10月1日から10月7日は、全国労働衛生週間です。また、全国労働衛生週間の実効性を高めるため、9月1日から9月30日まではその準備期間とされています。労働者の安全と健康の増進に努めるのは、企業の大切な責務です。
ぜひこの機会に、職場の労働安全衛生について見直してみませんか?今回は、自主的・継続的な安全衛生管理に欠かせない「労働安全衛生マネジメントシステム」について紹介し、その核となる「安全衛生計画」の立て方についてお話しします。
労働安全衛生マネジメントシステムとは?
「労働安全衛生マネジメントシステム」とは、「安全衛生計画」の作成(Plan)、実施(Do)、評価(Check)および改善(Act)というPDCAサイクルに基づいて、安全衛生管理を自主的・継続的に実施する仕組みのことをいいます。
労働安全衛生マネジメントシステムは、安全衛生計画に基づいた継続的な安全衛生管理を自主的に進めることで、労働災害の防止や労働者の健康増進、快適な職場の形成、事業場の安全衛生水準の向上を図ることを目的としています。
職場における事故や災害を防止し、労働者の安全と健康の増進に努めるのは企業の大切な責務であり、各職場において自主的・継続的な安全衛生活動を展開することは必要不可欠です。今回は、労働安全衛生マネジメントシステムの導入方法について御紹介します。
労働安全衛生マネジメントシステムの進め方
労働安全衛生マネジメントシステムは、次の(1)~(6)の手順で進めていきます。
(1)安全衛生方針の表明
まず、職場における安全衛生水準の向上を図るための、安全衛生に関する基本的な考え方を「安全衛生方針」として表明します。安全衛生方針は、分かりやすく簡潔なものにしましょう。
安全衛生方針の内容には、労働災害の防止を図ることや、労働者の協力のもとに安全衛生活動を実施することなどを含めることが必要です。安全衛生方針が定まったら、労働者や関係者に周知を行いましょう。
(2)危険性または有害性の評価(リスクアセスメント)
次に、職場の潜在的な危険性または有害性等について調査を行います。これは「リスクアセスメント」と言われ、特に製造業や建設業等の場合は企業の努力義務となっています。
ここでは、業務に起因する危険性・有害性(労働者に負傷や疾病をもたらす状況等)を特定し、特定したすべての危険性・有害性についてリスクを見積もります。そして、見積もったリスクに基づいて、リスク低減のための優先度を設定します。その結果を踏まえ、労働者の危険や健康障害を防止するために必要な措置を決定します。
(3)安全衛生目標の設定
安全衛生方針に基づいて、「安全衛生目標」を設定します。安全衛生目標は、(2)の危険性または有害性の調査結果や、過去の安全衛生目標の達成状況を踏まえたものにしましょう。
また、目標の設定の際は、一定期間内に達成すべき到達点(目標値)を明らかにするとともに、その目標を労働者や関係者に周知します。
(4)安全衛生計画の作成
安全衛生目標を達成するため、職場の危険性または有害性等の調査の結果等に基づいて、一定の期間を区切った「安全衛生計画」を作成します。安全衛生計画では、安全衛生目標を達成するための具体的な実施事項や日程等について定めます。
安全衛生計画は、労働安全衛生マネジメントシステムの核となる非常に大切なものですので、後ほど詳しく御説明します。
(5)安全衛生計画の実施・点検・評価
安全衛生計画が定まったら、これを適切かつ継続的に実施します。また、計画の作成から1年が経過した時点で、計画どおりに実施できたか、実施できなかった場合はその理由は何かなどを検討し、活動を評価するようにしましょう。
(6)システムの監査、見直し・改善
評価で浮かび上がった課題点は、次年度の改善点となります。これを踏まえながら、次年度の計画書を作成しましょう。また、定期的にシステムの全体的な見直しを図ることも大切です。(1)~(6)のプロセスを繰り返し、PDCAサイクルを回していくことで、自主的・継続的な安全衛生活動に取り組んでいきましょう。
安全衛生計画の作成手順
安全衛生計画の作成は、どのように進めればよいのでしょうか。ここでは、安全衛生計画の作成手順について御説明します。
(1)現状把握
安全衛生計画を作るには、まず現状の把握が必要です。一般社団法人 安全衛生マネジメント協会のホームページでは、安全衛生計画作成のためのチェックシートをダウンロードすることができます(https://www.aemk.or.jp/plan_sheet01.html)。チェックシートに従って、職場の安全衛生の状況を把握しましょう。
(2)検討項目・実施項目の決定
職場の安全衛生の状況を把握したら、自社の安全衛生に関する問題点を検討しましょう。そして、自社で理想とする安全衛生活動はどうあるべきかを検討し、それを実現するために行うべきことを書き出します。検討項目としては、安全衛生管理体制やリスクアセスメントとその対策、日常的な安全衛生活動の実施や安全衛生教育の内容について含めるようにしましょう。
また、これらの検討項目のすべてを一度に解決するのは難しいため、その中でも特に緊急性の高いものを具体的な実施項目とします。どれを実施項目とするかは、安全衛生目標に沿って決めるようにしましょう。
(3)スケジュール化
取り組むべき実施項目が定まったら、各実施項目について担当者を決めるとともに、実施時期や期限を明示しましょう。これで、安全衛生計画の完成です。出来上がった安全衛生計画は、職場の見やすい場所に掲示するとともに、職場の全員で協力して取り組むようにしましょう。
まとめ
労働安全衛生マネジメントシステムの導入は、最初はどうしても手間がかかってしまいます。しかし、労働安全衛生マネジメントシステムを導入した企業の多くが安全衛生水準の向上を感じており、中には労働災害がゼロになったという報告もあります。
社員の安全と健康を守るため、ぜひこの機会に労働安全衛生マネジメントシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。