など実施の有無や判断理由についてフィードバックしています。

具体的な改善策は事務局が考えて実行する

委員会のワークショップでは、「ここがまずい」「ここは改めるべき」といったところを委員が出し合いますが、具体的な改善については、事務局が予算なども考慮しながら検討して実行しています。
委員に改善策の提案まで責任を求めないことで、より意見が言いやすくなり、活発な活動に繋がっているのです。

ワークショップは時間にメリハリをつける

ワークショップでは、タイムテーブルを分単位で設定し、タイマーでしっかり管理しながら進行しています。これによって活動にメリハリがつき、時間の延長も防止することができます。
また、集まる時間ついても、各委員の業務事情など考慮した開始時間を設定するなど、時間にもこだわりを持ち、委員が参加しやすい活動づくりを目指してきました。

↑タイマーを設定し、モニターに表示(残り2秒の様子)

このように、楽しみながら取り組んで、改善に向かって実感を得られる時間にする事務局の努力も、周囲の協力を得られる秘訣のようです。

 

参加している委員からの声

この取り組みについて、参加者はどう思っているのでしょうか。2017年12月から半年ほど参加している委員の方々から感想を伺いました。

委員の負担について

・「委員に選ばれたときは私で役に立てるか不安でしたが、いざ参加してみると、そんな不安は忘れていました。笑」
・「1時間という限られた時間の中で、集中して思考をフル回転させているので、あっと言う間に時間が過ぎて、ほとんど負担感はないです。」
・「任期は1年ですが、もし更に1年お願いされたとしても引き受けたいと思える取り組みです。」

委員の負担を最小限にする事務局の方針のおかげで、委員も気負わずに取り組むことができているようでした。

具体的な改善策は事務局が担うことについて

・「後のことは事務局の方が考えてくださるので、『これは無理かも』と思ったことでも、気負わずに意見を出すことができています。」
・「自分の出した意見について、『改善しました』という報告があると感慨深いです。同時に委員としての程よい責任も感じ、気が引き締まりますね。」

アイデア出しをする委員と実行する事務局の二人三脚が、効果的に働いているようです。

活動の場そのものについて

・「普段あまり接点の無い部門の方とコミュニケーションをとる良い機会になっています。」
・「実現するかもしれない場に自分の意見を出すことができて、会社と繋がっている感覚を得られます。」

様々な部門が同じオフィスで仕事をしているなかで、この委員会の活動を通して一体感が高まる、他部門の社員から刺激を受ける、という側面も大いにあるようです。

さらに、オフィス家具の営業に携わっている社員からは、「オフィスカイゼン委員会の活動そのものや、活動を通じて得られた改善の内容も併せて、お客様に提案することができます。」という意見も聞こえてきました。

 

霞が関ライブオフィスの「カイゼン」の成果

今回の「カイゼン」の舞台である霞が関ライブオフィスは、“SESSION(協業)”をテーマとし、会社や部門、個人の壁を越えて連携しながら新たな価値を生み出していくことを目標としています。また、大部分のデスクにフリーアドレス制を採用し、退社の際にはPCや書類はロッカーへしまい、机には何も残さないクリーンデスクを徹底しています。

このライブオフィスはコクヨ社員が働き方の課題解決に取り組む姿を公開しており、ウェブサイトから見学をお申込みいただけます。

ライブオフィスをより良い環境にしていくオフィスカイゼン委員会の活動は、オフィスづくりのモデルケースという側面もあるのです。

それでは、そんなライブオフィスで実際に行われた「カイゼン」について、ご紹介していきます。

mo・baco(モバコ)の設置

会議での必須アイテムをモバイルバック<mo・baco(モバコ)>にまとめて必要な時に運べるようにすることで、モノが足りない・ある1箇所に固まっている、といった事態を避けられるようにしました。

ワードローブのサイン

ライブオフィスでは、壁沿いに棚・ロッカーなどの収納を設置してあります。
パーソナルロッカーが前面に出ていて、共用のワードローブがロッカーをスライドさせた後ろ側にあるため、位置がわかりやすいようにサインが設置されました。また、似たような服の取り違え防止のために、ハンガーを色分けしてあります。
こういった細かなサインがあると、必要なときに一目でわかり、探す時間が短縮できますね。

個人ロッカーの検索システム

壁沿いに無数に設置されたパーソナルロッカー(個人ロッカー)には、郵便受けがついています。個人ロッカーは部門ごとに大まかな位置が決まっているものの、社内便や郵便物を持ってきたとき探すのはなかなか大変です。そこで、社内ポータルからロッカーアドレスを探せるシステムを作りました。

とはいえ、パソコンから見なければならず依然として不便です。「整頓」のワークショップ内で、専用タブレットを設置してその場で検索できるようにすれば良いのではないか、という意見も挙がりました。今後も改善が期待されるところです。

シュレッダー脇に設置されたゴミ袋とサイン

シュレッダーのゴミがいっぱいになっているものの、ゴミ袋を取ってくるのが面倒、そもそもどこにあるのかわからない……といった事態も、マグネット付きのポケットを取り付けて予備を用意してしまえば解消できます。交換した後にゴミを運ぶ場所までわかっていれば、皆が困らずに気持ちよく使うことができますよね。

注意書きも、かわいいサイの絵とともに「くだサイ」という表現にすることで、強い表現にならず、丁寧ながらも親しみやすさを感じる言い回しになっているのも、こだわりの一つです。

AV機器用コードのしまい方

ついついぞんざいに扱ってしまいがちなコードですが、きちんと束ねてあった方が絡まることがありませんし、見た目も美しくなりますよね。写真を示してあることで、片付け方のイメージがわかりやすくなっています。

 

「カイゼン」の成果は今回ご紹介した以外にもたくさんあります。オフィスカイゼン委員会のウェブサイトでまとめて紹介されていますので、ぜひご覧ください。

オフィスカイゼン委員会:https://www.kokuyo-furniture.co.jp/kaizen/

 

編集後記

今回ご紹介した「カイゼン」はほんの一部でしたが、このような「カイゼン」の積み重ねでオフィスがより便利で快適な環境になれば、生産性向上に繋がります。逆にオフィスが乱れてしまうと、企業が本来発揮できるパフォーマンスも保てなくなってしまうのです。

「100%整っているオフィスはありません。引っ越した時点はきれいに整っていても、荷物が増える、モノを動かすなど、周りの環境が変わることもあります。それに対応してオフィスも変化していくことが不可欠なのです。」と一色さんは語ります。

オフィスカイゼン委員会はウェブサイトも運営しており、自社での取り組みのみならず他社の事例も共有しています。全国へこれを発信することで、「日本のオフィスをもっと良くしたい」という思いがあるそうです。

この機会にオフィス環境の重要性を見つめなおし、まずは身近なところから改善活動に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

全国に展開
個性あふれるライブオフィスを体感しませんか?

コクヨでは、我々自身の課題を解決するために働き方や働く環境を考え、実践しているオフィスを「ライブオフィス」として公開しています。
カイゼン委員会の取り組みも詳しくご説明いたします。

http://www.kokuyo.co.jp/com/liveoffice/location/

・見学は予約制となっております。上記サイトよりご予約ください。
・見学は法人のお客様に限らせて頂きます。

Recent Posts

This website uses cookies.