請負契約や金銭消費貸借契約書など一定の文書を作成した場合、印紙税が課され、収入印紙の貼り付けが必要となります。課税文書の作成時までに印紙税を納付しなかった場合や、貼り付けた印紙を所定の方法によって消印しなかった場合は、過怠税が徴収されることとなるので注意が必要です。
今回は、印紙税の課税対象となる契約書等の種類や印紙税額、印紙税の納付方法について解説します。
目次
印紙税は、多額の金銭授与が関与する取引において、契約書等の文書を発行する際に課せられる税金です。課税額は、文書の種類や契約に関わる金銭の額によって異なり、最大で60万円にのぼります。
印紙税が課される目的は、課税対象となる文書が作成されることで発生する経済的利益に対する対価であると考えられています。
印紙税の課税対象となるのは、以下の要件すべてを満たす文書(課税文書)です。
文書においては同じ契約でも様々な文言が用いられるため、課税文書に該当するか判断するには、形式に関係なく記載されている実質的な内容を汲み取る必要があります。
以下に当てはまる文書は、書面に記載されている契約金額の範囲によって、下表のとおり印紙税額が定められます。
契約金額 | 第1号 | 第2号 | 第3号 | 第4号 | 第17号 |
1万円未満 | 非課税 | 非課税 | 非課税 (※1) | 200円 | 非課税 (※2) |
1万円を超え5万円以下 | 200円 | 200円 | |||
5万円を超え10万円以下 | 200円 | ||||
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 | |||
50万円を超え100万円以下 | 1000円 | ||||
100万円を超え200万円以下 | 2000円 | 400円 | 400円 | 400円 | |
200万円を超え300万円以下 | 1000円 | 600円 | 600円 | ||
300万円を超え500万円以下 | 2000円 | 1000円 | 1000円 | ||
500万円を超え1000万円以下 | 1万円 | 1万円 | 2000円 | 1000円 | 2000円 |
1000万円を超え2000万円以下 | 2万円 | 2万円 | 4000円 | 2000円 | 4000円 |
2000万円を超え3000万円以下 | 6000円 | 6000円 | |||
3000万円を超え5000万円以下 | 1万円 | 1万円 | |||
5000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 6万円 | 2万円 | 1万円 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 10万円 | 10万円 | 4万円 | 2万円 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 | 6万円 | |||
3億円を超え5億円以下 | 10万円 | 10万円 | |||
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 20万円 | 15万円 | 15万円 | |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 40万円 | 20万円 | 20万円 | |
50億円超 | 60万円 | 60万円 | |||
契約金額の記載なし | 200円 | 200円 | 非課税 | ― | 200円 |
(※1)契約金額10万円の場合は200円
(※2)契約金額5万円の場合は200円
なお、第1号文書のうち「不動産の譲渡に関する契約書」や、第2号文書のうち「建設工事の請負に関する契約書」で、2018年3月31日までの間に作成されるものについては、軽減税率が適用され、上記とは異なる税額となります。
このように、文書の種類によって様々な注意点があるため、文書の税額についての詳細は国税庁HPで確認するようにしましょう。
以下に当てはまる文書は、契約金額に関わりなく印紙税額が一定となります。
上記の課税文書に対する税額は下表のとおりです。なお、契約金額の範囲によっては非課税となる場合もあるため、詳細は国税庁HPで確認するようにしてください。
印紙税額 | 200円 | 400円 | 4000円 | 4万円 |
文書の 種類 | 第8〜16号文書 | 第19号文書 (1年毎) | 第7号文書 | 第5、6号文書 |
第18号文書(1年毎) | 第20号文書(1年毎) |
印紙税は、原則として、税額分の「収入印紙」を課税文書に貼り付け、これに署名あるいは印章を用いて「消印」をすることで納付します。収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストア、法務局などで購入することができます。
消印は、収入印紙の再利用防止のために、収入印紙の彩紋と文書にかけて署名をしたり印章を押したりすることにより行うもので、作成者あるいは代理人のものでも可能です。
この他にも、以下の4つの特例納付方法があります。
課税文書の種類と契約金額が確定している場合、あらかじめ印紙税相当額を現金で支払うことで、課税文書に印紙を貼り付けることに代えて、税印を押すことを税務署長に請求することができます。
同じ様式の文書を毎月継続して作成する場合、あるいは特定の日に多量の文書を作成する場合に適用することができます。
税務署による承認を受けることで、課税文書に所定の税務署承認済の表示をするとともに、印紙税を月末にまとめて納入することが可能となります。ただし、課税文書を作成したという事実は記録しておかなければなりません。
課税文書を大量に作成する事務所等においては、「印紙税納付計器」を用いることで印紙税納付の手間を簡素化することができます。
管轄の税務署長より印紙税納付計器の設置承認を得た後、印紙税納付計器を購入・設置し、一定期間に必要な印紙税相当額を税務署に納付してその納付額分の納付印を押せるように機械をセットする、という手順を踏むことで利用が可能です。
普通預金通帳等に課せられる印紙税は、所轄税務署長の承認を受けると、その年度において税額の一括納付ができます。なお、承認を受けるためには早めの申請が必要となります。
課税文書が作成されるまでに所定の方法で印紙税を納付しなかった場合、文書の作成者は印紙税額の3倍に相当する過怠税が課されます。ただし、調査によって未納付が判明する前に自主的に税務署に申告した場合は、過怠税は印紙税額の1.1倍に軽減されるため、印紙税の不納付に気付いた際はすみやかに自主申告を行うようにしましょう。
一方、収入印紙を文書に貼り付けたにも関わらず、所定の方法によって消印をしなかった場合にも過怠税が発生します。この場合の過怠税額は、消印されていない収入印紙の額に相当する金額となります。
なお、不正行為により印紙税の納付を免れるなどをした場合には、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処せられ、または併科される場合があります。
印紙税は、書類の種類や契約金額に応じて税額が異なるなど煩雑である一方、所定の手続きや方法を怠った場合のペナルティが大きいため、注意が必要です。
契約書類を作成する際などは、印紙税のどの課税文書にあたるかを精査し、正しく印紙税を納付するようにしましょう。
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