留職とは、海外へ社員を派遣し、新興国のNPOや企業と共に現地の課題解決に取り組ませる新たな研修プログラムのことを指します。社員が未知の現場でスキルを活かして課題解決に挑むことで、グローバルに通用するリーダーシップと広い視野を養うことができるため、効果的な能力開発につながります。今回は、留職プログラムの内容と導入メリット、導入の流れについて解説します。
「留職」の語源は「留学」です。企業で働く人材が、現在の職場で身につけたスキルを活かして、数ヶ月から1年程度海外で働くプログラムのことを言います。留職先は主に新興国のNPO団体や企業で、現地の課題解決に貢献することが目的のひとつです。異文化の環境の中で自ら設定した課題に、周囲から刺激を受けながら挑戦し続け、達成の際には自分自身も大きく成長しています。留職は、「リーダーシップの旅」と言えるでしょう。
では、派遣元企業における職種と留職先での業務内容にはどのようなものがあるのか、いくつか例を挙げます。
以上のように、派遣元企業での職種で得たスキルを活かせるプログラムになっています。主な派遣国はインドネシアやインド、カンボジアなどの新興国です。派遣期間は、1ヶ月から3ヶ月の企業が多く、参加者の職種は、技術職やITエンジニア、営業職の割合が半数を超えます。
留職を導入している主な企業として、パナソニックや日立システムズ、ハウス食品、日産などが挙げられます。ここでは、日本で最初に留職プログラムを実施した企業であるパナソニック株式会社の技術系社員の事例を紹介しましょう。
留職者は、パナソニック株式会社のソーシャルシステムデザインを手がける社員1名で、2012年2月から3月の1ヶ月間、ベトナム中部の都市ダナンに拠点を置く現地NGOで留職を行いました。このNGOは、太陽光を利用した調理器具の製造と販売を10年以上行ってきました。「東南アジアで、環境分野の新しい取り組みを行っている団体に貢献したい」というパナソニックの想いと、「この商品のさらなる改善を模索したい」というNGO団体のニーズをつなぐため、留職が決まりました。そして、1ヶ月の取り組みを通して、低コストで生産可能な製品デザインを設計し、それに基づいた試作品を制作するというミッションを達成しました。
留職プログラムには以下のようなメリットがあります。
日本で初めて留職プログラムを立ち上げたのは、NPO法人クロスフィールズです。クロスフィールズは、企業のニーズと現地団体のニーズをマッチングさせると共に、留職の成果が最大限活かされるようにサポートしています。留職プログラムの先進事例として、アメリカで広がったICV(International Corporate Volunteering:国際企業ボランティア)があります。スターバックスなどの大手企業を中心に導入され、社員を新興国に派遣し、現地で社会貢献活動を行っています。クロスフィールズは、ICVプログラムを運営する先行団体とパートナーシップを結び、国内で留職プログラムを展開しています。クロスフィールズで行う留職プログラム全体の流れは以下の通りです。
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留職プログラムの内容とその導入について紹介しました。グローバル化が進む現代社会において、企業の海外進出は必須の課題となっています。海外に進出するだけでなく、その後も先頭に立ち続ける企業であるためには、リーダーシップの育成が欠かせません。新興国で現地団体と協力しながら社会貢献活動に取り組む体験は、留職者自身にも、企業全体にも刺激や可能性を与えます。留職プログラムは、今後多くの企業に注目されるでしょう。
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