中小企業が新たなサービスや商品のビジネスプランを経営革新計画として打ち出し、都道府県などに申請して承認を受けると、政府系金融機関の低利融資や信用保証の特例、課税の特例、特許料の減免など、さまざまな優遇が受けられるようになります。今回は、経営革新計画の承認によって受けられる優遇措置や、計画作成にあたってのポイントについて解説していきます。
目次
経営革新計画について
経営革新計画とは
経営革新計画とは、中小企業が以下のような新たな取り組みを立ち上げるための計画です。
- 新商品の開発・生産
- 新サービスの開発・提供
- 商品の新たな生産方式・販売方式の導入
- サービスの新たな提供方式の導入
- その他新規の事業活動
2016年の7月1日に施行された中小企業等経営強化法により、経営革新計画を立案して都道府県の承認を受けた中小企業を対象とする優遇措置が定められたことで、注目を集めています。
承認企業が受けられる優遇措置
経営革新計画の承認後に受けられる優遇措置は多岐にわたり、大きく分けると5種類あります。
- 保証・融資
保証の限度額が引き上げられたり、日本政策金融公庫から特別な金利で融資を受けたりすることができます。 - 海外展開に伴う資金調達の支援
日本政策金融公庫が信用状を発行して債務を保証してくれたり、保証限度額の引き上げや、日本貿易保険(NEXI)による海外での資金調達の支援を受けたりすることができます。 - 投資・補助金の支援
企業支援ファンドや、中小企業投資育成株式会社から投資を受けることができます。 - 販路開拓の支援
マーケティング支援や、ビジネスマッチングイベントの斡旋などを受けることができます。 - その他
特許関連料金が半額に減免されることがあります。
その他のメリット
経営革新計画を作成する最大のメリットは、上記のようなさまざまな優遇措置を受けられることにあるでしょう。しかしこうした特典以外にも、計画を作成する根本的な意義は、むやみに新しい取り組みを進めるのでなく、新事業の目標や課題を明確にし、進捗状況を確認しながら着実に展開していくことができる点にあります。
経営革新計画の申請ができる対象者
経営革新計画を申請して優遇措置を受けることができるのは、中小企業者としての基準を満たす企業・個人・組合に限られ、さらに、以下の3点も満たす必要があります。
- これまで自社で行っていなかった新たな取り組みを行うこと
- 新たな取り組みによって、経営目標として、付加価値額または1人あたりの付加価値額が年率3%以上伸びること
- 新たな取り組みによって、経常利益が年率平均1%以上伸びること
経営革新計画の記載内容
経営革新計画の内容は、以下の要素で構成されます。
- 新しい取り組みの内容と既存事業との相違点
- 実施体制
- 経営革新の目標
- 経営向上を示す具体的な数値目標
- 実施計画
- 資金計画
- 設備投資・運転資金計画
経営革新計画作成のポイント
経営革新計画は、ただ新しい取り組みを行えば良いわけではありません。作成にあたっては以下のようなポイントがあります。
- 新規性
経営革新計画における「新しい取り組み」は、自社にとって目新しいものであっても、社会全体としては一般的になりつつある取り組みは、対象とならない点に注意が必要です。まだ社会一般に普及していない新しい取り組みを設定するようにしましょう。 - 数値目標の達成
経営革新計画で重要なポイントは、経営が改善することにあります。そのため、付加価値額や経常利益の上昇が要件となっています。厳しく数値目標が定められているので、本当にクリアできるかどうかの精査が必要です。 - 実現可能性
新しい取り組みを判断する上では、実現可能性の高さがポイントになります。実現可能性をはかるためにテストマーケティングを行ってみたり、過去の事業経験を生かせるかどうかなどを考えたりして、信頼性を高める根拠を固めておきましょう。
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経営革新計画の申請について
必要な書類
- 中小企業者の定款
- 中小企業者の最近2年間の事業報告書、貸借対照表、損益計算書
- 経営革新計画に係る承認申請書の原本と写し
- 経営革新計画に関する各表(経営革新計画、実施計画と実績、経営計画及び資金計画、設備投資計画及び運転資金計画、組合員負担金の賦課基準について、関係機関への連絡希望について、中小企業革新事例集の作成に関するお願い)の原本と写し
申請の流れ
- 都道府県担当部局などへの問い合わせ
まずは、ご自身が経営革新計画の支援の対象になるかなどの相談を行う必要があります。問い合わせ先には、都道府県の担当部局の他、中小企業支援センターや商工会、中小企業団体中央会などがあります。 - 必要書類の作成・準備
上掲の必要書類を準備しましょう。 - 各々の申請書提出先に必要書類の提出
申請書の提出先は、申請対象者・実施主体によって異なります。
個別中小企業者または個別中小企業者が共同で申請を行う場合
すべての企業者が同一の都道府県内(地方局管内)にあるときは、その都道府県担当部局(地方局)に申請します。複数の代表企業者が同一の地域局の区域を超えるときは、事業所管省庁または中小企業庁に申請します。
2. 組合等で申請を行う場合
代表となる組合が同一都道府県内(地方局管内)で活動しているときは、その都道府県担当部局(地方局)に申請します。それ以外のときは、事業所管省庁または中小企業庁に申請します。 - 承認
申請した機関の長に経営革新計画が承認されれば、優遇措置を受ける前準備が整ったことになります。各優遇措置には実施機関があり、それぞれの審査を通過することによって優遇措置を受けられます。また、経営革新計画開始後には、フォローアップのために計画進捗状況調査が行われます。
まとめ
今回は、経営革新計画について紹介してきました。経営革新計画を作成することによって、優遇措置を受けられるだけでなく、具体性の伴った新たなチャレンジの計画を練ることができるなど、さまざまなメリットがありますので、ぜひ検討してみてください。