イクボスとは、部下や同僚のワークライフバランスを考慮し、その人のキャリアを応援しながら、組織の業績に結果を出し、自らのワークライフバランスも維持できるような上司のことを指します。NPO法人ファザーリングジャパンにより設立されたイクボスプロジェクトでは、イクボス10ケ条やイクボス宣言などの活動が行われており、認知度が高まってきています。今回は、イクボスプロジェクトの活動内容やイクボスを育成する効果、企業がイクボスを育成するために必要な取り組みについて解説していきます。
目次
イクボスの「イク」は、イクメンなどのイクと同じで、子育ての育が基になっています。「ボス」は英語のbossで、上司のことです。つまりイクボスとは、子育てに理解ある上司、子育てしやすい環境を整える上司のことで、自身の仕事と私生活のバランスだけでなく、共に働く部下や同僚の仕事と私生活も考慮して彼らのキャリアと人生を応援しながら、かつ組織としての業績や結果も出せるような経営者や管理職の人々を指します。ボスと言うと男性がイメージされるかもしれませんが、当然、女性も対象になります。
イクボスの認知度向上と浸透を呼び掛けるNPO法人ファーザリングジャパンなどが主導する一連の活動を、イクボスプロジェクトと呼びます。厚生労働省の奨励もあって近年注目を集めているこの活動の主な内容には、イクボス宣言、イクボス検定、イクボス企業同盟、その他公式メディアの運営などがあります。
イクボス企業同盟の加盟企業は200社以上に及び、以下のような大手企業も名を連ねています。
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イクボスに重要な10要素はイクボス10ヶ条と呼ばれ、この過半を満たすことがイクボスの証となっています。
様々な対応を次々に求められる育児は総合的な能力が必要な活動であり、育児や地域活動への積極的な参加によって身につくものは、仕事にも活かされます。それは視野の広さ、時間配分の効率化、段取りの良さ、対話力、運営力、観察力など多岐に渡り、加えて、新たな人脈拡大に繋がる、思わぬ得意分野が見つかるといった可能性もあります。また、家庭が安定していれば、より集中して仕事に打ち込めることも期待できます。
私生活が尊重されれば仕事に対する部下のモチベーションが上がり、そうした対応をする上司には信頼が集まります。また、いつ誰かが休んでも円滑に業務が進むように情報共有がより徹底され、チームワークも向上します。こうした柔軟な組織形態は多様な価値観に開かれ、優秀な女性や若手社員が集まりやすいので、業績にも好影響が見込めます。
従業員が個々の私生活を充実させていれば、鬱や労災に関わる病気の罹患率を下げられる他、企業としても、ブラック企業脱却やサービス残業削減のきっかけなどにできます。こうした職場環境の改善は、離職率を下げることにも繋がります。
次に、組織内でイクボスを育て上げるために必要なことを説明していきます。既にイクボスの育成に取り組み始めている企業も多く、各地でセミナーや研修が行われているので、以下の基本的事項を踏まえた上でこうしたイベントを利用するとより効果的でしょう。
子育ての尊さや大変さへの理解を促した上で、ワークライフバランスの重要性や、子育てや介護を抱えた従業員への支援の必要性についての認識を共通のものにします。そのためには、従業員はお互いの状況を配慮して協力し合うべきだと組織内の意識改革を行うことが不可欠です。また、女性管理職の採用数を増やしていくことで、より育児などについての理解ある職場に変わることが期待できます。
男性従業員の育児休業取得率を上げることが重要であり、性別にかかわらず休業を理由に不利な扱いを受けるようなことがあってはいけません。育児休業の取得は法律で定められた当然の権利という意識を醸成し、また、誰がいつ休業しても業務を回せるよう情報共有のネットワークや意志決定システムの強化をしておくと共に、職場にいなくても働ける在宅勤務やテレワークの環境を整えて、休業者とその周囲、そしてイクボスが被る負担を軽減することが大切になります。
イクボスや育児休業、組織内の制度改革については、政府でも様々な助成や支援を行っています。上記で紹介してきた施策を今すぐ実現しようすると負担が重く、混乱や反発を招きかねないというような場合は、これらを利用して小さなことから着手していくと良いでしょう。
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現在はワークライフバランスの重要性についての認識が広がりつつあり、イクボスという言葉も、こうした過渡期だからこそ登場したのだと言えます。今後ますます促進されていくであろうこうした動きについて、今のうちから押さえておくことが重要です。
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