徹底解説! 女性活躍推進法

女性の活躍を推進するため、2015年に「女性活躍推進法」が新たに成立しました。この法律の施行により、2016年4月から、従業員が300人を超える企業に対して女性の活躍を支援するための取組が新たに義務付けられています。

法令を遵守し、女性の職業生活における活躍を適切に支援するためにも、法律の内容を正しく理解しておく必要があります。今回は、女性活躍推進法について説明します。

 

女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)とは

女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、働く場面で活躍したいという希望を持つすべての女性の個性や能力が十分発揮され、豊かで活力ある社会の実現を目指すため、2015年8月に新たに成立した法律です。

女性の就業率は上昇しているものの、就業を希望しながら働いていない女性は約300万人に上り、第一子の出産とともに約6割の女性が離職するなど、出産や育児を理由に働けていない女性は依然として多いのが現状です。

また、出産や育児後に再就職をした場合、パートなどの非正規雇用として働く人も多く、女性雇用者における非正規雇用者の割合は6割近くとなっています。さらに、女性管理職の割合は諸外国に比べても低い水準です。

このような、働く場面において女性の力が十分に発揮できていないという状況を踏まえ、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進するために、新たに法律が制定されました。

 

企業に新たに義務付けられる事項

女性活躍推進法の施行により、2016年4月から、従業員が300人を超える企業には新たに以下の取組が義務付けられることになりました(従業員が300人以下の企業は努力義務)。

 

(1)女性の活躍に関する状況の把握と課題分析

企業は、自社の女性の活躍に関する状況を把握し、課題分析を行う必要があります。その中でも必ず把握しなければならない「基礎項目」とされている、①採用者に占める女性比率、②平均継続勤務年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率については、必ず把握して課題分析を行う必要があります。

基礎項目について状況把握と課題分析を行った結果、企業にとって課題であると判断された事項については、以下の「選択項目」を活用してさらにその原因を深めましょう。

選択項目としては、①採用、②配置・育成・教育訓練、③継続就業・働き方改革、④評価・登用、⑤職場風土・性別役割分担意識、⑥再チャレンジ(多様なキャリアコース)、⑦取り組みの結果を図るための指標、といった項目が挙げられます。各企業の実情に応じてこれらの項目を把握することで、より深く自社の課題分析ができるようになります。

 

(2)事業主行動計画の策定・社内周知・公表・届出

(1)で女性の活躍に関する状況の把握と課題分析ができたら、これに基づいて、課題解決のための行動計画(事業主行動計画)を策定する必要があります。また、事業主行動計画を策定したら、社内への周知および外部への公表を行うとともに、都道府県労働局へ届出を行うことが必要となります。

事業主行動計画の策定方法については、後ほど詳しく解説します。

 

(3)女性の活躍に関する情報の公表

企業は、就職活動中の学生など求職者の企業選択に資するとともに、優秀な人材の確保と企業の競争力向上につなげるため、自社の女性の活躍に関する情報を公表する必要があります。

厚生労働省が示す、①採用、②継続就業・働き方改革、③評価・登用、④再チャレンジ(多様なキャリアコース)の4分類・14項目の中から必要と認める任意の情報を選択し、1年に1回以上、公表日を明らかにしたうえでインターネットなどにより情報を公表します。

これらの項目は、必ずしもすべてを公表しなければならないものではありませんが、公表範囲そのものが企業の女性活躍推進に対する姿勢を表すものとみなされますので、積極的に情報を公表するようにしましょう。

 

事業主行動計画の策定方法

事業主行動計画の策定方法について、ここではより詳しく御説明します。

 

(1)状況把握と課題分析

計画の策定にあたっては、まず女性の活躍に関する状況把握と課題分析を丁寧に行うことが大切です。

例えば、状況把握において「男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワークなどの柔軟な働き方に資する制度の利用実績」の項目の得点が低いことが分かった場合、制度が労働者のニーズを満たしていない、制度が労働者に知れ渡っていない、制度の利用を申請しにくい環境にある、などと様々な課題が考えられます。こうした具体的な課題を明らかにしたうえで、その解決策としての行動計画を立てていきます。

 

(2)事業主行動計画の作成

いよいよ、行動計画を作成します。計画に盛り込むべき内容としては、①計画期間、②数値目標、③取組内容・実施時期が挙げられます。

 

①計画期間

計画期間は、2016年度から2025年度までの10年間を、各企業の実情に応じて2年から5年の単位で区切ります。定期的に行動計画の進捗を検証しながら、改定を行うようにしましょう。

 

②数値目標

計画期間を定めたら、先に行った課題分析の結果に基づいて、最も大きな課題だと思われるものから優先的に数値目標を立てていきます。ここでいう数値目標とは、具体的な数値を示すもの(営業職で働く女性を○人以上とする、等)、比率や倍数を用いるもの(採用者に占める女性の比率を○%以上にする、等)のいずれでもよいですが、計画期間内に達成を目指すものとして、各企業の実情に見合った水準にすることが欠かせません。

 

③取組内容・実施時期

②で数値目標の設定を行ったら、その数値目標の達成に向けてどのような取組を行うべきかを検討し、取組内容を決定しましょう。また、取組内容と併せて実施時期も検討し、計画に記載するようにします。

なお、行動計画の内容は、男女雇用機会均等法(均等法)等の法令に違反しない内容とすることが必要です。例えば、「管理職に占める女性割合を8割まで引き上げる」という目標を立てた際に、達成のための取組内容を「女性のみを対象とした管理職育成研修を実施する」などとしてしまうと、均等法違反となってしまいます。この場合は、「対象者となる男女社員に対して管理職育成研修を実施する」など、男女双方を対象とした取組を実施することで、数値目標の達成を目指すようにしましょう。

 

(3)周知・公表・届出

行動計画が出来上がったら、社内に通知するとともに、外部に公表をします。社内に通知する際は、すべての労働者が閲覧しやすいように、社内の見やすい場所に掲示したり、従業員全員に電子メールで送付したりするようにしましょう。

外部に公表する際も、すべての人が閲覧しやすいように、自社のホームページや、厚生労働省が運営する「女性の活躍・両立支援サイト」へ掲載するようにしましょう。

なお、行動計画を策定した際には、企業が所在する都道府県の労働局にも届け出る必要がありますので、忘れないようにしましょう。

 

 

まとめ

女性の活躍推進を実効性の高いものにするためにも、的確な状況把握・課題分析と具体的な行動計画の策定が欠かせません。女性活躍推進の取組を積極的に進めることは、優秀な人材を獲得することにつながります。取組が義務とされている大企業はもちろんのこと、努力義務とされている中小企業においても、積極的に取組を行うようにしましょう。

なお、行動計画を策定する際は、厚生労働省が運営している「女性の活躍推進企業データベース」が役に立ちます。ここでは他企業の行動計画等を確認することができますので、自社の計画策定にあたって、ぜひ参考にしてみるとよいでしょう。

また、行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良であると認められた企業は、申請により厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)を受けることができます。こちらも企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながりますので、ぜひチャレンジしてみるとよいでしょう。

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