事業を運営し確実な成果を上げていくためには、組織を適正に引っ張っていく力が必要です。このようなスキルは、リーダーシップやマネジメントなどと呼ばれています。複数人が集まり、同じ目標に向かって力を尽くそうとしたとき、リーダーシップとマネジメントスキルを持った人物の存在は必要不可欠です。しかし、その違いについて明確に説明できる人は少ないでしょう。今回はリーダーシップとマネジメントについて、それぞれの内容、両者の違い、習得方法について解説していきます。
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リーダーシップとは、一般に指導力や統率力など訳されます。リーダー的役割を果たす存在は、人間だけでなく動物の群れなどにも見られることから、リーダーシップはビジネスだけでなく生存戦略そのものに必要不可欠といって良いでしょう。そのため、どのような特性や要因によってリーダーシップという貴重なスキルが発現するのか、古くから研究されてきました。ビジネスはもちろん政治や軍事面においても、ものごとを成功に導くためにはリーダーシップは重要です。そのため、「リーダーシップ理論」は今も大きな研究課題となっています。
一つ言えるのは、集団が置かれた状況や条件によって適切なリーダーシップは異なるということです。リーダーにもさまざまなタイプがあるように、組織の構成員が求めるリーダー像にも違いがあります。これらの条件が合致したときに優れたリーダーシップが発揮されるといって良いでしょう。そのため、リーダーシップを執る人物が、必ずしも上長ポジションである必要はありません。言い換えれば、責任感を持って自分の仕事に取り組む従業員がいれば、それこそがその仕事においてのリーダーシップであるということなのです。
このように、リーダーシップとは、チームやグループ内で目標達成に向けてポジティブな影響を周囲に与えられる人が持つ能力といえるでしょう。
マネジメントとは、組織の目標やミッションを達成するために、企業の人的資源・経営資産・リスクなどを管理することをいいます。それぞれ異なる個性を持った人に働きかけて、協働的な営みを発展させることによって、組織の活力や創造性を高めることがマネジメントの役割です。
マネジメントは、経営学を構成する分野の一つである経営管理論として、20世紀初頭から研究されてきました。また、アメリカの経営学者であるP.H.ドラッカーにより体系化され、企業経営の技法として浸透しました。「自己目標管理」「ベンチマーキング」「コアコンピタンス」など、現代のマネジメントスキルとして重要な概念を生み出したのもドラッカーです。彼は著書の中で、マネジメントは「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義しています。マネジメントを行う人、つまりマネージャーは「組織に成果をあげさせるために働きかける人」といって良いでしょう。
リーダーシップとマネジメントは、どちらも組織を活性化させ、目標達成を目指すという点では共通しています。しかし、まったく同義ではありません。
はるか昔から存在するリーダーシップについては、定義化するのが難しいのに対し、マネジメントはさまざまな実践的手法が生み出されているのが大きな違いでしょう。
例えば、目標に向かって組織が動き出すとき、リーダーシップは将来的なビジョンなどの抽象的で長期的な目標達成を目指します。これに対して、マネジメントは短期的かつ定量的な目標の達成に向けて予算や人材の割り振りなどを行います。リーダーシップとマネジメントの違いを明確にして、言葉を使い分けるようにしましょう。
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上述の通り、適切なリーダーシップは、組織や状況によって変化します。変革を押し進めるタイプが好まれる場合や、倫理観を持って部下に接し、信頼関係を築くことが大切な場合もあります。しかし、どのような状況であっても、リーダーに求められるのは、人間関係のハブとしての機能です。組織を共通の理念でまとめあげ、従業員同士をつなぐためには、コミュニケーション能力が欠かせません。
コミュニケーション能力は、ものごとを伝えるだけでなく、受け取る能力を意識することで向上できます。相手の言葉に耳を傾けて、言葉の意図を正しく理解しましょう。加えて、表情や声のトーンによる非言語コミュニケーションも意識すると、信頼関係が構築しやすくなります。
チームビルディングとは、組織や集団に属するメンバーのスキルや能力を最大限に発揮させるための取り組みを指します。組織の目標を達成するためには、チームワークが欠かせません。チームビルディングを進めるには、まずチームのビジョンを明確にしてマインドセットをしましょう。次に、メンバーそれぞれの役割を明確化して、パフォーマンスを発揮できるよう働きかけます。言い換えれば、メンバーそれぞれに、激励の言葉をかけたり、勇気付けたりするといった行動が効果を発揮するでしょう。定期的なミーティングの開催や研修の実施などでメンバーの結束力を高めましょう。
ビジョニングとは明確な目標設定によって組織が進むべき方向を示すことです。つまり、優れたリーダーは「夢」を語れなければならないともいえます。夢といっても、途方もないものや実現不可能なものでは、従業員の士気は高まりません。従業員全員が理解・賛同できる計画を立て、仕事をやりがいのあるものにしましょう。目標を達成し組織が成功しているイメージを思い描き、組織が目指すべきゴールを提示しましょう。
マネジメントに必要なスキルについては、学問として体系化されているため、本格的にマネジメントを理解するためには座学の時間が必要です。しっかりとした知的基盤があることで、目標達成のためにより最適な手段や方法を選定し管理することが可能になります。まずは基本的な知識を学び、問題解決能力を向上させましょう。また、日ごろからものごとに疑問を持ち、考える習慣を身に付けることも大切です。
高い視座とは、広い範囲で遠くまで見渡せる状態を指します。目の前の問題だけに執着していては、ビジネスの最終的な目標達成はできません。葉を見るだけではなく、木を見る視点、森全体を見る視点を養いましょう。視座を高くするためには、豊かな人生経験とさまざまな人とのコミュニケーションが大切です。特に、近年マネジメントに必要な要素は多様化しており、業務を理解しているだけではうまく組織を管理することはできません。新しい価値観に触れる機会を増やし、自身とは異なる考え方を受容することで、部下の目線と同じ視点を養うことができるでしょう。結果として、それぞれの従業員の適正な働き方に配慮しながら、もっともパフォーマンスが発揮しやすい方法を選ぶことが可能になります。
傾聴力とは、相手の話に耳を傾け、相手をより深く理解するためのスキルです。傾聴力を身に付けることで、部下との信頼関係を構築しやすくなります。マネジメントは人や業務をシステマチックに管理する側面がありますが、正確な状況把握や計画策定のためには、チームのメンバーと相互理解を深め、いつでも相談できる関係であることが大切です。傾聴力を磨くためには、自分の話ばかりではなく、相手の言葉を聞くことを意識します。価値観の違いがあっても頭ごなしに否定せず、共通点を見つけて肯定することがポイントです。沈黙を恐れずに相手の話に耳を傾けてみましょう。
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リーダーシップやマネジメントスキルは、どちらも簡単に習得できるものではありません。しかし、組織の中で必要とされる人材になるためには、基本的かつ必要不可欠なスキルです。時代は常に変化し、企業や組織が求めるリーダー像・マネージャー像も移り変わります。その時々に一番合った判断を下し、組織を成功に導いていくために必要なものは、高尚な理念や学問的知識ではなく、従業員と同じ視点になれることでしょう。指導力や管理などという言葉にとらわれず、組織が求めるものを追求しながら、リーダーシップやマネジメントスキルを磨いていきましょう。
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