従業員の満足度はもちろん、企業側にもメリットのある働き方が求められる昨今。本当に働き方改革で目に見える結果をもたらすには、その企業の特性をきちんと考慮した方法での実施が必要です。
働き方改革の先駆けと呼ばれる日本航空(JAL)は、なぜ短期的に成果をあげることができたのか?
人財戦略部ワークスタイル変革推進グループの東原祥匡アシスタントマネジャーに理想の働き方を実現するための6つのステップを教えていただきました。
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2010年の経営破綻を機に従業員の3分の1が退職する事態に直面。そのため、再生に向けた業務が多岐にわたっていたこともありオフィスが不夜城と化すことも多くありました。全社的に危機感が高まり、長く安心して働くことができる環境への変革が急務となりました。社員の意識改革こそ一番大切と考え、働くスタッフのモチベーション向上をなにより優先して働き方改革のビジョンと戦略を構築していきました 。
これまでダイバーシティ&インクルージョン※1に関する社長からのメッセージを発出していましたが、2015年には、働き方改革についての3つのメッセージを発信しました 。
また、目的の一つとして、「総実労働時間1,850時間」も提示しました。弊社の場合、所定労働時間が1日あたり8時間。年次有給休暇を20日取得した場合、月間の時間外・休日労働時間が4時間程度であれば達成できる数値目標になります。これは育児や介護などのライフイベントを抱えた社員だけが時間短縮労働をすればよいということではなく、全社員の業務に関わる時間が同等であり、業務外の時間が公平にあることで、納得性を持って業務に取り組み成長へと繋がると考えています 。
最近では定時で帰ることが当たり前になっているので、育児休職明けの女性従業員の復職率も上がってきていますね。また育児休暇中も本人の希望があればリモートで会社の情報を取得できるようにし、復帰後のブランクによるギャップなどを生じさせないような試みも始めました。子供が生まれた後も長く働いていきたい会社、あるいはやめた後もこの会社で働いてよかったと感じられる会社になっていくことを目指しています。
時間と場所にとらわれない働き方を実現するため、テレワークの制度の前進である「在宅勤務制度」のトライアルが2014年よりスタート。利用する社員の声を徹底的にヒアリングして少しずつ改良を重ねて2016年に自宅縛りを撤廃し、「テレワーク制度」となりました。テレワークの特徴として、テレワークの申請には理由の申告を設けておらず、性別を問わず育児休暇や介護者を含む全社員を対象としているところですね。また制度をしっかりと定着させるために「小さく産んで、大きく育てること」をテーマに、トライ&エラーを繰り返しながら新しい制度や仕組みを確立していっています。
そして、2017年からは、休暇中にテレワークでの業務を認める「ワーケーション※2」を導入しました。導入当初は「休暇中まで働かせるのか」と言った声もあがりましたが、こまめに従業員向けのセミナーや研修を実施することで休み方・働き方の選択肢のうちの一つであることへの理解が深まり浸透。そうすることによって、日本航空に最適化された、真に価値のある制度が醸成されていきます。
今後、さらに柔軟な働き方を求められる時代になるので、変化にフィットする改革を進め、理想の働き方の実現を追求していきます。
※1 人財のダイバーシティ(多様性)をお互いにインクルージョン(包摂)することが持続的成長の原動力であり個を尊重し認め合い、良いところを活かすこと
※2 ワークとバケーションを組み合わせた造語。バケーションの間にテレワークを組み込むなどし、長期休暇を取得しやすくする仕組み。働き方改革で推進が進んでいる休み方・働き方の一つ
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