山陰・山陽地区で最大手と言われるメッキ・表面加工会社である「株式会社アサヒメッキ」。鳥取を拠点として創業し今年で60年を迎える節目の年に、今後厳しくなっていくだろうメッキ業界の生き残りをかけた働き方改革を実施し、AKASHI導入1ヶ月で「従業員の作業時間を週11時間削減する」という大きな成果を上げました。たった1ヶ月という短期間の中、どのような方法を持って達成したのか?専務取締役の木下さんにその成功の秘訣を教えていただきました。
木下 淳之 氏
株式会社アサヒメッキ(専務取締役)
2012年に父である代表取締役会長に頼まれ鳥取に戻り、家業のメッキ会社へ入社。主に能率管理(インダストリアルエンジニアリング<IE>)を担当。発注元へ納期や予算などの交渉なども行い、職場環境の改善・改革を推進している。
事業継続計画(BCP)をどうマネジメントするかが課題
― 御社の具体的な業務内容を教えてください。
1958年設立以来、表面処理専業メーカーとして、亜鉛メッキ、SUS電解研磨、アルマイト処理などの処理加工を行ってきました。これらの処理品は小物から大物、小ロットから大ロットまでフレキシブルな対応をモットーにものづくりをしている会社です。
― これまでのメッキ業界について教えてください。
大手自動車会社専属だと大規模なメッキ会社がありますが、メッキ会社単体としては100名弱規模のメッキ会社が各都道府県に1社ほどあるような規模の業界だと言われています。メッキ会社は発注元の加工業者より依頼を受けて受注するという、下請けという立場がほとんどです。大阪での価格競争が山陰・山陽エリアにも大きく影響し、かなりの低コストで発注されることもしばしば。できうる限りの企業努力をして、案件が他社ひいては他県に逃げていかないようにしなければなりません!コストの意識を常に持って業務を遂行することがより大事になってきましたね。
― 生き残るための具体的な取り組みとは?
これまで特許の出願などはしてなかったのですが、毒物を一切使用しないアルミ加工処理「アルマイト処理」という特許を取得。それがきっかけで今年2月にものづくり日本大賞中国経済産業局長賞を受賞しました。
また日本最高の研究機関であるNEDOより補助金採択により研究・開発し、ステンレスに色をつける世界初の技術開発に成功。それによって世界大手の信用調査企業である「クレディセイフ」にも登録され、世界から問い合わせが来るようになりました。
― 世界初の技術を誕生させること!これが大きな働き方改革だったのでしょうか?
いいえ、そうではありません!かたや従来のメッキ処理、かたや世界で唯一の技術。それらをきちんとマネジメントできていなければ価値がないわけです。事業継続計画(BCP)はもちろんありましたが、今後どうやってマネジメント(BCM)していくのかということが一番の課題になりました。
効率化により作業時間を週11時間削減!
― モノのインターネット化(IoT)の本格普及に向けて取り組みをされたとのことですが、具体的にはどのようなことでしょうか?
現在、取引会社は約600社ありますが、受注伝票の整理および管理が一番の問題でした。IoTの本格普及に向けてペーパーレス化が進み、おそらく5年後にはFAXでのやりとりなどはなくなると予測されます。そのため発注元会社を巻き込んだ意識改革に踏み込みました。
それまでダンボールに同梱もしくはFAXなどでもらっていた紙の発注書を発注日前日にエクセルデータでメールしていただきたい旨、発注元会社600社にFAXまたはメールでご案内し、さらに電話で丁寧にご案内・依頼をしました。作業効率が上がることで発注内容の誤認識の軽減や納期の短縮にも繋がることを説明し、ご納得いただけました。メールができないなど物理的に対応が難しい5社以外の全ての取引先の理解とペーパーレス化が実現しました。
これにより、1日の各作業現場の工数管理及び部門別損益の正確なデータが容易に把握出来る環境が整いました。
― その際にAKASHIを導入されたとのことですが、その後いかがですか?
ペーパーレス化を図るための工数管理システムとしてはもちろん、それまで従業員任せとなっていた勤怠管理についてもクリアになり、日々の作業時間への意識が高まっていっています。ペーパーレス化および作業時間への意識向上によって、総務部のスタッフが週11時間の作業時間を削減するという成果につながりました。いかにスピーディに作業ができたかということを数値で明確にアピールできることで、従業員たちにやりがいが生まれていったと思います。
また、導入1か月で週11時間の作業時間削減ですから、半年後には更なる削減が可能との報告も受けており、楽しみにしています。
能率管理なくして企業の成長なし!
― 作業時間を大幅にカットできた秘訣があれば教えてください!
鳥取県は平井知事が労働・雇用関係にも非常に重点を置かれており、平成30年度鳥取県戦略産業雇用創造プロジェクト・プロジェクト型人材育成推進事業補助金が採択され、IoT化の導入を進めることができました。
導入の一部でIoT化の核となっているAKASHIは、努力した結果や、過去に比べてどのように生産性が高められたかを図るものさしとして、能率管理に非常に役立っています。それが従業員の意識向上ひいては企業の成長へと繋がっていきますからね。また従業員と対話するというのも大きなポイントですね。
短期的・中期的な目標を提示して、未来のビジョンを共有することも企業が成長していく上で大切なコミュニケーションだと思います。同じビジョンを描くことで従業員から良いアイディアがもらえることもありますからね。
― 今後、新たな目標はありますか?
2019年4月には新社屋が完成予定です。ステンレスの発色技術の新会社も設立し、新ラインも同5月に導入予定となっています。
※2019年4月新社屋イメージ
引き続き企業努力は惜しまず、メッキ処理の利益率向上を図って行きたいと考えています。従業員には常日頃言っていることなのですが、短納期・高品質は当たり前。その中で利益率を上げるためには、作業効率を追求して人件費の削減していくことが課題になります。いかに作業効率を上げてクオリティを上げていけるのか、今後も従業員とともに模索していきます。
編集後記
木下さんが着任してからの6年で大きな成長を遂げた株式会社アサヒメッキ。その成功の裏には徹底した能率管理がありました。作業効率化、生産性の向上を従業員が一丸となって取り組む姿勢を見て、また新たな世界初を生み出していく予感さえしました。鳥取からさらなる発展を遂げるだろう日本のメッキ業界から今後も目が離せません!
【取材にご協力いただいた企業】
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