2017年度税制改正により「所得拡大促進税制」の適用要件の見直しが行われ、特に中小企業に対して強力な賃上げ支援が図られることとなりました。企業においては、所得拡大促進税制を活用して、従業員への賃上げを行うことが期待されます。
所得拡大促進税制の適用を受けるためには一定の要件を満たす必要があることから、要件を把握しておくことが重要です。
今回は、所得拡大促進税制の内容や改正ポイントを解説します。
目次
所得拡大促進税制とは、企業が一定の要件を満たしながら国内雇用者に対する給与を増加させた場合に、国内雇用者に支払った給与等の総額について、前事業年度から増加した金額の15%を税額控除する制度です。所得拡大促進税制は、企業が雇用者に支払う給与を増加させることで個人の所得拡大を図り、個人の所得水準の改善を通じた消費拡大やそれに伴う景気の好循環を実現することを目的としています。
所得拡大促進税制の適用対象は、2013年4月1日から2018年3月31日までの期間内に開始する各事業年度です。
所得拡大促進税制は、青色申告をしていれば、業種や従業員数による制限なく個人事業主から大企業まで幅広く利用することが可能です。
なお、中小企業の場合、大企業よりも制度の適用要件が緩和されています。ここでいう中小企業とは、資本金の額が1億円以下の法人のことをいいます。
所得拡大促進税制を利用するにあたって、事前申請を行う必要はありません。ただし、法人税の申告の際に給与等支給増加額や控除を受ける金額に関する明細書を添付することが必要であり、明細書の添付を忘れてしまうとその年度は制度が適用されなくなってしまうので注意が必要です。
所得拡大促進税制には、通常の税制のほかに上乗せ措置があり、適用のための要件が異なります。
継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額と比べて1.5%以上増加していることが適用要件となっています。この要件を満たすと、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の15%が税額控除されます。ただし、控除額の上限は調整前法人税額(個人事業主の場合は調整前所得税額)の20%です。なお、ここでいう継続雇用者の定義は下のすべての条件を満たす者とされています。
通常よりも厳しい要件を満たす場合、税額控除割合を10%上乗せする措置を受けることが可能です。適用要件は、継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額と比べて2.5%以上増加していることに加え、下記のいずれかを満たしていることです。
2018年度税制改正では、税額控除額の変更や用件の緩和などが行われたことで企業が享受できるメリットが大きくなりました。また上乗せ措置が追加され、人材投資や生産性向上と併せて活用できる制度になりました。
上記に挙げた要件や税額控除は中小企業向けの税制であり、大企業向けの税制は別に設けられています。中小企業向けの税制は名前が「所得拡大促進税制」であるのに対し、大企業向けの税制は「賃上げ・生産性向上のための税制」という名称です。
中小企業向けの税制と同様に通常の税額控除と上乗せ措置が講じられており、その要件と控除額は次のように規定されています。
通常の税額控除では以下のどちらもの要件を満たす必要があります。
要件を満たした場合、給与等の増加額の15%が税額控除されます。ただし、控除額は法人税額の20%が上限となっています。
上乗せ措置を利用する場合には通常の要件に加えて、適用年度における教育訓練費の額が過去2年における教育訓練費の額の平均値より20%以上増加していることが必要です。要件を満たした場合、給与等の増加額の20%が税額控除されます。ただし、控除額は通常の場合と同様に法人税額の20%が上限となっています。
所得拡大促進税制は、企業にとって賃上げと生産性向上への強力な追い風となっています。特に、適用要件が緩和されたことで、より多くの企業が恩恵を受けられるようになりました。所得拡大促進税制をうまく活用し、効率よく従業員への賃上げを図りましょう。
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