マンネリ化を脱却! 当事者意識を高める防災訓練の実施方法について解説!

9月1日の防災の日に合わせ、多くの企業がこの時期に防災訓練を行います。訓練がマンネリ化してしまわないように、従業員に当事者意識を持たせられるような訓練シナリオを設定しましょう。今回は、防災訓練を実施する意義と、訓練に向けた準備、訓練シナリオの作成方法について解説していきます。

防災訓練の意義

自然災害やテロ攻撃など、どのような緊急事態においても適切な判断ができるよう、防災訓練は重要な意義を担っています。それは従業員が自ら身を守るためだけではなく、被害を最小限にとどめて事業を早期復旧できるようにするためでもあります。防災力を高めるために企業にできることとして、BCP(事業継続計画)の策定や見直しがまず考えらます。しかし、災害時のマニュアルやBCPを準備していても、その内容が従業員に周知されていなければ意味がありません。防災訓練は、従業員に改めて非常時の対応の理解を促せる機会でもあります。あらゆる企業において、従業員そして企業自体を守るために、防災訓練は必要不可欠です。

 

これまでの問題点

現在、防災訓練は多くの企業で行われています。しかし、毎年同じような内容のものを形式的に実施しているだけの企業も少なくないはずです。マンネリ化した防災訓練では、思いもよらない緊急事態が発生した場合に、適切な対応を即座に取ることができません。例えば、防災訓練を行う時間帯です。従業員が揃っている時間帯に行うのが一般的ですが、就業時間外の通勤・帰宅時間や、夜間に災害が発生する場合も十分に考えられます。また、安否確認システムを連絡手段として導入している企業もありますが、いざ利用するという段になった時に、しっかりと役立てる環境になっているでしょうか。システムに登録しただけで、実際の操作方法が不明であったり、アドレスの変更を登録しないままでメールが受信できなかったりなどということがあれば、意味がありません。
このように、防災訓練におけるマンネリ化や参加者と時間帯の固定化などによって、緊張感のない訓練になってしまいがちです。従業員一人ひとりの当事者意識を引き出し、緊急時の対応力を身につけられるような防災訓練が求められます。

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防災訓練に向けて確認すべきこと

BCPや防災マニュアルに基づいているか

防災訓練は、ただ身を守るために行うものではありません。防災マニュアルに沿った適切な判断や、早期に業務を復旧するためのBCPの確認が重要です。そして防災訓練後には、適宜BCPや防災マニュアルの見直しや修正も行います。

周辺地域や消防署との連携はできているか

防災訓練は社内で行われるのが一般的ですが、実際の災害時には周辺地域との連携が求められます。専門知識のある消防署と合同で防災訓練を行ったり、講習を受けたりすることができる自治体もあります。また、災害時には帰宅困難者に一時避難をするスペースを提供する企業もあります。日頃から、企業として周辺地域との関係を良好にしておくことが重要です。

訓練の目標は明確か

防災訓練において最も重要と言えるのが、訓練の目標を明確にすることです。どんな非常時にも対応できる力を身につけるために、準備段階から、訓練のテーマ(目的)、災害の種類と規模、被害状況を設定しておきます。そしてこれらの計画を実施するために必要なものが、訓練シナリオの作成です。

 

訓練シナリオの役割

まず、防災訓練の準備段階で、訓練のテーマ(目的)を設定します。例えば、「マニュアルやBCPを検証する」「災害時の避難の仕方を学ばせる」などが考えられます。訓練の形式や参加者、タイムスケジュールなどもこの段階で決めておきます。そして、災害の種類と規模、被害状況を、「勤務時間中に震度5の地震が発生。社内でも大きな揺れがあり、作業が困難なほどものが散乱している」などというように設定します。訓練シナリオには、このような設定に基づいて、訓練の参加者が取るべき行動や、起こりうる二次災害への対応を盛り込みます。館内放送の実際の内容や、各部署の従業員の動き、防災担当者の判断等々も含まれます。そして、社内の被害状況や避難経路の確保を想定し、記載します。緊急時に予測される出来事とそれへの対応策、担当者、時間配分などを訓練シナリオに詳細に書き込むことで、効果的な訓練の実施が可能となります。

訓練シナリオの作成方法

訓練シナリオの作成は、想定される被害状況を設定することから始めます。災害発生の日時、場所、規模、社内の被害状況、公共交通機関やライフラインなど社外の状況などです。その後、次の3点を記載します。

  • 発生している事象の状況
  • それに伴い想定される被害状況
  • 訓練参加者に求める対応

これらから、防災訓練の全体的な枠組みを下書きし、細部の内容を具体的に肉付けしていくという方法が効率的です。「参加者に何を学んでもらうか」という目的意識を常に持ち、そこから逸脱して参加者が混乱することのないよう訓練シナリオを作成することが大切です。
また、訓練内容が現実的になるよう、訓練シナリオにもリアリティーを持たせます。過去に起きた企業の被災経験や、災害の事例を取り入れる工夫もしましょう。訓練シナリオの内容は訓練ごとに見直す必要があります。しかし、防災訓練がただ訓練シナリオの再現に終始してしまう可能性もあります。それを避けるために、参加者にはあえて訓練シナリオを非公開にして訓練を行う、クローズド型訓練という方法もあります。企業が達成したい目的を考えて訓練方法を選ぶことが望ましいでしょう。

 

「サイバー演習」の時代

防災訓練は自然災害に備えるものだけではありません。近年では、ますます高度化・巧妙化するサイバー攻撃に備える体制作りも企業には求められます。サイバー攻撃の発生を想定して行う防災訓練が、「サイバー演習」です。サイバー演習の実施は政府も奨励しており、インシデント発生時の対応方法の習得や対応能力の向上が重要視されています。

サイバー演習実施方法

  • 演習計画
    演習の目的や方式、訓練シナリオの構想を検討し、計画を立てます。目的に沿った演習方式を選び、担当者の希望や、世の中のサイバー攻撃被害の動向などを踏まえて演習のテーマを決定します。
  • 演習準備
    演習計画ができたら、演習の訓練シナリオや使用する資料を作成します。また、参加者には事前に「サイバー演習とは何か」「どのような演習を望んでいるか」といった説明会を実施することも大切です。参加者に目的意識を持ってもらうとより効果的な演習になります。
  • 演習実施
    演習の目的を達成できるよう、参加者がインシデント発生時における対応を考えながら議論し演習に取り組みます。演習後には課題点を抽出し、今後に反映することが重要です。

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まとめ

今回は、防災訓練を実施する意義と、訓練における準備やシナリオの作成方法について紹介しました。災害発生の緊急時、企業は従業員の身を守ることに加え、被害を最小限に抑え、事業を早期復旧することが求められます。また、自然災害だけでなく、サイバー攻撃のようなテロに備えることも防災に含まれます。防災訓練のマンネリ化を回避し、自社が必要とする防災のあり方を考えながら、9月1日の防災の日を迎えましょう。

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