元大手ウエディング会社 営業マーケティング部 執行役員 H・T
業績好調な裏で離職が激増
私は大手のウエディング会社で長年にわたって営業部門を統括してきました。この業界は土日産業。私の部門をはじめ、全部門が朝早くからお客さま対応に明け暮れていました。
ウエディング会社では土日に業務負荷が集中する傾向があり、体力的にキツイという一面もあります。業績が好調で、拠点やエリアの拡大を急速に進めていた2005年頃には、離職率が非常に高くなってしまいました。
それでも当時は業界の華やかなブランドイメージが強く、求人を出せばすぐに人が集まるような時代。そんな状況のもと、営業成績のいい人物を中心にして社員の育成と組織構築を行い、「売れる組織」を形成し続けることが当たり前だと思うようになっていました。
状況が大きく変わったのは、リーマンショックの後。幸いにも景気の波を大きく受けることはありませんでしたが、人事面では急激に苦戦するようになったのです。
どのエリアでも人が足りなくなり、スタッフの業務負担が増え続け、優秀だったスタッフがどんどん辞めていくように…。営業現場は一気に疲弊していきました。
営業になじめなかった人が営業体制を立て直した
そんな時、目の前を明るくするような戦略を展開してくれたのが総務のメンバーでした。「結婚・妊娠を理由に退職した元従業員を時短勤務で再雇用する」という当時なかった採用方法を展開してくれたのです。
総務のメンバーは、時短勤務スタッフがやりがいを持って力を発揮できるよう、新たな勤怠管理の手法や業務オペレーションを生み出し、導入してくれました。結果、極めて短期間で現場に活気が戻ったのです。
この時初めて、営業力の向上だけに注力していた自分が、ビジネスパーソンとしていかに未熟だったかを思い知らされました。そして、社内の全部門の「人財」を熟知している総務は、組織経営に直結する重要な役割や仕事を担う存在であるということも。
この施策のキーパーソン・Sさんはかつて営業部に在籍していましたが、営業職になじめず、総務人事に異動した人。そのSさんが営業体制を立て直したのです。
「入社してからずっと考えていた」
のちにSさんと話す機会があり、どのくらいの期間でプランニングしたのか聞いたところ、「入社してからずっと考えていた」とのこと。いずれ人手不足で現場が回らなくなる事態が来ることを予測していたというのです。
若かりし頃、「優秀という言葉は営業マンのためにある」と豪語していた私ですが、それは大きな間違いでした。社内の「人財」を知り尽くし、会社の動きを俯瞰(ふかん)できる総務のメンバーこそ、「優秀」という言葉に値するのだと今は考えています。
総務の仕事は、あまり目立つことがありません。でも見えないところで、やりがいとプライドを持ち、経営を支えてくれる頼もしい存在なのです。
ちなみに、Sさんは創立以来初の営業部以外からの年間最優秀社員に輝くことになります。退職した今でも、Sさんが総務にいてくれて、本当によかったと心から感謝しています。