オフィスのレイアウトは、社員の働くモチベーションと労働生産性に直結するため、常に改善を図らなければなりません。会社の社風や業務内容に合わせてレイアウトを決めるのが望ましいですが、それと同時に、社員のパーソナルスペースや動線を確保するといった注意点も存在します。今回は、オフィスのレイアウトを変更する際に気をつけるべき点と、具体的なレイアウトデザインのアイディアを紹介します。
目次
レイアウトのコンセプト
どんなにデザイン性の高い家具を用いても、コンセプトが定まっていなければ、かえって非生産性的なオフィスとなってしまいます。そのため、コンセプトを統一してからオフィスのレイアウトを考えていくべきです。コンセプトを決める際には社員からヒアリングを充分に行いましょう。社員が現状のオフィスに対して抱えている不満や問題点を洗い出すことで、理想的なオフィス像が描きやすくなります。
コンセプトの例としては以下のようなものがあります。
- 役職や年齢に関係なく働ける環境
- 健康的に働ける環境
- コミュニケーションが取りやすい環境
特にオフィス移転の際などは、事業の性格や社風に合致したコンセプトを設定することで、レイアウトをスムーズに決めることができるようになります。
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ゾーニング
次に考えたいのはゾーニングです。ゾーニングとは、オフィスの空間を用途や機能に応じたスペースに分ける作業を指します。ゾーニングの成否は業務効率に直接影響するので、充分に考え抜く必要があります。ゾーニングを行う際には以下の3点に注意しましょう。
機能に応じたスペースをリストアップする
ゾーニングで漏れが生じないよう、オフィスに必要な機能に応じたスペースを全てリストアップする必要があります。多くのオフィスに見られる典型的な例としては、以下のようなスペースが挙げられます。
- 応接スペース
- 執務スペース
- 会議スペース
- 受付スペース
- リフレッシュスペース
- 管理スペース
使用頻度の高いスペースほど広くする
利用度の高いスペースは、人の出入りが多いので面積の配分も広く取り、逆に利用度の少ないスペースは狭くします。
各スペース間の関連性を考える
移動のコストを減らし、コミュニケーションを円滑にするため、関連性の高いスペース同士は近くに配置します。例えば、来客の対応が多い営業部と応接スペースを近くに配置すると良いでしょう。
各スペースのゾーニング時の注意点
ゾーニングを行う際の一般的な注意点が確認できたので、次に、具体的な各スペースの配置における注意点を見ていきましょう。
- 応接スペース
来客がオフィスの奥まで入り込めるような作りにしてしまうと、機密書類や社内のトラブルが社外の人の目に触れてしまい、情報漏洩や対外的イメージの悪化などのリスクが高まります。そのため、応接スペースは受付スペースの近くに配置するのが定石です。
- 執務スペース
執務スペースは非常時に備え、どの位置からでも社員と出入り口が見えるように配置すると良いでしょう。
- 会議スペース
会議スペースは、打ち合わせの特に多い部署の近くに置くのが効率的です。応接スペースとしても兼用する場合には、上記の通り受付スペース付近に配置します。
- 受付スペース
誰でも出入りできる受付スペースは、セキュリティが最も低い場所となります。高いセキュリティが求められる執務スペースと管理スペースから離して配置すると良いでしょう。しかしオフィスのデザイン性を来客にアピールしたい場合などは、執務スペースが見えるような位置に配置するのも一手です。
- リフレッシュスペース
社員が休憩に用いるので、自由に行き来できるよう執務スペースの近くに配置すると良いでしょう。
- 管理スペース
機密情報などの重要な資料を保管するため、社外の人が行き来するような受付スペースなどからは遠ざけて配置しなければなりません。また総務部や経理部などと隣接させることで作業の効率化が期待できます。
動線の確保・基準寸法
動線とは建物の中で人が通る経路のことを意味します。無駄のない機能的な動線が確保できれば、安全で快適なオフィスになり生産性も向上します。動線計画を考える際に注意したいのは以下の点となります。
メインの動線の明確化
オフィス内での人の流れを滑らかにするため、メインの動線とサブの動線をはっきりと区別します。メインの動線は人が1番通る場所ですので、極力距離が短くなるようにする必要があります。
交差の少ない動線
交差が多い動線は通路が多くなり、他のスペースの場所が奪われてしまいます。
通路幅の確保
通路の幅が短いと、安全性に問題が生じます。また、人が通るたびに椅子を引く必要があるような通路では、従業員の集中力にも影響します。
それぞれの場合に最低限確保したい通路幅は以下の表を参考にしてください。
通路の名称 | 確保したい通路の幅 |
メインの動線 | 1.2m |
デスクと壁の間の通路 | 1.4m |
デスクとデスクを背合わせした時の通路 | 1.8m |
デスクサイドとデスクサイドの間の通路 | 0.9m |
デスクと収納の間の通路 | 1.8m |
セキュリティ対策
レイアウトを考える際にデザインや機能性だけに気を取られては片手落ちです。さらに考慮する必要があるのが、安全面です。ここでは特に地震対策と火災対策に着目して、具体的にどのようにすればよいか、いくつかの具体例を以下に示します。
- パソコンなどの機器類に滑り止めをつける
- 背の高い家具はオフィス中央部に置かない
- 壁面収納用の家具は、壁と床および上下左右に並んだ家具にしっかり固定する
- 避難経路に物を設置しない
- 防火製品をできる限り使用する
- 通路の床には滑りにくく、転んでも怪我をしにくい素材を使う
レイアウト例を紹介
さて、以上の注意点を考慮した上で、実際にどのようなレイアウトデザインがあるのかを次に紹介します。自社のオフィスのコンセプトと照らし合わし、どのレイアウトが適切か判断してみてください。
- 対向式レイアウト
配置:部署ごとに、デスクを長方形型に対向させて配置するレイアウトです。
特徴:スペース効率が良く、コミュニケーションが取りやすいです。
- フリーアドレス式レイアウト
配置:配置としては対向式レイアウトと同じです。
特徴:個人指定の座席を設けずに空いている席を自由に選んで座るスタイルです。必要最低限度の座席数で済み、また、部署や役職を超えたコミュニケーションが取りやすいです。
- スクール式レイアウト
配置:学校の教室のように1つの方向に向かってデスクが並べられています。
特徴:書類の流れに応じてデスクを配置できます。対向式レイアウトよりも集中しやすい環境になりますが、コミュニケーションが取りづらくスペース効率も良くないです。
- 背面式レイアウト
配置:グループ内の人がお互い背を向けるようにデスクを配置します。
特徴:正面に人がいないので、集中して作業ができます。また、椅子を後ろに向けることでコミュニケーションもとれます。しかしパーティションのコストがかかり、スペース効率性も良くないです。 - クラスター式レイアウト
配置:収納やテーブルをデスクの間に挟み、デスクと収納を直角に組み合わせ配置します。
特徴:収納や作業スペースが拡充でき、コミュニケーションも取りやすいレイアウトです。ただしスペース効率はあまりよくありません。
まとめ
オフィスのレイアウトを工夫するだけで、生産性やセキュリティを向上させることができます。今回紹介した注意点を参考に、オフィスのレイアウトを新しくしてみてはいかがでしょうか。