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『月刊総務』編集長に聞く!できる総務は何をしているのか

できる総務はいったいどんなことをしているのか―。日本で唯一の総務部門向け専門紙『月刊総務』の編集長であり、会社を変えるプロの総務を「戦略総務」と呼ぶ豊田健一氏へのインタビュー後編です。

 

前編はこちら

 

できる総務は現場にたたずんでいた

―これまで見てきた中で、いい総務さんの例を挙げてください。

 

ある企業の総務部長さんでしたが、本当に現場にたたずむ。現場に足を運んでは、しばらく周りの雰囲気を見るんです。現場に何が足りないのか、どういう働き方をしているのか観察していました。

 

アンケートをとる総務もありました。アンケートをとってそこからヒントを得る。ピンポイントであれマスであれ、社員の声を聞こうとするのはいい試みですね。

 

リクルートの経理時代に上司に言われたのが、「経理で大成したいなら現場へ行け」ということでした。その後、現場へ行って営業を経験して、もう一回経理に戻ってきました。すると伝票を見るだけで現場の動きがわかるようになっていたのです。総務が改革に成功している会社は、営業などの現場経験者が総務にいる点が共通している気がします。

 

できる総務は制度をチューニングしている

優秀な総務は施策に対して、三か月ごとに利用率を見たりしています。制度を作ってそのままにはしません。「この制度・施設を10年前つくりました、でも社員がなかなか使ってくれません」と言っているケースって身近にありませんか?社員の関心ごとも変わるもの。若い社員が多いところは、いずれ40代50代になったら介護の問題が出てくる訳です。だから総務は、「今は要らないかもしれないけど、そろそろ考えないと」というように、社員の時系列での動きをきちんと把握して、それに対処する必要があります。優秀な総務は、そういうところが徹底されており、そのような会社では経営者も利用率などを重視しています。

 

―数年後の動向を予測し、PlanしてDoする、というのは大変な気がしますが…

 

プロジェクト化して宣言するのをお勧めします。「こういうことをやりたいので、こういうことを、いつまでにやります」と宣言して、ある種プレッシャーをかけないと、やり切ることができません。期待を持たせるような、注目を集めるようなところに自らを置くことで、フェードアウトが防げます。

 

総務のお客さんは経営者

―総務が認められるためにやるべきことのヒントはありますか?

 

経営者とのアラインメント(alignment:方向性を合わせること)は欠かせません。総務のお客さんは、本当は経営者なんです。「総務のオーナーと総務のユーザー」という言い方をしますが、総務のオーナーは経営者、総務のユーザーは社員です。オーナーの意向と違うことをやっても評価されないし、下手をすると異動されてしまうのは当然でしょう。だから総務は、経営者の意向を汲んで仕事をして、それを続けることによって評価を得なければいけない。評判が高まれば、やりたいことをやらせてもらえます。

 

総務をつぶすのは経営者!?

―総務が「言われてやる仕事」「これまでしてきた仕事」を、「これってやる価値あるのか」と思いつつも続けてしまう、変えられない。その原因はどこにあるのでしょう?

 

総務の仕事には全社が絡むため、変えようとすると手間がかかります。そのため、「変えるべきだ」とわかってはいても、やりたくないと思ってしまうんですよ。

 

状況を打破するには、経営側を含む周辺が総務をもっと評価してあげる必要がありますね。新しいことをしようとして失敗しても、そのチャレンジが評価されるかどうかが分かれ道です。ミスしたら叩かれるのでは総務も萎えてしまう。総務をつぶすのは経営者だと思っています。

 

―これまでやってきたとおりにやっておけば少なくとも失敗はない、と考えてしまう訳ですね?

 

そうです。総務を対象としたセミナーをやると、「一生懸命やりたいんだけど、上が理解してくれない場合、どうしたらいいでしょうか」という質問が多いです。

総務で会社が変えられる

現状、総務に異動になった人はガクッとしょげます。それは今までの総務が、評価されない、評価できない人たちだったからです。『月刊総務』で、総務のプロに取材すると、「異動が決まったときは、泥沼に落ちた気持ちだった」とみんな言いますね(笑)。

 

でも、やっていくうちに気づくんです。「総務って、すごい仕事ができるんだな」と。そうするとモチベーションが上がって、プロの総務になる。総務の影響力の大きさ、営業マンが一人で稼ぐより遥かに大きいことができてしまうという、インパクトの大きさに気づくからですね。

 

総務が変われば会社が変わる。自らが戦略的に動けば会社が変わっていきますし、会社が変われば結果、総務は会社になくてはならない存在になれます。当然評価もされますよ。そのような戦略総務になるためには、社外との接点を持って、サプライヤーさんベンダーさんの話を聞きましょう。同僚が楽しく働くために総務として何をすればいいのか、社内マーケティング的に、現場に足を運んで別の部門の同僚と会話して、現場の意見、どうやったら働きやすくなるのか?何が足りないのかを聞いてみる。社内アンケートを取るという手もありますね。そして新しい施策を行ったら、どのような目的でそれを行ったのか社内に周知して、利用を促進しなければいけません。使われていない事業は削減する。PDCAを回す視点が必要です。

 

だから、「総務で会社が変えられるんだ」「総務だからこそ会社を変えられる」という意識を持って、あとはやるかやらないかです。どうせなら、やりましょう!やっただけ評価は受けますから、やりましょうよ。楽しいですよ!

 

 

■インタビュイー

豊田健一氏

日本で唯一の総務部門向け専門紙『月刊総務』編集長兼事業部長。早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長を経験後、ウィズワークス株式会社入社。総務経験を生かした総務部業務全般のコンサルティングと、戦略総務/総務の実態に関する講演を行っている。著書に『経営を強くする戦略総務』『マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

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