パーパス経営とは、自社の存在意義を明確にし、その存在意義に従って会社を経営することを指します。近年SDGsによって、サステイナブル経営に注目が集まっており、利益だけでなく環境や社会にも目を向け、長期的な視点で持続可能な事業を行うことが重要視されています。サステイナブル経営を行うためにも、パーパス経営によって自社の存在意義を明確にし、事業の方針を再検討する必要があります。パーパス経営を行うことで、従業員は自分の業務が社会貢献につながっていると感じやすくなり、従業員のエンゲージメントが向上します。
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パーパス経営とは企業の存在意義を明確にして、その意義の実現で社会に貢献することを経営の軸とする考え方です。従来の企業の経営は株主への利益最大化を目的とするものが主流でした。しかし、近年ではSDGsなどの社会課題の解決や従業員のエンゲージメント向上、多様なステークホルダーへの貢献などが求められるようになっています。パーパス経営はこうした時代のニーズに対応するために注目されている経営モデルです。
企業理念とは企業の使命・思想・存在意義・在り方・行動規範となる文言を、明文化したものです。企業理念には企業の存在理由や経営を行う目的、どこに向かって企業活動を行っているのかなどが整理されます。2つの言葉には共通点もありますが、パーパス経営はより自社の社会的意義を追求する考え方です。企業が主体となる企業理念とは少しベクトルが異なるので正しく使い分けましょう。
MVVとはMission(ミッション)・Vision(ビジョン)・Value(バリュー)の頭文字を取った略語で、日本語では使命・理念・価値観と訳されます。MVVは企業の存在定義や行動の理由、あるべき行動の姿などを明確にするものであり、経営の羅針盤として重要な役割を果たします。パーパス経営とMVVは近い概念ではありますが、パーパス経営は社会を主体とする考え方、MVVは企業を主体とする考え方である点が異なるので注意しましょう。
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SDGsへの関心の高まりによって、パーパス経営も注目されるようになりました。SDGsとはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、国連サミットで採択された国際的な目標です。この目標は経済・社会・環境の問題解決に関連する17のゴールと169のターゲットから構成されており、2030年までに達成することを目指しています。このSDGsで掲げた目標を達成するために多くの企業で社会課題の解決に貢献しようという動きが活発になっており、サステイナブルというキーワードとともにパーパス経営にも注目が集まるようになりました。
VUCA時代が到来していることも、パーパス経営の必要性が高まっている要因の一つといえます。そもそも、VUCAとはVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、状況が目まぐるしく変化して予測が困難であることを意味する言葉です。VUCA時代では急速な技術の進歩や競争の激化などによって、既存のビジネスモデルが通用しなくなる場面も増えました。そうした際にパーパス経営によって企業の存在意義や方向性を定めて、自社を変革しようとする動きが盛んになっています。
ミレニアル世代やZ世代が台頭してきていることも、パーパス経営が注目されるようになった背景として挙げられます。ミレニアル世代とは一般的に1981年から1996年の間に生まれた世代、Z世代とは1997年以降に生まれた世代を指す言葉です。どちらも現代社会の若年層を代表する世代であり、ほかの年代の方とは異なる価値観や意識を持っていることが調査で分かっています。具体的にはインターネットで日常的に多様な情報に触れている影響もあり、人・地域・社会に配慮した消費行動を行う傾向が強いです。そのためパーパス経営を行なっている企業であるほど、ミレニアル世代やZ世代からも支持を得やすくなっています。
まず、従業員のエンゲージメントが向上することが、パーパス経営のメリットの1つです。エンゲージメントとは契約・約束・誓約などを意味する言葉で、ビジネスでは従業員の企業に対する愛着や思い入れを表します。パーパス経営を実践できれば仕事に意義を見出せるようになるので、従業員は自分の業務内容が社会に貢献していると実感できるようになるはずです。さらに、同じ目標に向かって仲間と協力して働けるので、組織への帰属意識を高められます。結果として従業員のエンゲージメントを高めることができるのです。
次に、意思決定のスピードが早くなることも、パーパス経営によって期待できる効果です。パーパス経営で自社の方針を明確にできれば、経営層だけでなく従業員にとっても意思決定をする際の指針にもなります。パーパス経営における考え方が企業全体で浸透している状態にできれば、普段の仕事でも意思決定のスピードをアップさせることが可能です。昨今は先行きが不確定なVUCA時代であるため、さまざまな判断を早急に下さなければならない場面も増えてきました。そこでパーパス経営を実践できていれば変化の激しい環境でも、機を逃さずに対応できるようになるのです。
さらに、パーパス経営を行えれば、ステークホルダーからの信頼も高められます。パーパス経営は単に利益を追求するだけでなく、環境や経済など社会の課題への向き合い方も提示できる企業の考え方です。社会に対して企業として貢献していくための経営スタイルであるため、顧客や投資家などのステークホルダーからも信頼を獲得できます。また、単に目標通りに進められました。を掲げるだけでなく実現に向けた具体的な取り組みを行えれば、ステークホルダーとの関係をさらに強化できるでしょう。
パーパス経営は企業の成長と社会貢献の両立を目指す、これからの新しい経営のあり方として広がってきています。パーパス経営の実践は従業員の帰属意識を高められるだけでなく、意思決定のスピードアップなどによる組織の活性化にも有効です。パーパス経営を取り入れて変化の激しい時代で成長を続けられる企業になれるように、具体的な取り組みをスタートさせてみてはいかがでしょうか。
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