リカレント教育で社員の学び直しを推進し、企業の成長につなげましょう!

文部科学省は生涯にわたって教育と就労を交互に行うリカレント教育を推奨しています。日本におけるリカレント教育は欧米での考え方よりも広義で、キャリアアップのために働きながら学ぶことや、学校以外で学ぶことなども含まれています。リカレント教育を企業が推進することで、社員が学び直しによりスキルや専門性をアップデートでき、結果的に企業の成長に貢献することにつながります。今回は、リカレント教育の意味や欧米との違い、リカレント教育が注目される背景、メリット、補助金制度、導入事例について解説していきます。

日本におけるリカレント教育

リカレント教育が注目される背景

現在日本では、高度経済成長期の時代から続く終身雇用制度が崩れつつあり、雇用の流動化が進んでいます。特に10~20代では、「現在または将来転職を希望する人」が5割を超えるという統計もあるほどです。
終身雇用制度のもとでは一つの企業で仕事に必要な知識を自然と身に付けることができましたが、転職が一般的になると、短い雇用期間のなかで必要な知識を習得するのは困難です。また、急速な技術革新やそれに伴う市場の変化により、常に新しい知識やスキルが求められつつあります。こういった背景からリカレント教育が注目されているのです。
さらに、高齢化が進むなか、政府は「人生100年時代の到来」として年齢に関わらず人生を再設計できる社会を目指しています。学びを終えた社会人がさらに活躍するための「学び直し」としても、リカレント教育が注目されています。

リカレント教育のメリット

企業にとってのメリットの一つとして、社員が必要に応じて業務に関する知識や技術を学ぶことで業務効率が向上することが挙げられます。学びと就労を繰り返すことで、社員はその都度知識や技術をアップデートでき、技術の変革に遅れをとらず対応できるのです。またリカレント教育では、近年著しく進化しているAIやICT、IoTなどのデジタルツールについて、常にその時点で最新の技術を学ぶことができます。そのため、企業の経営環境やビジネスモデルの変化に対応できる社員が育ちます。
個人にとってのメリットは、まず、学び直しを行うことで企業への貢献度が上がり年収増加が期待できることです。厚生労働省の「人生100年時代の人材と働き方」では、リカレント教育による自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収の差額について分析しており、2年後では約10万円、3年後では約16万円の差があったとしています。また、非就業者の就業確率も約10~14%ポイント程度上昇し、定型的な仕事から非定型で専門性の高い仕事に就ける確率も約2~4%ポイント増加すると分析されています。

欧米との違い

もともとリカレント教育は、就職してからも労働と教育を交互に行うといった概念で、1970年に経済協力開発機構(OECD)が公式に採用し、1973年にOECDの報告書によって国際的に広く認知されました。これによりリカレント教育の重要性を認識した欧米諸国では、国をあげた取り組みが早くから行われてきました。「教育訓練のために年単位で長期の休暇をとることができ、仕事復帰の権利もある」といった取り組みが一例です。「フルタイムの就業とフルタイムの就学を繰り返す」という本来の意味に近い方法だといえるでしょう。
一方、日本では長期雇用の慣習がまだ残っており、キャリアを一度中断してでも学び直しをするという考え方が根付いていません。また、リカレント教育に対する企業の理解や評価もまだ高いとはいえないのが現状です。そのため、日本における「リカレント教育」は欧米よりも広義で捉えられており、「働きながら学ぶ」、「人生を豊かにするために学ぶ」、「学校以外で学ぶ」といった場合なども含まれます。

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リカレント教育に対する政策

環境整備

文部科学省の調査では、社会人が学び直しを行う際の問題点として、「仕事が多忙で学び直しの余裕がない」ことと「費用がかかりすぎる」ことの2点を挙げています。また企業側からは、「仕事と学び直しの両立によって仕事に支障が出てしまう」、「教育内容が実践的ではなく現在の業務に生かせない」といった声が挙がっています。
こういった背景から、文部科学省は「社会人向けプログラムの不足」や「学び直しを支える人材の不足」、「大学等における体制の未整備」、「企業の理解や評価が不十分」といった課題に向けて環境整備に取り組んでいます。具体的には、地域の産官学が連携して実践的なプログラムを開発し人材養成に繋げる「出口一体型地方創生人材システム構築事業」や、大学等のリカレント教育の運営状況や企業のニーズを調査し、持続して運営できるモデルを構築する「大学等におけるリカレント講座の持続可能な運営モデルの構築」などの施策があります。また、受講期間を短くするために履修証明に必要な総授業時間を60時間に短縮し、土日祝日や夜間の授業の開講、通信教育やオンライン講座の拡充などを教育機関に求めていく方針です。

補助金制度

リカレント教育の重要な問題点である「費用」については、公的な補助金・助成金制度があります。例えば、社員がリカレント教育を受けられるよう企業が有休教育訓練休暇制度を設け、実際に社員が利用した場合は、厚生労働省の「人材開発支援助成金 教育訓練休暇付与コース」が利用できます。この場合の助成金額は、付与した休暇が120日未満かそれ以上かによって異なります。
また、社員側にも「専門実践教育訓練給付金」や「教育訓練給付金」などの制度があります。これらの制度は、一定の受給条件を満たす方が厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受けた場合に、その費用の一部を給付金として受け取れるものです。

 

企業の導入事例

インターネット検索サイトで有名な「Yahoo!JAPAN」を運営するヤフーでは、「社員が安全に安心して才能と情熱を解き放ち、世の中に貢献ができる会社になる」というコアバリューをもとに、勤続3年以上の社員を対象に最長2年間の勉学休職制度を導入しています。社員のキャリアアップの施策の一つとして、業務を一度離れ専門的知識や語学力を集中的に習得できる機会と位置づけているのです。またキャリアだけではなく人としての成長や個人の充実を図ることで、企業と社員は対等なパートナーであるという意識を持って働けることを目標としています。
実際に利用した社員からは、「個人としての自分の価値を考えるようになった」、「自分がどんなことで社会貢献をしたいのかが明確になった」などの声が挙がっています。

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まとめ

企業にとって、社員が就労と学びを繰り返すことで知識や技術が向上し、かつ最新にアップデートされるという点は大きなメリットです。また社員にとっても、リカレント教育を受けることによりキャリアアップだけではなく人生の充実に繋がり、その成長が企業に貢献するという好循環が生まれています。働き方改革が求められる今、リカレント教育を推進し社員個人の充実を図ることは、企業の成長への近道であるといえるでしょう。

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