手書きで十分?中小企業でタイムレコーダーを導入するメリット

労働基準法の改正により、月60時間超の残業については割増賃金率が25%から50%に引き上げられました。法令を遵守して適切に支払うには労働時間の適正な管理が必要です。厚生労働省が客観的な記録方法の一つに挙げているタイムレコーダーはどのようなメリットがあるのでしょうか。導入の際の注意点などを含めて解説します。

ご存じですか?勤怠管理の方法は多様化しています!

  • 客観的な方法による勤怠管理の必要性

改正労働基準法により平成22年4月から、月60時間を超える時間外労働に対しては50%の割増賃金が必要になりました。平成28年7月現在、中小企業には適用が猶予されていますが、平成28年4月から適用猶予を廃止する法案が国会に提出されるなど、近い将来、適用になることが予想されています。たとえ、割増賃金の適用になっていないとしても、社員の労働時間を正しく管理し、長時間労働を少なくする必要性は企業の規模にかかわらず必要なことです。

また、厚生労働省は平成12年の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」において労働時間を適正に管理することを“使用者の責務”としています。この指針の背景にあるのは、残業代の未払いや過重労働による健康障害などの問題です。労働時間を明確にしていない企業、あるいは社員の申告による方法で確認しているところも多いため、適正な勤怠管理が困難になっていることも少なくありません。

指針では自己申告ではなく、使用者自身が社員の出退勤時刻を直接、確認(現認)して記録に残す方法や客観的な方法による記録を基礎として確認する方法を挙げています。ここで客観的な方法として挙げられているのはタイムカードをはじめ、パソコンでの入力やICカードなどによって記録する方法です。

客観的な方法といっても、タイムカードなどに記録された出退勤時刻がそのまま労働時間を示すとは限りません。しかし、使用者が労働時間を把握せずにいると、社員との間で争いが起きた場合には使用者の方が不利になることもあります。指針にも記されていますが、タイムカードなどの記録を「基本情報」として、必要に応じて残業命令書や報告書などとの「突き合わせ」も必要です。

  • 多様な機種の登場でより便利に!

勤怠管理の方法は手書きによる方法やタイムレコーダー、また、パソコンやスマホなどを利用した勤怠管理システムの3つの方法があります。

タイムレコーダーの主流は、以前からある紙のタイムカードをレコーダーに挿入して打刻するタイプです。しかし、最近では「勤怠管理ソフト」が付いたタイムレコーダーやシステムタイムレコーダーと呼ばれるICカードで打刻ができるタイプも登場しています。これらのタイプは勤怠データをSDカードやUSBケーブルなどによってパソコンに移行できるため手作業に比べて集計が早く、ミスを防ぐこともでき手間もかかりません。

また、勤怠管理システムはICカードによる打刻のほか、パソコンやタブレット、スマホなどを使って打刻することも可能です。勤怠データの確認や休暇の申請などもでき、さらに、GPS機能によって社外にいても社内と同じように利用できるなど、多機能で、しかも使いやすさが向上しています。

*「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」

引用元URL:http://www.mhlw.go.jp/houdou/0104/h0406-6.html

 

どんな特徴がある?管理方法別のメリット・デメリット

  • 手書きはメリットもあるが不便なことも?

手書きで記入している場合、出勤表や残業指令書などを準備する必要はありますが、タイムレコーダーの購入もシステムの利用料も発生しないので費用は抑えられます。ただ、毎日、記入するのは面倒で、担当者は毎月、集計や入力に手間と時間が必要です。それでも、社員数がそれほど多くなく、担当者が集計や入力の作業に慣れていれば、「それほど苦にならない」ということもあるでしょう。

しかし、担当者一人に任せきりで、その人が何らかの理由で不在になると、どのように集計するのかわからず、給与計算に困ったということ話を耳にしたことはありませんか。また、パートやアルバイトなどの雇用形態の異なる社員が増えたり、事業の拡大に伴い社員が増えたり、勤怠管理が複雑になった場合はどうでしょうか。

社員の増加だけでなく、本社から離れた場所に支社ができたときは、これまでの管理方法では対応しきれないといったことも起こります。そこで必要になるのは、より簡単に、より効率のよい勤怠管理方法への転換です。

  • タイムレコーダーと勤怠管理システムの違いは?

タイムレコーダーは先ほどお話ししたように紙のタイムカードを使う方法のほか、勤怠管理ソフト付のレコーダーなどでICカードを利用する方法があります。また、勤怠管理システムにも二つのタイプがあり、一つは「オンプレミス型」と呼ばれる自社に必要な機能をカスタマイズできるタイプです。

もう一つは「クラウド型」というもので、オプションの追加や複数のプランから選ぶことはできますが、基本的には標準とされる機能が提供されます。カスタマイズを自由にできないため、自社にぴったり適合するとはいえませんが、その分、初期費用があまりかからず導入しやすいことがメリットです。

  • タイムカードのデメリットを解決するには?

タイムレコーダーのうち、紙ベースの場合は比較的、安く導入でき、機能がシンプルな機種は操作も単純でわかりやすいといったメリットがあります。ただし、集計に手間がかかり、月の合計時間数も月末までわかりにくいなどの点は人事担当者を悩ませていることでしょう。それを解決するにはクラウド型のシステムを利用するのも一つの方法です。

 

 

多彩なラインナップ!あなたの職場に適するのは?

  • 自社での問題は?何を優先して改善したいのか?

これまで社内で問題となっていた点は何か、それをどのように改善したいのかを明らかにして、目的に合った機種を選定しましょう。機能としては、基本的な機能だけのものから、パソコンに勤怠データを送り、集計などをパソコンで行える勤怠管理ソフト付のタイムレコーダーなど便利な機種まであります。勤怠管理ソフトが付いたものはUSBケーブルやSDカードで勤怠情報をパソコンに取り込むことができ、給与計算ソフトとも連動しているものがほとんどです。また、ICカードで打刻するタイプは、これまでのタイムレコーダーよりも小型化されているためスペースが狭くても設置でき、毎月、新しいカードを用意する手間も費用も必要ありません。

さらに、機械操作に不安がある人向けの音声ガイドや視覚障害のある人も使いやすい点字を入れたバリアフリサルデザインのものなど、便利で使いやすい機種が増えています。夜勤などの特殊勤務を専用ボタンや「夜勤カード」といったもので区別できるもの、複数のシフト勤務に対応したものや雇用形態別に分けられるものなど機能もさまざまです。

価格帯はシンプルな機能のものは2~3万円代でも購入できますが、多機能になると10万円前後から数十万円のものまで幅があります。

  • わかりやすい機種の導入で客観的な記録をスタート

導入に際しては、就業規則に合った設定や法令の変更に沿って適宜、変更ができるかといった点が重要です。たとえ、性能がよく、便利になったといっても自社に必要な機能なのか、自社の交替制勤務や多様な雇用形態に適しているのかといった点をよく確認しましょう。

また、タイムレコーダーはカードを挿入すればよいといった「わかりやすさ」が魅力です。自社にとって必要な機能を優先するにしても、多くの機能を備えた機種は操作ボタンが増えたり、操作が複雑になったり、やや使いにくいという場合もあります。

タイムレコーダーを初めて導入する場合はあまり多くの機能を求めず、社員が楽に使えることに重きを置き、打刻中心の簡単でわかりやすい機種でスタートするとよいでしょう。カードの打刻は、その場で印字された時刻を確認できるので「きちんと押せたか」が気になる社員にとっても安心です。

 

ここが重要!タイムレコーダー導入で留意すべき点

  • 社員数が少ない支社にも1台?

タイムレコーダーに切り替える場合、社員の人数に見合うレコーダーの用意が必要です。出社や退社の際には行列ができるほどであっても、普段は誰も使用しないという偏りも生じます。また、支社の社員数がたとえ少数でもレコーダーを1台、用意しなければならないなど効率のよくない事態も少なくないでしょう。そのような場合には、タイムレコーダーよりも勤怠管理システムを導入する方が自社に合った利用方法になることもあります。

社員が普段からパソコンやスマホを使っている職場であれば、より導入しやすい環境といえます。クラウド型の勤怠管理システムは初期費用が不要のものも多く、タイムカードにはない多彩な機能を備えていますので幅広く検討するとよいでしょう。

  • 円滑な導入に必要なのは社員の理解!

勤怠管理は社員全員にかかわることですから、会社からの一方的な変更ではなく、予め社員に丁寧に説明して理解を得ることは極めて重要なプロセスです。労働時間を厳密に管理するといったとき、いつも遅刻気味だった人などは反対する可能性もあります。

しかし、「手書きは面倒だったから」と思う社員やきちんと管理することで適正な残業代が支払われ、公正な管理が行われることをむしろ歓迎する社員も少なくないでしょう。人事労務担当者としては社員の不安に応えるなど丁寧な対応を心がけ、新しい管理方法をできるだけスムーズに導入し、適切な勤怠管理を行ってください。

 

まとめ

厚生労働省が使用者の責務としている労働時間の適正な把握は、後回しにしてよいことではありません。客観的な記録方法は紙のカードを用いたタイムレコーダーのほか、ICカードやスマホなどを利用した方法などいくつかの方法から選ぶことができます。それぞれの方法にメリット、デメリットがあり、機能も多様です。自社にとって何を優先したらよいかを丁寧に検討して新しい管理方法を決めましょう。

 

*参考サイト

・労働基準法の一部改正法が成立

http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1e.pdf

・労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/070614-2.pdf

・平成28年4月1日から予定していた労働基準法の一部改正案について

http://www.office-matsuda.jp/article/15183127.html

・タイムレコーダー タイムカード特集

http://www.askul.co.jp/f/timecard/timecard00/

・タイムレコーダー機能一覧

http://www.amano.co.jp/Tr/product/t_recorder/function.html

・タイムカード運用のリスク

http://www.roukitaisaku.com/taisaku/jituroudoujikan.html

・今さら聞けないオンプレミスとクラウドの違いとは?4つのポイントを徹底比較!

・ご利用例(オフィス) 全国4拠点をインターネットで繋ぎ、勤怠管理の省力化を実現。

http://www.bit-drive.ne.jp/itr/case01.html

・勤怠管理システム サービス紹介 AKASHIで実現できること

https://ak4.jp/service/

・「勤怠管理表」がいらなくなる!!クラウド型勤怠管理がエクセル管理を変える

http://boxil.jp/magazine/201603_attendance-management_merit/

・どれだけ便利?タイムカードと勤怠管理システムの比較

http://www.kintaisystem.com/column/column04.html

・タイムレコーダーを導入して逆効果?

http://www.mbp-kintai.com/?p=555

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