社内規程とは、会社内でのあらゆる規則や習わしを取りまとめた独自ルールのことを指します。ルールを事細かに取り決めることで、責任の範囲が明確化され、会社の内部統制につながります。今回は、社内規程の意味や就業規則との相違点、社内規程で決めるべきルール、作成のポイントについて解説していきます。
社内規程とは
概要
社内規程とは、会社の裁量で取決める規則の全般を指します。会社が独自に定めることができ、周知すれば雇用する社員との合意を形成する必要は必ずしもありません。組織体制の構築、業務工程や社員間のやり取り、社内秩序の維持等を円滑に進めるために作成され、これらに従わなかった場合のペナルティについても、法的規制に触れない範囲で会社が設定できます。実際にどのような規則を定めるかは、業務形態や事業目的が違うため会社毎に異なります。
作成の必要性
会社が小さいうちは、管理者や経営者の目が社内の隅々に届きますが、事業が発展して社員が増えると、伝達が滞ったり、取引が増加して業務が複雑になったりといったトラブルの種は避けられません。徐々に管理者や経営者自身では目配りができなくなるので、一定の取決めを行う必要が生じます。基礎となる基準や手順を明確化していくと、社内規程が形成されることになります。
就業規則との違い
社内規程も就業規則も会社のルールであり、どちらも業務に関係することも多く重要なため混同されがちですが、両者の違いは、正確には以下のように説明できます。
就業規則とは
就業規則は、会社と社員の間の取決めとして、労働条件についての契約等を含みます。常時10人以上の社員を雇用する会社は就業規則を作成し、労働基準監督署への届出と社員への周知を行うことが労働基準法によって義務付けられています。就業規則の内容には、労働時間や賃金などの必ず記載しなければならない事項と、退職金や賞与の規定など、会社の裁量で盛り込むことができる事項があります。
参考元:
厚生労働省.「モデル就業規則について」
社内規程と就業規則の違い
社内規程は会社の取決め全般を包含するので、経営や会計の工程から、権限の所在や意思決定プロセス、引継ぎ等まで、あらゆる事柄に関するルールをカバーできるのに対し、就業規則は一般的には就業に関するルールに限られます。そのため、広い意味では就業規則を社内規程の一部と捉えることもできますが、就業規則の法的地位の特殊性から、他の規程とは区別されることが多いようです。また、社内規程は会社と社員の間に合意がなくとも機能しますが、就業規則は契約の形をとるので、周知や合意形成といった義務の遂行が会社側に求められます。
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社内規程で決めるべきルール
重要性の高い規程
社内規程には様々な種類と分野があるため、項目ごとに規程書類を作ることになります。以下では、代表的な項目を挙げていきます。
企業理念 経営理念 | |
社訓 | |
取締役会規程 経営委員会規程 | 取締役会、経営委員会についての規程です。開催日、会場、招集方法、議長選出方法、決議方法などを決めます。 |
勘定科目処理規程 | |
賃金規程 | 賃金や賞与の内訳、計算期間と計算方法、支払方法、支払日、各種手当などを決めます。 |
退職金給付規程 | 支払いの条件、期日、計算方法、支払方法などを決めます。 |
組織・役職管理規程 | |
人事考査規程 | |
賞罰規程 | |
出張旅費規程 | |
接待交際費規程 | |
裁量労働勤務規程 | |
育児休業規程 | 対象になる条件、申請方法、休業期間などを決めます。 |
内部情報管理規程 | |
個人情報管理規程 | |
ハラスメント防止規定 | 対象になる行為、対処方法、対策方法などを決めます。近年ではセクハラのみならず、アルハラ、パワハラ、モラハラ等も取り沙汰されるようになり、共通規程が作成されることが多くなりました。 |
ソーシャルメディア利用規定 | ツイッターやフェイスブック等のSNSの利用に関するルール、問題を起こした際の罰則や損害賠償などを決めます。 SNSにおける炎上が会社のイメージ低下を招くという事案の多発を受けて、匿名性や拡散性に付随するリスクの管理の観点から、こうした規程も定められるようになりました。 |
修正や改訂の必要性
上掲の各規程は重要で一般的なものですが、これらは時代の傾向や価値観の変遷に合わせて内容や項目をアップデートしていく必要があります。各種の規定は一度作成すれば安心というわけではなく、その後も随時監査や見直しを行っていくことが大切です。
作成のポイント
いざ社内規程を作って整備していこうと思っても、範囲が広すぎて面倒に感じるかもしれません。とは言え、本腰を入れて着実に行えば遂行は難くはありません。
作成の流れ
社内規程は、他社の前例を参考にしたりインターネット上でひな形を探したりすることで作成することもできますが、始めから手掛けようとするのであれば、基本的には以下のようなフローを辿ります。
注意すべき点
- 運営に必要な規程が作成されていること
とりわけ前掲の重要性の高い規程などは、細かい部分まで詰めておきます。 - 法律に抵触しないこと
特に注意が必要な法律に、会社法、商法、労働基準法、独占禁止法、製造物責任法、個人情報保護法などあります。これらに違反する規程は効力を持たないので、専門家に尋ねるなどして細心の注意を払いましょう。 - 各規程の整合性が取れていること
各規程同士に食い違いが生じていないこと、また規程を支えるマニュアル等とも矛盾がないことを確認します。 - 社員に周知できる仕組みが整っていること
- 修正や改訂を定期的に行えること
前述のように、各規程は随時変更していく必要がありますが、その際の変更方法も予め決定しておいた方が安全でしょう。また、直接的に規程を変更しない場合でも、細かい補足や要綱をもって対応することもできます。 - 社内規程の管理ができること
規程を体系化しておき、他の規程や補足事項、要綱等との関係性および補完性を明確にしておくことが重要です。作成したものが煩雑すぎて混乱をきたすといったことのないよう、社内規程の管理をどの部署が担い、どのような工程でもって扱うのかなどのことまで、常に明確にしておきます。
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まとめ
会社が発展して大きくなることはとても喜ばしいですが、規模拡大の弊害も必ず発生します。せっかく成長し始めてこれからと言う時に余計なトラブルが起こる可能性は最小限に抑えておきたいものです。早々と社内規程を整備して、業務を効率的に回せる環境を整えておきましょう。