シェアードサービスとは、独立の企業が別々に持っているチームや人材を共有することで、人材の有効利用を図る仕組みのことです。グループ企業間で利用されることが多く、総務、人事、経理などの部門を対象に行われることが多いです。今回はシェアードサービスのメリットと、導入のためのポイントを紹介します。
シェアードサービスは、人事や経理、情報システムなどの間接部門を複数の企業で共有する仕組みを指します。通常、同じグループの複数の企業の間接部門を統合し共有するという形で実施されますが、最近では違うグループの間でのシェアの事例も出てきており、その形は多様化しています。
シェアードサービスは、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社が経理業務で初めて導入したと言われています。その後アメリカの大企業が企業資源計画(ERP)を活用していくようになる過程で、シェアードサービスの活用が広がりました。日本では、バブル崩壊後の不況やITの発展に加えて、M&Aにより事業統合やグループ再編が進みました。その中で、グループ企業としてのリソースをうまく全体で活用しようとシェアードサービスの導入が各社で進みました。
シェアードサービスによる効率化により、以下のようなメリットがもたらされます。
日本では同じグループに所属する会社であっても人事や経理の業務フローやルールが違うことが多くあります。このようにシステムが標準化されていないと、同じグループであっても外部の他社と同様にお互いのルールを調整しながらコミュニュケーションを取らなければなりません。こうした状況では、少ない調整コストでグループ全体を同時に動かすことは難しくなってしまいます。
シェアードサービス導入の前提として、グループ内での業務プロセスを標準化することが求められます。よってシェアードサービスの導入は、グループ内での業務プロセスの違いを捉え直す契機となります。違いを再認識した上で標準化を実現させることは、グループの一体となった運用を根本から容易にするでしょう。標準化の推進はこれまで明文化されていなかったものを誰もがわかるようにマニュアル化することにも繋がるので、特別なスキルを持たない人材にも業務の遂行が可能になります。
企業ごとに人事や経理などの部門を設けている場合、グループ内で人員が重複しているという事態がしばしば起きています。シェアードサービスを導入すればこの重複部分を解消しコストを削減することができます。
これまで経理や人事のようなバックオフィスは、「バックオフィス」という呼称の通り本事業の後方支援というイメージが強く、プロフィットセンターとは見なされずにその作業の効率性やコストに着目されることがなかなかありませんでした。グループ会社でこのようなバックオフィスを統合して間接部門を1つの部門とすれば、この独立した部門はそれぞれのグループ企業にサービスを提供することになります。バックオフィスに携わる人々がグループ企業を「顧客」として見るようになることは、自部門のサービス向上やコスト削減に大きく貢献するでしょう。
各社の人事や経理・情報システムなどの間接部門の業務を1つの組織へ集約させれば、これまで各社にいた高度人材をグループ全体でシェアできます。したがって、どの企業の案件であってもグループ全体の問題として解決が目指されます。また、ノウハウの蓄積もグループ全体でシェアされるので、結果的にサービスレベルを向上させることができます。
シェアードサービスは原則として間接部門が対象となります。間接部門の中で何をシェアするのか、最初に範囲を正確に確定させることが重要です。業務内容の見直しやプロセスを明確にしやすい、もしくはその余地が大きくある分野の業務を対象にするといいでしょう。対象範囲を明確にしておくことで、シェアードサービス導入の効果も大きくなります。
先述の通り、業務の標準化はサービスレベルを向上させる可能性を持ちますが、場合によってはサービスレベルを低下させる恐れもあります。特に、グループの各社の間で制度や事情が大きく異なる場合は注意が必要です。標準化によって各社の個別のニーズに応えられなくなるかもしれないからです。
シェアードサービスの導入にはグループ全体のシステム変更だけではなく、大きな人事異動が伴います。その結果として望まない異動や雇用形態になる社員も出てくるかもしれません。そうした場合、彼らに今回の異動や改革について納得してもらうための方法を考えることが事前に必要になるでしょう。業務フローの効率化を達成できても、その業務フローに携わる人々のモチベーションが低下しては意味がありません。
また業務の標準化は、マニュアル化された単純業務も多く生み出します。そのような業務を担う人材にどう仕事にやりがいを感じてもらうのか、また彼らのキャリアパスを企業側としてどう決めていくかも事前に考慮しておく必要があるでしょう。
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シェアードサービスはグループ全体での大きな効率化を達成できる可能性を持つ一方で、その改革にはリスクも伴います。スムーズなシェアードサービス導入に向けて、ステークホルダーとの十分な議論が重要であると言えるでしょう。
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