マトリクス組織とは?メリットとデメリットについて徹底解説

マトリクス組織とは、「職能」「事業」「エリア」「職種」などの業務遂行要素から、2つの組織形態をかけ合わせ、柔軟なオペレーションと複数の目標達成を実現するための組織形態です。例えば、「職能」と「事業」を組み合わせたマトリクス組織の場合、従業員は自身の職能別の組織に所属するとともに、特定の事業やプロジェクトにも関与するため、2つの異なる所属を持つことになります。マトリクス組織では、部署の垣根を越えた関係が生まれるため、他部署との業務を調整しやすくなり、業務の効率化につながります。一方、複数のマネージャーが存在するマトリクス組織では、パワーバランスの維持が難しいといったデメリットもあります。

   

マトリクス組織が広がっている

マトリクス組織とは

マトリクス組織とは、異なる2つの業務遂行要素を、縦と横に網目のように組み合わせた組織形態です。従来の組織構造は上から下への垂直方向だけで構成されていましたが、マトリクス組織は水平方向の要素を取り入れ、格子状の構造を取る特徴があります。その構造から部署・部門間の連携が円滑に進み、業務の最適化を図りやすい反面、垂直方向と水平方向の2つの指揮命令系統が混在するため、組織が複雑になりやすいのは代表的な欠点です。組織機能を効果的に維持するには、縦横2つの軸からなる指揮命令系統の調和が欠かせません。

プロジェクト型組織との違い

プロジェクト型組織とは、プロジェクトごとにさまざまな部署・部門からメンバーを集め、一時的にチームを形成する組織形態です。さまざまな経験や知識を持ったメンバーが協力して業務を遂行するため、効果的にプロジェクトを推進できます。また、マネージャーの権限が比較的大きいため、責任の所在が明確なのも特徴です。プロジェクト型組織はプロジェクトの終了とともに解散する一方、複数の組織に所属するマトリクス組織は、終了後もそれぞれの組織で活動が続きます。プロジェクトごとに新しいチームを形成するため、新たな知識や経験を得られる反面、長期的なノウハウの蓄積が難しいのは代表的な欠点です。一方、マトリクス組織は継続的な組織であり、ノウハウを蓄積しやすいというメリットがあります。

マトリクス組織が誕生した経緯

そもそも、マトリクス組織はアメリカ航空宇宙局、通称NASAのアポロ計画が起源と言われています。アポロ計画では、プロジェクトごとにマネージャーが任命されました。従来のトップダウン型組織の場合は一般的に、マネージャーは自分のチームのマネジメントだけを担います。しかし、アポロ計画では水平方向にも複数のプロジェクトチームが形成されました。マネージャーは、専門知識や経験を活かして自分のチームを導くだけでなく、他チーム間の調整も担います。NASAはマトリクス型組織の有用性に着目し、航空宇宙産業の他企業にも導入を勧めました。現在では、複雑な業務形態や指揮命令系統に対応する組織形態として、一般的な企業にも導入が進んでいます。

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マトリクス組織のメリット

業務の効率化につながる

従来の縦割り組織では、異なる部署・部門間の調整や連携に時間がかかるケースも少なくありません。しかし、水平方向にもつながりのあるマトリクス組織は、複数の部署・部門のメンバーが協力して業務を遂行するため、部署・部門の垣根を超えたコミュニケーションや連携も比較的簡単です。このような特徴により、異なる部署・部門間の調整・連携も、スムーズに行える環境を構築できます。また、広範囲の業務を担うことで業務全体の流れを理解した結果、組織内に業務をとおした知識やノウハウが蓄積し、業務の効率化につながるのもメリットです。

トップマネジメントの負担が軽減される

マトリクス組織では一般的に、管理者やマネージャーにある程度の裁量が与えられます。この特徴により、経営層やトップ層のマネジメント負担を軽減することが可能です。また、トップマネジメントのストレスを軽減するだけでなく、メンバーに近い立場の管理者やマネージャーに裁量を与えることで、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、組織の連携も強化されます。チームのマネジメントを現場に一任することで、経営層は戦略的に重要な意思決定に注力することが可能です。結果として、組織の柔軟性が高まって変化に適応しやすくなり、変動の激しい市場環境において力を発揮しやすくなります。

新規事業に取り組みやすくなる

新しい事業を始める場合、従来の組織では社内外からメンバーを集めてチームを形成する必要がありました。しかし、マトリクス組織では、既存の部署・部門からプロジェクトに必要な専門知識や経験を有した人材を選任することが可能です。この特徴により、新しいチームを形成するハードルが下がり、新規事業に取り組みやすい環境を構築できます。新しいアイディアやビジネスチャンスにも素早く対応できるため、組織の機動力が大幅に向上するのもメリットです。また、人事異動のコストを抑えられるだけでなく、社内の優秀な人材を集めやすいため、リソースを効果的に活用できます。

   

マトリクス組織のデメリット

パワーバランスの維持が難しい

網目状のマトリクス組織は複数の指揮命令系統が存在するため、パワーバランスを維持しにくいのもデメリットです。マネージャーが複数存在すると権限の調整が難しく、指揮命令や情報共有に混乱が生じるケースも少なくありません。マネージャーによって指示が異なると、メンバーはどちらの指示に従うべきか判断が難しく、業務の優先順位が曖昧になってしまう可能性もあります。意見の対立や相違が業務に影響を及ぼす可能性もあるため、それぞれの専門領域に精通した人材をマネージャーとして登用することも重要です。

業務報告が多重化してしまう

複数の部署・部門の所属するマトリクス組織は、業務報告が多重化しメンバーの業務負荷が高くなるのもデメリットです。指示命令系統が複数あるということは、業務報告も個々のチームに対して行わなければなりません。そもそも、マトリクス組織は組織が複雑化しやすく、意思決定に統一性がなければ業務がどんどん複雑化してしまいます。マネージャー間の意思疎通が十分ではないとメンバーは板挟みとなり、ストレスを抱えやすいのもデメリットです。マネージャー同士が対立している場合はさらにストレスが大きく、メンタル不調の原因にもなりかねません。複雑なマトリクス組織では、マネージャー間の意思疎通を意識的に行うことが重要です。

人事評価の見直しが必要になる

また、人事評価制度の抜本的な見直しが必要になるのもデメリットです。そもそも、マトリクス組織を実践するとメンバーの所属や業務内容が複雑になるため、従来の評価基準では公平な評価が難しくなります。制度の見直しや評価の取りまとめにコストがかかるだけでなく、評価が不適切だとメンバーのモチベーションが大きく低下してしまうのもデメリットです。評価に不満を覚えたメンバーは、転職を検討しても不思議ではありません。優秀で貴重な人材を失う恐れもあるため、マトリクス組織では制度や基準を見直し、適切な評価を心掛けることが重要です。

    

まとめ

今回はマトリクス組織について解説しました。マトリクス組織とは、異なる2つの業務遂行要素を、縦と横に網目のように組み合わせた組織形態です。業務の効率化やトップマネジメントの負担軽減といったメリットがある反面、パワーバランスの維持が難しく、メンバーの負担が大きくなりやすいというデメリットもあります。マトリクス組織を実践する場合は、これらのメリット・デメリットを十分考慮した上で導入しましょう。

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