一般企業と比べ就業時間が不規則になりがちな放送業界。働き方改革が叫ばれる昨今であっても、それまでに根付いてしまった就業スタイルを思うように改善できない企業が多いのが現実です。そんな状況の中で、見事に模範的な働き方改革を遂げた技術総合プロダクション「株式会社日テレ・テクニカル・リソーシズ」の総務センター 人事部長の住さんにクリエイティブの現場における働き方改革についてお話を伺いました。
住 幸憲
株式会社日テレ・テクニカル・リソーシズ(総務センター 人事部長)
制作現場でテレビカメラマンを20数年経験した後、人事部へ異動。現在は日テレ・テクニカル・リソーシズの人事・労務の全てを担当する。
昔ながらの職人気質からの脱却が課題
― 今回の勤怠管理システム導入の経緯を教えてください。
カメラマンや音声、編集など600名ほどの人材を抱え、日本テレビを始め、テレビや映像制作現場で技術業務を担当する会社です。それぞれの職種の特性を踏まえた就業体制を引いているため、全社的に一貫した就業時間を設定することは難しく、部署ごとに就業ルールが異なります。技術者の派遣元でもあり、また弊社だけでは賄えないほどの依頼があった際は協力会社から技術者を派遣してもらう派遣先でもあります。
― これまでの放送業界の特性について教えてください。
ひと昔までは効率よりもクオリティを重視するような技術者がいましたね。例えてみるならば、陶芸家が時間をかけて作成した作品を仕上がりが気に入らないので割ってしまうような。一度自分が手がけた作品を最後まで自分が携わるのが当たり前という考えの技術者は多かったです。
そうすると、労働時間は果てしなく延びてしまいますし、仕事ができる人に案件が集中してしまう状況に……。現在は社会全体が働き方改革を推奨していることもあり、技術を後進にシェアして技術者全体のレベルアップを図り、誰かに極端に負荷がかからないような就業スタイルを放送業界全体で見直し始めているところですね。
― 働き方改革前の御社の職場環境を具体的に教えてください。。
主にテレビ制作に携わる業務であることもあり、24時間、365日稼働しています。そのためコアタイムのないフレックスタイム制を導入しています。月のうちに何回かは19時に出社し、休憩をとりながら翌朝10時に退社するという部署もあります。部署ごとに就業時間ルールが異なるため、直傭の従業員は親会社と同じ勤怠管理システムを利用しています。
従業員に自己申告をしてもらい、その部署の管理者が勤務状況を確認、承認するというスタイルです。制作業務を行なう上で起こりやすいことなのですが、労働時間が必要以上に延びてしまう従業員をどう管理していくのか、ということは社内での課題にはなっていました。
意識が変わることで労働環境もクリアに
― 働き方改革へ至るまでのきっかけは?
弊社の社長を含めた経営陣から「個々のスキルアップを図り、仕事に対するモチベーションを上げることが今後、放送業界を生き残っていくための課題である」という通達があり、社内の管理者たちもそういった意識で業務に臨むようになったということが大きいかもしれませんね。
その流れから、それまで各部署内で任されていた受け入れ派遣労働者の勤怠管理を見直すきっかけへと発展。受け入れ派遣労働者の勤怠管理をよりクリアにして、より費用対効果を考えた効率的な労働環境を目指そうということになったのです。そこで受け入れ派遣労働者のために新たに勤怠管理システムの導入をしてみるのはどうか?と動き出しました。
― 勤怠管理システムAKASHIを導入した決め手は?
ちょうどそのタイミングで「HR EXPO ~人事労務・教育・採用〜」が実施されることを知り、行ってみることにしました。そこでAKASHIのことを知り、しばらくデモ利用をして使い勝手を体感してみることに。直感的に使用できるUIデザインが決め手。やはり管理者、派遣労働者ともに使いやすいというところが一番の選定理由です。また無駄を省いた従量制課金方式によって費用をおさえることができるという点もポイントでした。使用方法が分からなくなってしまったり、疑問点が発生した際にすぐに質問・解決できるライブチャット機能がとても便利ですね。かなり利用させてもらっています。
― 導入してからの社内の反応はいかがですか?
AKASHIのシンプルなユーザーインターフェースが簡単で分かりやすいので、不満の声などは上がっていませんね。もともと管理者は自分が勤怠システムを利用していたということもあり、ウェブ上での勤怠管理に慣れていたというのもよく作用したのだと思います。AKASHIの導入によって各々の労働時間がクリアに見えることになったので、管理者も受け入れ派遣労働者も意識が変わり、全体の労働時間は減ってきていますね。
個々の仕事量が平均化し、誰か一人に業務が集中することもなくなっているので、労働環境もかなり良くなっていると言えると思います。AKASHIを導入したことで受け入れ派遣労働者の勤怠管理を一括して行う事が容易になり、人事部の業務量も軽減。そしてコストダウンも図れていることは、私自身の実感としてもありますね。グループ会社の総務、人事担当者と集まって情報交換をする機会が多々あるので、この点はシェアしたいですね。
スキルと労働時間の平均化がより豊かな作品を生む
― 御社のこれからの働き方改革の展望などがあればお聞かせください。
よりクリエイティブな作品を生み出すために、労働環境を整えるということは必要です。そのため、これまでと同様にベテラン技術者から後進へと高度な技術をシェアしていきながら、技術者のスキルと労働時間の平均化は責務だと考えています。それが弊社のみならず、次世代の放送業界のあるべき姿。これらの実現を目指し、さらなる高みを目指して邁進していきます!
編集後記
カメラマンとして数十年、クリエイティブの現場を経験してきた住さんだからこそ実現できたと言っても過言ではないクリエイター目線の意識改革。技術者のスキルアップを図り、クリエイティブ業務の効率化を実現した近い将来、さらにワンランク上の働き方改革へと迫っていくだろう株式会社日テレ・テクニカル・リソーシズの今後の展開とこれからの放送業界に注目です!
【取材にご協力いただいた企業】
株式会社日テレ・テクニカル・リソーシズ
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