企業にとって資金調達は事業をしていく上で重要なポイントとなっています。資金調達には融資を受ける方法もありますが、国や自治体などが設けている助成金制度を利用するのも手堅い方法です。ここでは、どのような助成金があるのかと、申請する際に注意する点を併せてご紹介します。
目次
「助成金」は、金融機関などからの「融資」のように資金を得ることができますが、返済の必要がない点は融資と異なり、大きなメリットです。また、「補助金」と似たものに「助成金」がありますが、両者には違いがあります。補助金の多くは予算の範囲で決められるため、受給要件は満たしているのに申請がなかなか通らないということが少なくありません。
また、補助金のうち、特に研究開発の場合は高額というメリットがある半面、10倍を超える応募倍率になることも多く、年に1~2回の公募期間もかなり短いなど条件が厳しいようです。
一方、助成金は受給要件を満たしていれば、申請がほぼ認定されて助成金を受け取ることができます。特に、厚生労働省の雇用に関する助成金は新設や拡充したものが多いです。また、助成金の特徴として「後払い」が多いため、一時的には資金が必要になります。
その点は助成金のデメリットといえますが、要件を満たせば返済不要の資金がほぼ確実に受け取れる点は、見逃せないメリットです。利用できる助成金を探して上手に活かしましょう。
助成金は雇用促進をはじめ、従業員のキャリアアップ形成など厚生労働省が制度化したものが数多くあります。ここでは目的に沿ってご紹介します。また、助成金を利用するためには、雇用保険など、労働保険の適用事業所であることが条件になることが多いので注意してください。
「雇用調整助成金」
景気の変動などによって資金繰りが厳しくなると、従業員の雇用調整を含む事業の縮小が必要になることもあります。しかし、このような厳しい状況の中でも、雇用を維持したときに利用できるのが雇用調整助成金です。受給の要件としては売上高などの減少が10%以上、あるいは一時的な雇用調整として実施した休業や教育訓練等が基準を満たすことが求められます。
【助成額(率)】
また、新型コロナウイルスの影響を受け、令和2年4月1日から9月30日までの期間を1日でも含む賃金締切期間について、受給額の特例措置が打ち出されました。該当期間では企業規模にかかわらずすべての企業で受給額の上限が1人あたり日額15,000円まで引き上げられます。さらに、雇用の維持に努めた中小企業への助成率が10/10(100%)にまで拡充されます。
「キャリア形成促進助成金」
従業員のキャリア形成につながる職業訓練などを行った場合に、訓練にかかる費用や訓練中の賃金の一部が助成されます。平成28年4月から助成金のメニューが次の4類型に整理・統合されました。助成額(率)は各コース、および訓練方法や中小企業かどうかなどによって細かく分かれています。たとえば、中小企業の場合、賃金助成は1人あたり最大800円/時です。
キャリア形成促進助成金には従来の助成内容が拡充されたものがあるほか、中高年の従業員に対する雇用型訓練、また、制度導入コースには社内検定制度などが新設されました。
「両立支援等助成金」
両立支援等助成金は職場における女性の活躍の推進をはじめ、男性の育児休業の取得促進、介護離職の予防などの取り組みに関する助成金制度です。両立支援等助成金は、2020年7月現在以下の5つのコースから構成されています。
「働き方改革推進支援助成金」
働き方改革関連法の施行を受け、「職場意識改善助成金」や「時間外労働等改善助成金」から統合や名称変更を経て「働き方改革推進支援助成金」が設立されました。
働き方改革推進支援助成金は生産性の向上や労働時間の削減等の課題解決に取り組む中小企業に対する助成制度で、以下の5つのコースから構成されています。
企業では正社員だけでなく、パートやアルバイトなど多くの非正規社員が働いています。働き方が多様化する中、短時間勤務を望む人がいる一方で、平成28年1~3月の労働力調査(総務省)をみると、正社員になれず不本意ながら非正規でいる人はおよそ17%でした。性別で分けると、女性は11.7%ですが男性では27.5%に及びます。企業にとって非正規社員は事業における重要な担い手であり、働きやすい環境への改善や人材育成は大きな課題です。
国としても非正規社員に対する支援強化の一環として「若者雇用促進法」に基づき平成27年10月から認定制度をスタートさせました。『認定事業主』になると、以下に挙げるような助成金制度を利用できるなどのメリットがあります。
「キャリアアップ助成金」
認定事業主が正社員化や人材育成などに取り組んだ場合に助成金が支給されます。助成額は、中小企業かそれ以外か、また、各コースの中でも取組内容によって細かく設定されていますのでよく確認することが重要です。中小企業で、たとえば有期契約等から正規雇用への取り組みをした場合は原則、1人あたり57万円が助成されます。
「トライアル雇用奨励金」
認定された事業主が、35歳未満の人に対してトライアル雇用を実施した場合に奨励金が支給されます。トライアル雇用1人あたりに支給されるのは、原則4万円(最大5万円)、最長で3ヶ月間です。
助成金制度は社会情勢に強い影響を受けて創設されるため、受給要件や助成内容が変わることも多く、ときには廃止になってしまうことも少なくありません。そのため、常に新しい情報に基づいて申請の準備をすることが重要です。一方、社内の異動についても正確に把握してください。社員の退職や働き方の変更などによって、受給要件を満たさなくなることもあるので気を付けましょう。
制度の変更や廃止に伴い、予定していた制度の申請ができなかったという残念な事態が起こらないように申請はできるだけ早い時期に済ませることが大切です。慣れない仕事はわからないことが多く、思うように進まないこともあります。早めに準備を始め、気持ちにゆとりをもって必要な書類をしっかり整えましょう。
企業でいますぐに使えそうな助成金は、雇用関係を中心に従業員のキャリアアップ支援やテレワークの助成など社会のニーズに合わせて変化しています。また、国の助成金だけでなく、自治体などにも助成金制度があるので日頃から新しい情報に注意し、「知らなかった!」という見逃しを防ぎましょう。そして、利用できる助成金があったときは、早めの準備で返済不要の資金を確実に受け取れるようにしてください。
参考サイト
そもそも助成金とは?利用するメリットは?
いますぐ使えそうな助成金を目的別に探す
「若者雇用促進法」の認定事業主が利用できる助成金
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