従業員エンゲージメントは、従業員が企業の理念やブランド、同僚に対して抱いている愛着や信頼の度合いを表します。似たような意味合いの言葉として従業員満足度がありますが、従業員エンゲージメントは「どれほど企業に貢献したいか」を表すため、より職務成果に直結しやすい指標です。従業員エンゲージメントを高めることで離職率の低下や業績向上につながるため、積極的に取り組みましょう。今回は、従業員エンゲージメントの意味と従業員満足度との違い、従業員エンゲージメントを高めるメリットやその具体的な施策について解説していきます。
目次
従業員エンゲージメントとは、従業員が「仕事から活力を得ている」、「仕事に誇りとやりがいを感じている」、「仕事に熱心に取り組んでいる」の三つが揃った状態を示す概念です。従業員エンゲージメントが高い従業員は、自分の目標が企業のミッションと合致しているため、仕事へ情熱と使命感を持って取り組み、会社への自発的な貢献意欲が高いとされています。
従業員エンゲージメントの向上は企業の業績向上に影響すると考えられています。しかし、従業員エンゲージメントを経営の重点課題に掲げて具体的な取り組みを行っている企業は少なく、特に日本企業の従業員エンゲージメントは海外と比較して極めて低いのが現状です。従業員エンゲージメントの向上は組織に多くの変化をもたらすため、簡単なことではありません。しかし多くの場合、その投資をはるかに上回る利点があります。従業員エンゲージメントの向上が経営に与える影響について、理解を深める必要があるでしょう。
従業員満足度とは、従業員が組織やマネジメント、仕事内容、職場環境、給与や休日、福利厚生などの待遇面などに対する満足度を示す指標のことです。従業員満足度は企業の機能や要素に対して「受け身」であるのに対して、従業員エンゲージメントは「自発的」である点が大きな違いといえるでしょう。従業員エンゲージメントが高い組織の場合、待遇面での満足度が仮に高くなかったとしても、企業への愛着心や共感の強さなど感情的なつながりがあるため、従業員は高い意欲と満足感を持って主体的に働く傾向があります。
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従業員エンゲージメントを高めると、従業員は自分たちが提供している製品・サービスに誇りを持ち、常にベストを尽くすように心掛けるようになります。このような感情は、仕事への集中、丁寧さ、ミスの減少につながり、生産性や効率性の向上だけでなく、顧客満足度にも良い影響を与えるといわれています。
厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」によると、「働きがい」の向上により、定着率や離職率が改善される可能性があると報告されています。以下の表は、「働きがい」と定着率の関係を示すものです。
働きがいと新入社員の定着率(入社3年後) | |||||
新入社員の定着率が上昇した企業の割合 (低下した企業の割合に対して) | 0.25 | 2.83 | 5.23 | 5.82 | 8.08 |
働きがい(ワークエンゲージメント・スコア) | 2以下 | 3 | 4 | 5 | 6 |
働きがいと従業員の離職率 | |||||
離職率が低下した企業の割合 (上昇した企業の割合に対して) | 4.89 | 3.98 | 5.28 | 7.29 | 8.54 |
働きがい(ワークエンゲージメント・スコア) | 2以下 | 3 | 4 | 5 | 6 |
上記では、「働きがい」を表すワークエンゲージメント・スコアが高いほど定着率が上昇し、離職率が低下しています。「働きがい」、すなわち自発的な貢献意欲の度合いである従業員エンゲージメントを高めることによって、離職率の低下が期待できることが読み取れるでしょう。
従業員エンゲージメントの向上・改善を検討する前に、改善の必要な領域を見極めましょう。まず従業員サーベイ(調査)を行い、自社にとっての従業員エンゲージメントの基準を定義します。より有効な従業員サーベイを行うために、従業員サーベイについて専門的知識とノウハウを有する企業に依頼すると良いでしょう。
いくつかの質問に基づいて従業員が企業や仕事仲間に対してどのように感じているかを把握したら、組織内で改善が必要な領域を特定します。なお、従業員エンゲージメントを徹底的に向上させるためには、一つの領域だけではなく組織内の複数領域について調査をすることが重要です。
従業員エンゲージメントの向上には、上司による適切なリーダーシップが重要だといわれています。そのために上司が部下とどのようにコミュニケーションを取っているか確認しましょう。具体的には、仕事の与え方や情報の伝え方などが適切かどうか、上司と部下双方からの意見を得たうえで判断します。なお、部下が困っている状況を把握しながらも何も対策を講じなかったり、部下からの意見を聞きっぱなしにしたりすることは、従業員エンゲージメントの低下につながる可能性があります。不満や要望を受けたときは対策を講じたうえで結果を報告する等のフィードバックを行い、コミュニケーションを図るようにすると良いでしょう。
また、企業の意思決定や組織運営の方針、人事評価の在り方など、経営の根幹部分についても従業員に示すことが重要です。それにより従業員は自分が何を求められ、どうすれば貢献できるかを知ることができるでしょう。
組織への適合感を高める重要要素である職場環境を快適にすることは、従業員エンゲージメントを向上する有効な施策の一つです。従業員の燃え尽き症候群や体調を崩すなどのリスクを防ぐためにも、ワークライフバランスを改善しましょう。また、必要なツールやテクノロジー、利便性がすべて整った職場環境であれば、従業員が生産的で効率的に仕事をできるようになります。
職場環境の改善を図るためには、従業員の要望に適宜耳を傾けることが重要です。すべてに応える必要はありませんが、要望に対するフィードバックは必ず行いましょう。
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今回は従業員エンゲージメントの概要や従業員エンゲージメント向上によって得られるメリット、具体的な施策についてご紹介しました。従業員エンゲージメントを高めるということは、いきいきと活力のある職場を作り上げるということだといえます。仕事への活力や熱意は生産性や仕事の質の向上、離職率の低下等につながります。自社の経営活動に改善の余地が見出される場合は、この従業員エンゲージメントという概念に着目し、組織環境を見直してみてはいかがでしょうか。
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