働き方改革関連法の施行により労働条件の見直しを考えている企業も多いのではないでしょうか。労働条件を修正する際には、就業規則の変更を伴います。勤務間インターバル制度の導入やフレックスタイム制の清算期間の延長を行う際に必須の作業ですので、就業規則の変更の流れについて確認しておきましょう。今回は、就業規則を変更する流れや注意点について解説していきます。
目次
働き方改革関連法とは、日本法における労働基準法、労働契約法などの労働法の改正を行うための法律の通称であり、2018年6月に成立しました。この働き方改革関連法が2019年4月から順次施行されるため、各企業は対策を求められています。
働き方改革関連法はいくつかの項目から成り、例を挙げれば、勤務間インターバル制度の努力義務や、3ヶ月のフレックスタイム制が可能になることなどがあります。前者の勤務間インターバル制度とは、疲労の蓄積を防ぐため、前日の終業時刻から翌日の時刻の間に一定以上の休息時間を確保する制度のことであり、後者のフレックスタイム制に関しては、これまで最長1ヶ月であった清算期間を最長3ヶ月まで拡充し柔軟な働き方を促進するという内容になっています。
働き方改革関連法によって上記のような内容が定められた中で、これらに合わせて制度の導入や変更を行うためには、就業規則を変更する必要があります。その際に適切な手順を踏まなければ、その変更が無効とされてしまうリスクもあるため、以下で解説する手順や注意点を踏まえた上で変更に着手するようにしましょう。
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就業規則を変更する流れは、大きく以下の5つのステップに分けることができます。
変更時に限ったことではありませんが、就業規則には必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、各事業場内でルールを定める場合には記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。必ず記載する必要がある内容は、以下の通りです。
なお、就業規則にて規定する内容については、法令や当該事業場において適用される労働協約に反してはならないと定められています。法令や労働協約に反する内容の就業規則は、所轄の労働基準監督署長によって変更を命じられる可能性があります。
さらに、以下の内容についても、定めがある場合には記載しなければなりません。
まず挙げられるのは、就業規則の変更は企業単位ではなく事業場単位で行われるという点です。そのため、例えば本社の他に事業場が2つある場合は、労働者の数を全体で合計するのではなくそれぞれの事業場ごとに考え、労働者が10人以上であれば就業規則を作成する義務があります。また、作成した就業規則は本社と2つの事業場のそれぞれで個別に労働基準監督署に提出する必要があります。ただし、本社とそれぞれの事業場の就業規則が全く同じ場合には、本社の所轄の労働基準監督署に一括して届け出ることも可能となっています。
第2の注意点として、労働組合が存在しない場合に意見を求める「労働者の過半数を代表する者」については、次の2つの条件を満たしている必要があります。
労働基準法では、作成した就業規則を次のような方法で周知することが定められています。
このように、社員に内容を理解させることまでは求められていませんが、社員が見たいときにいつでも見られるような状態を作っておくことが必要です。
また、就業規則は単に作成したり、労働者の代表者から意見を聞いたりしただけではその効力は発生しないとされています。実際に就業規則が効力を発揮するのは、就業規則が何らかの形で労働者に周知された時点以降のことであり、施行期日が定められている場合にはその日、そうでない場合には通常は労働者に周知された日とされています。
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今回は就業規則を変更する際の手順や、注意すべき事柄について解説してきました。働き方改革によってこれまでの制度に変更が生じているものもありますので、この機会に自社の就業規則をもう一度確認してみてはいかがでしょうか。
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