勤務中のスマートフォンの利用や居眠り、ネットサーフィンなどは、作業効率の低下や情報漏えいの危険性、企業財産の私的利用などの理由から良しとされません。企業はそうした行為を行った従業員に対して、就業規則と職務専念義務に則って処分することが可能です。今回は、従業員の勤務中の行為が許されない理由と処分の方法、注意点について解説します。
勤務中に行うべきでない行為とは?
許されない行為
基本的に勤務中には行うことが許されない行為として、以下のようなものが挙げられます。
- スマートフォンの使用
- 居眠り
- 私用のメール
- ネットサーフィン
許されない理由
上に挙げた行為が許されないのは、以下のような理由からです。
- 職務専念義務への違反
公務員法や就業規則には、就業時間中は労務に専念しなくてはいけないといった内容の職務専念義務についての言及があるはずです。スマートフォンの使用や居眠り、私用のメール、ネットサーフィンなどを就業時間内に行うことで、本来の業務が滞り生産性が低下する可能性があるため、職務専念義務に反していると判断されやすいです。 - 企業財産の私的利用
会社のパソコンを利用したネットサーフィンや私用メールは、企業財産の私的利用という企業秩序違反行為であるため許されないという考え方もあります。 - セキュリティ上の危険性
スマートフォンには、カメラ機能や録音機能がついています。これらを利用する際に不用意に情報が漏洩してしまう危険性があります。また、会社のパソコンで私用のメールやネットサーフィンをしている間に、ウィルスに感染してしまう可能性もあります。こうした危険性を鑑みて、上記のような行為は認められないことがあります。 - システム上の危険性
例えば会社のパソコンでネットサーフィンをしていて、動画などをダウンロードしたとしましょう。動画などはデータ量が大きくなりやすいので、想定よりも大きな負荷がサーバーにかかり、システムトラブルを起こす危険性もあります。
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勤務中の禁止行為に対する処分について
懲戒処分の種類
前述のような勤務中の禁止行為を社員が行い、悪質性が認められる場合には、懲戒処分を下すことができます。懲戒処分とは、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して処罰を行うものです。具体的には以下のような種類があり、下に行くにつれて重い処分となっています。
- 戒告
口頭での反省を求めるものです。 - 譴責
書面での反省を求めるものです。 - 減給
賃金を一定額減額するものです。居眠りしていた時間分の賃金を払わないという場合はノーワークノーペイの原則に基づいているので、減給とは異なります。 - 出勤停止
一定期間従業員に就労を認めないというものです。出勤停止期間には賃金が支払われません。一般的には1週間から1か月の出勤停止が命じられることが多いようです。 - 降格
役職・職位・職能資格などを引き下げるものです。 - 解雇
従業員を解雇するものです。
懲戒処分のケーススタディ
それでは、どのような行為に対して、どのような処分を出すのが正しいのでしょうか。
例えば、勤務中のスマートフォンの使用によって、本来行うべき業務が滞ったという職務専念義務違反があったとします。この場合の問題の本質は、実損害の大きさではなく、勤務態度の悪さにあるでしょう。よって、戒告、譴責、減給などの軽い懲戒処分が行われるのが一般的です。
次に、ネットサーフィンをしている最中にウィルスに感染したことで、企業の機密情報を漏洩してしまったという職務専念義務違反および守秘義務違反があったとします。この場合は、漏洩した情報の量や質などによって責任の大きさも変わりますが、信用の低下や財産的損害など、企業に大きな損害をもたらしかねないという点で、出勤停止、降格、解雇のような重い懲戒処分が下されることがあります。
処分にあたっての注意点
従業員へのペナルティとして懲戒処分を下す際には、以下の点を満たしていなければ認められませんので注意しましょう。場合によっては、企業が損害賠償の支払いを求められるケースもあります。
- 従業員の禁止行為に対して、懲戒処分の重さが見合っていること
- 懲戒処分の規定が、問題発覚以前から作られていること
- 過去に懲戒処分とした事案を再度懲戒処分としていないこと
- 当該の従業員に説明機会を与えていること
- いやがらせ、退職に追い込むなど不当な動機がないこと
- 過去の事例と照らし合わせ、懲戒処分の重さが適切であること
また、居眠りで懲戒処分を行う場合には特に注意が必要です。それは、長時間労働による睡眠不足や体質管理不足などが、居眠りのそもそもの原因となっている可能性もあるからです。過剰労働を予防して従業員の体調を管理する責任は企業の側にあるため、このような場合に懲戒処分を行ったとしても、企業の落ち度が原因である以上は、何も根本的な解決となっていません。企業側が実態を客観的に把握する必要があります。
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まとめ
今回は、勤務中に許されない行為について説明してきました。これらの行為は見逃されがちなため、軽いものであるようにも思われますが、企業側に大きな実害をあたえる前に抑制することがポイントです。懲戒処分という選択肢もあるので、対処法を検討してみましょう。