自律分散型組織とは?自律分散型組織の概要やメリット、デメリットを解説します。

自律分散型組織とは、社長や管理職のような中央集権者が存在せず、すべてのメンバーが各々の判断や意思決定に基づいて行動できる組織のことを指し、DAO(Decentralized Autonomous Organization)と呼ばれます。自立分散型組織は中央集権者が存在しないので、上下関係がなくフラットな組織といえ、働き方の変革に寄与することから注目を集めています。しかし、自律分散型組織を導入する際にはメリットやデメリット、注意点の理解が不可欠です。今回は自律分散型組織の概要と種類、自律分散型組織導入のメリット・デメリット、導入の注意点について詳しく解説します。

自律分散型組織が注目を集めている

自律分散型組織とは

日本の企業では管理型(トップダウン形式)を多く採用しており、一般的には役員や上司が意思決定を行い従業員に仕事の指示を出します。自律分散型組織は管理型と違い、従業員が組織のために自分がするべきことを判断して仕事を行う形式です。組織を構成する従業員には上下関係がなく、目標を達成するために自分で意思決定を行い実行します。責任が中央集中ではなく、従業員一人ひとりに分散されている点が特徴です。自律分散型組織とは?自律分散型組織の概要やメリット、デメリットを解説します。

自律分散型組織の主な種類

  • アジャイル型組織
    アジャイル組織の「アジャイル」とは、小さなPDCAサイクルを短期間で何度も繰り返して結果を出していく手法を指します。常にPDCAサイクルを実行しながら試行錯誤を繰り返し、大きな計画を練っていく組織です。アジャイル組織では、組織を小さくフラットな集合体だと捉え、計画から実行までを同じメンバーに担当させます。従業員に権限を分散することにより、トップダウンによる業務の固定化がなくなり、迅速で柔軟な対応を可能にします。
  • ティール組織
    ティール組織とは、フレデリック・ラルー氏の組織の移行について説明された著書「ティール組織」にある、5段階に変化する組織の最終型です。恐怖や力によって支配される組織から、階層を持つ組織、経営陣など上層部が管理する組織、ある程度従業員の裁量が認められる組織へと変化します。ティール組織はそこからさらに変化した、従業員全員が完全にフラットな状態になった進化型の組織です。従来のような指示や管理をする存在はなく、組織の目標達成のために個々の従業員が自分で意思決定をして行動します。組織全体のパフォーマンスが上がると同時に、個人のスキルも上がり易いことが特徴です。
  • ホラクラシー組織
    ホラクラシー組織は、企業内の上下関係をすべてフラットにした組織です。ティール組織と異なる点として、ホラクラシー憲法と呼ばれる明確なルールが存在します。従業員はこのルールに基づいて、個々に意思決定や行動を行います。従業員どうしの関係はあくまでフラットであり、これまで役職者が持っていた権力をルールに置き換えた形になります。完全な自由ではありませんが、ルールがあることにより自由と統制のバランスをとることが可能です。また、個々の意思決定による迅速で柔軟性のある対応が期待できます。

自律分散型組織が求められる背景

近年はSNSなどの新しい情報ツールの拡大や、パンデミックによるテレワークの普及など、社会や経済に大きな影響を与える変化が起こっています。このように先行き不透明で予想がしづらい状況のことを指すVUCA(ブーカ)という言葉も生まれました。それぞれ「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった言葉です。VUCAの時代には、市場のニーズや流行などがいつどのように変化するか予測できません。自律分散型組織はそうした変化に強く、柔軟に対応できる組織であり、導入を考える企業が増えています。

   

自律分散型組織を導入するメリット・デメリット

メリット1:エンゲージメントが向上する

自律分散型組織の場合、従業員一人ひとりに裁量が与えられています。つまり、自分が属する組織のために何をするべきかを考え、意思決定するのも自分自身です。そのため、自社の経営に参加しているという意識や責任感を強く持つことができます。個人の意見が経営に取り入れられるのを目の当たりにすると「自分も貢献したい、役に立ちたい」という感情が芽生え、従業員のエンゲージメント向上につながるでしょう。また、自分の仕事が自社の発展に寄与している、自分が役に立っているという実感が得られるため、仕事へのモチベーションアップも期待できます。

メリット2:業務効率化につながる

管理型の組織では、役職者が経営方針を決めてから、それを具体的な業務に振り分けます。その後、各部署に指示を出し、上司が指揮をとって従業員が業務を行うことが一般的です。これだけの工程があるため、方針の決定から実行まである程度時間が掛かります。しかし、自律分散型組織では、従業員の誰かが問題に気付いた場合にはすぐに共有され、方針の変更や業務改善につなげられます。何層にもわたる上への報告や承認の手間がないため、業務を効率化することが可能です。

デメリット1:情報共有が難しい

自律分散型組織では、それぞれが自律して意思決定を行い業務を進めています。そのため、情報の共有がおろそかになってしまう場合があります。情報共有ができていないと、トラブルが発生した場合に対処が遅れるなど、いずれ大きな問題になりかねません。また、誰がどんな業務を行っているかを把握していないと、情報を共有したくても誰と共有してどのように進めれば良いのか判断できないという場合もあるでしょう。不完全な情報共有は業務の属人化にもつながるため、注意が必要です。

デメリット2:自己管理能力が求められる

自律分散組織には上司やリーダーが存在しません。つまり、業務についてはすべて従業員それぞれに任されているため、仕事中の「他人の目」がない状態です。人によっては仕事をさぼってしまったり、だらだらと仕事をしてしまったりすることがあるかもしれません。そのため従業員には、仕事に対するモチベーションを保つ高度な自己管理能力が求められます。定期的に進捗の確認やチームでミーティングを行うなど、モチベーションアップの工夫も必要でしょう。

   

自律分散型組織を導入する際の注意点

情報をオープンにしよう

自律分散型組織のデメリットとして、情報共有が困難であることは上で述べました。そうしたデメリットをメリットに変えるためには、情報をオープンにしやすい環境づくりが必要です。例えば、社内報で順番に従業員のインタビューを掲載したり、社内SNSを導入したり、ランチミーティングを行ったりするなどが挙げられます。それぞれがどんなビジョンをもとに業務を行っているのか、気軽に情報交換できる場所があると良いでしょう。

目標を設定しよう

自律分散型組織は、従業員一人ひとりが意思決定をして業務を行うという組織形態と述べました。そうした個人の意思決定は、所属している企業のOKR(Objectives and Key Results)に基づいて行われます。企業は従業員に対して、明確なOKRを示さなければなりません。OKRとは、「Objectives:目標」と「Key Results:主要な結果」のことであり、これにより全員が同じ方向を向いて目標に向かって行動することが可能となります。

ミッションやビジョンを浸透させよう

個々にやるべきことを考え意思決定し業務を行う、という流れにおいて欠かせないのは、所属する組織(企業)全体のミッションやビジョンをそれぞれの従業員が理解していることです。一般的にビジネスにおいてミッションとは、「企業の存在価値」「社会的使命」を指します。これを経営理念として掲げている企業もあるでしょう。また、ビジョンとは企業の将来に対する理想像、あるべき姿を示すものです。ミッションとビジョンがなければ、個人は何を基準に意思決定をすれば良いのかわかりません。企業のミッションとビジョンは、従業員の入社時に明確に伝えることやその後も伝え続けることにより、全体に浸透させることが重要です。

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まとめ

自律分散型組織は、従来の管理型組織とは大きく異なる組織形態です。導入にはソフト、ハードともに十分な準備期間が必要となるでしょう。従業員のなかには変化を受け入れることが難しい者も居るかもしれません。一度に急激な変化を与えるのではなく、一部署だけで実行してみるなど、慎重な導入が必要です。実現して軌道に乗れば、個人が企業の成長を考えて自律的に行動する組織が誕生します。まずはミッションとビジョンを従業員に浸透させ、全員が同じ方向を向くところから始めてみてはいかがでしょうか。

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