春は転勤のシーズンです。転勤時には、保険に関するいくつかの書類を提出する必要があるのをご存知でしょうか。保険は事業所単位で登録されているため、たとえ同じ会社であっても転勤により事業所が変われば、「雇用保険被保険者転勤届」を提出しなければなりません。今回は、転勤時の「雇用保険」に関する手続きを紹介していきます。
目次
雇用保険とは、被保険者である労働者が失業などにより職を失った際に必要な金額を給付して、生活の安定及び再就職を促進する保険のことです。雇用保険法に基づき、事業主は基準を満たす労働者を新しく雇い入れた際に、ハローワークに被保険者となったことを申請しなければなりません。原則として、所定労働時間が週20時間以上でひと月以上の雇用が見込まれる労働者に関しては、その雇用形態にかかわらず雇用保険への加入手続きをする必要があります。被保険者は支給要件を満たせば以下の給付を受け取ることができます。
ここでの転勤とは、「勤務地が変更となる異動のうち、引っ越しを伴うもの」です。そのため引っ越しを伴わない出張や、工事現場などでの期間が限定される作業の場合、転勤とは言えません。ただし、1つの事業が複数に分断されるケースや、事業の譲渡の結果として新しい事業主との雇用契約が結ばれる場合などは転勤として扱うことができます。
被保険者の転勤があった日の翌日から10日以内に、事業主は「雇用保険被保険者転勤届」を被保険者の転勤先の事業所を管轄するハローワークに提出しなければなりません。なお、「事業所非該当承認申請書」をハローワークに提出し、転勤先と転出元が同一の事業所と認められた場合には、この「雇用保険被保険者転勤届」の提出は必要ありません。
雇用保険被保険者転勤届はハローワークのウェブサイトでダウンロードすることができます。必要事項を記入の上、転勤先の事業所を管轄するハローワークの受付窓口に、後述する添付書類とともに提出します。ハローワークの営業時間は月曜日~金曜日(祝日を除く)の8時30分~17時15分(年末年始を除く)となっております。なお、転勤届は白紙に倍率100%で印刷することなどが指定されており、注意が必要です。
関連記事:
・【総務担当者必見!】社員のライフイベントに必須の手続きまとめ
・【平成29年1月~】雇用保険の適用範囲が拡大します―65歳以上の労働者も雇用保険の適用対象となります―
ハローワークへの申請時には、雇用保険被保険者転勤届以外にも、以下の書類の提出が求められることがあります。
書類に不備があれば転勤が完了しない場合もありますので、気をつけましょう。提出後はハローワーク側から雇用保険被保険者証、転勤届受理通知書などが交付されます。このうち、被保険者証は速やかに労働者本人へ渡してください。
転勤届をハローワークの窓口で提出する以外にも、電子申請という方法があります。オンラインで行政サービスを行うポータルサイト「e-Gov(イーガブ)」の電子申請システムを利用して、インターネット上で手続きを行います。その場合、事前にID、パスワード、電子証明書を取得しておく必要があります。厚生労働省の「雇用保険関係手続き電子申請のご案内」から詳細をご覧の上、申請時に表示される様式にしたがって必要事項を記入していきます。添付書類が電子ファイルで準備できない場合は、郵送も可能です。システムは基本的に365日24時間運営されており、時間の制約がある窓口での受付よりも便利となっております。
社員の転勤に際しては、雇用保険だけではなく社会保険に関する書類も提出しなければなりません。最後に、こちらの手続きについても簡単に紹介いたします。
社会保険とは国が国民の生活を保障するために定めた公的年金で、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5種類があります。一定の条件を満たす国民は社会保険に加入して保険料を負担する義務があります。
社会保険は雇用保険と同じく、保険が事業所単位で適用されます。しかし手続き内容は雇用保険とは異なっており、必要書類の提出期限は転勤した翌日から5日以内です。また提出書類については、被保険者資格喪失届を転勤前の事業所を管轄する社会保険事務所または健康保険組合に、被保険者資格取得届を転勤後の事業所を管轄する社会保険事務所または健康保険組合に、それぞれ資格喪失日と資格取得日を同じ日付にして提出する必要があります。なお、社会保険を本社で一括加入している場合にこれらの手続きは必要ありません。
関連記事:
・社会保険料計算の基礎、「標準報酬月額」について解説
・【平成28年10月1日~】社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用が拡大されます
転勤は企業活動の不可欠な一部です。雇用保険被保険者転勤届の提出期限は短く、また添付書類も意外とあり、手続きは簡単に終わるものではありません。ハローワークのホームページ等を参照するなどして、余裕を持って準備していきましょう。また、現在は電子手続きなどもあります。自社に合った申請方法を選択し、提出をしましょう。
This website uses cookies.