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ティール組織とは、一言で言えば「上司のマネジメントがなくとも、組織の目的の実現に向けて進むことのできる自律的な組織」です。この新しい概念は、フレデリック・ラルーがその著書『ティール組織』で提唱したものです。原題は「組織の再発明」を意味するこの本において、ラルーは人間の組織を後述する5つの段階に色分けし、それぞれの特徴を解説します。そして従来の組織の美点を統合した、まったく新しい組織のあり方として青緑の組織、すなわちティール組織の可能性を説きます。
ティール組織には3つのキー要素があります。
この3つの要素があれば、ティール組織は成立すると言われます。
まずはラルーが分類した、組織の5段階について解説します。
RED組織はオオカミの群れに喩えられます。組織運営の特徴として、個人の力による支配的な運営が挙げられます。組織が短期的にどう生存していくかに焦点が当てられがちで、衝動的な組織運営となっています。良い意味でも悪い意味でも個人の力に依存している状態です。
AMBER(琥珀色)組織はよく軍隊的と称されます。組織内は明確な役割が決められており、厳格にその役割を全うすることが求められるのが特徴です。RED組織では力が個人に集中していたため不安定でしたが、支配する側の役割を組織構造の中に組み込むことで個人への依存度を減らし、より組織が安定します。しかし規律が何よりも重んじられるため、創造性の生まれる余地が乏しくなります。
ORANGE(オレンジ)組織は機械に喩えられます。この組織では、従業員のヒエラルキーは存在しつつも、成果をあげた従業員が昇進していくのが特徴です。この組織では時代にあった能力や才能を持っているものが力を発揮しやすく、イノベーションが生まれやすいというメリットがあります。しかしながら、絶え間ない競争の中で機械のように働き続けることで「人間らしさの喪失」が起こる恐れがあります。
GREEN(緑)組織は家族に喩えられます。NGO団体等によく見られるこの組織では、ORANGE組織と同様にヒエラルキーは残るものの、個々人の主体性を発揮するためにボトムアップ式のプロセスを重視し、多様性が尊重されるのが特徴です。しかしメンバー間での合意形成に時間を要しがちで、また最終的な意思決定権は常にトップにあります。
TEAL(青緑。マガモの頭の羽の色をさす言葉です)組織の暗喩は生命体です。組織はリーダーが管理するものではなく、1つの生命体のように進化に開かれたものとして捉えられます。メンバーは進化し続ける組織の目的を実現するために、互いに共鳴しながら自律的に動いていくことがこの組織の特徴です。
このように、ティール組織とは組織の5段階のうちの最終段階にあたるものと位置づけられます。次に、ティール組織を構成する要素について見ていきます。
ティール組織には、必須となる3要素があるといわれています。
ティール組織は組織自体を、マネジメント側の所有物ではなく、1つの生命体と捉えます。生き物に生きる目的があるように組織も目的を有しており、そして組織が存続していく中でその目的も進化していきます。
社長や指示系統での命令ではなく、メンバー全員が自己管理を行って組織の目的を実現していくことが重要視されます。これを実現していくにあたって、情報の透明化や意思決定プロセスの権限移譲、人事プロセスの明確化が不可欠です。
個人が様々なタイプの仕事に全人格的にチャレンジできるような環境を作ることで、個人が多様な能力を発揮して創造性とイノベーションを生み出すことが目指されます。そのためにも、メンバーの不安を解消するよう多様性を尊重し、心理面での十全なケアを行える体制が求められます。
提唱者のフレデリック・ラルーは、現在の所「ティール組織を導入しているところはほとんどいない」と著書の中で述べています。しかし世界的にもまだ数少ないティール組織の実例としてしばしば言及されるのが、オランダの在宅ケア事業を行うNPO法人「ビュートゾルフ」です。24カ国に850チームを有するこの団体は、各チームにマネージャーを設けないという方針のもと驚くべき急成長を果たしました。
ティール組織は組織運営の理想形の1つかもしれませんが、実際にティール組織と呼び得る組織はごく僅かというのが現状です。組織の5段階のフェーズを辿り最後のティール組織まで到達することは、非常に困難であると言えるでしょう。しかし、ティール組織の考え方は大きな可能性を秘めていますので、ぜひこの機会に自分の組織の現状に照らして検討してみてはいかがでしょうか。
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