近年問題視されているハラスメントですが、その種類は多岐にわたります。気付かないうちに加害者となることのないよう、どのような行為がハラスメントにあたるのか押さえておくことは極めて重要です。
前回は、職場で特に起こりやすいハラスメントについて紹介しました。今回は、性に関連するハラスメントを紹介するとともに、番外編として、意外と知られていないハラスメントについて紹介します。
目次
セクシャルハラスメントは、性的な嫌がらせの総称です。異性間に限らず、同性間でも起こる可能性があります。被害者側が不快と感じれば、加害者側の意図に関係なくセクシャルハラスメントに該当します。
異性に対して露骨に性的な事実関係を尋ねること、食事やデートに執拗に誘うこと、性的な関係を強要することなどはもちろんのこと、「お疲れ様」と言って肩に手を置くことや肩を揉むこと、飲み会などにおいて冗談で性的な話をすること、「美脚だね」などと体の特徴を指摘することなどもセクシャルハラスメントになります。
また、近年では男性が被害者になるパターンも多くあるようです。「女性はセクシャルハラスメントにおいては被害者にしかならない」と考えている管理職の女性が加害者になりやすいとされています。セクシャルハラスメントの被害を受けない立場になったからと安堵せずに、今度は自分が加害者にならないように配慮する必要があります。
セカンドハラスメントとは、セクシャルハラスメントの苦情申し立てをしたことによる二次被害のことを指します。セクシャルハラスメントの被害者が相談した際に、会社が問題を隠そうとして、「あなたさえ我慢すれば大事にはならない」、「あなたにも悪い部分があったのでは?」と相談を破棄したり、さらなる嫌がらせをしたりすることが該当します。
セクシャルハラスメントの被害者は、すでに心に深い傷を負っています。二重に傷つけてしまうことのないよう、相談をきちんと受け止め、適切に対処することが重要です。
マタニティハラスメントとは、妊娠・出産を理由とした精神的・肉体的嫌がらせを指します。妊娠や出産があったために解雇したり、自主退職を強要したり、正社員であったのにアルバイトに契約の変更を迫ったり、といったことが該当します。
具体的な事例としては、「妊娠しているのに働いていて、お腹の赤ちゃんがかわいそう」といった言動や、妊娠の報告を受けて「この忙しい時に、ですか……」といった言葉もマタニティハラスメントとなります。
加害者にならないためには、企業全体で出産や育児への理解を深めることが必要です。
マリッジハラスメントとは、未婚者に対して行う嫌がらせの総称です。「だから結婚できないんだよ」や、「まだ結婚しないの?」といったような言葉で、独身であることを責め、相手が傷ついた場合はこれに該当します。ほかにも、自分から望んでもいないのに、同僚や上司から執拗にお見合いの申し出をされることで、精神的苦痛を受けたという場合もマリッジハラスメントにあたります。
結婚しないと一人前になれないからと心配しているつもりでも、相手側からすれば余計なお世話と思う人もいれば、そもそも結婚をする気はないと思っている人もたくさんいます。安易に心配の声をかけることがマリッジハラスメントにつながるので、注意しましょう。
女性らしさ、男性らしさといった、性によるステレオタイプな性差別による嫌がらせを指します。例えば、男性に対して「女っぽい、オカマ」などと言って罵ることはもちろん、それを受けて「もっと男らしくしておけばいじめられないでしょ」といった性に関するアドバイスをすることもジェンダーハラスメントと認識されることがあります。
また、加害者にならないために最も注意が必要なのは呼び方です。男性に対しては名字で呼ぶにもかかわらず、女性に対しては名前で、例えば「○○ちゃん」のように呼ぶという行為は、人によってはジェンダーハラスメントとして捉えられる可能性があります。他にも、女性社員だけにお茶くみをやらせる、男性社員だけに体力仕事をさせる、同じ仕事なのに男性と女性で給料が異なる、といった行為もジェンダーハラスメントとして挙げられます。
エイジハラスメントとは、年齢を理由としたハラスメントです。年を取って体が思うように動かない中高年の社員に対して、「おじさん」「おばさん」と呼んだり、「もう年なんですから、無理しないでください」などという言葉をかけたりすることが、エイジハラスメントの典型的な例となります。
また、逆に、若い社員に対して「若造なんだから余計なことはするな」と馬鹿にしたり、「若いから仕方ない」と過小評価したりすることもエイジハラスメントに該当します。
エイジハラスメントの加害者にならないためには、上の世代の人を敬い、若い世代の言葉を受け入れる広い心を持つことが重要です。
スメルハラスメントとは、臭いで回りに不快な思いをさせることを指します。加齢臭や口臭、汗などの体臭に加え、たばこや香水などの臭いも該当します。また、制汗スプレーや香りの強い柔軟剤の使い過ぎも、スメルハラスメントの要因になりえます。
スメルハラスメントの加害者とならないよう、口臭などを出さないよう生活習慣に気を配ったり、こまめに汗を拭いたりすることによって臭い対策をするとともに、香りのある製品を使用するときは周囲に配慮をするようにしましょう。
スモークハラスメントとは、喫煙がもたらす煙や灰によって、他人に苦痛を与えることを指します。上司に「煙草を吸っていいか?」と問われ、断りたくても断れず受動喫煙を強制されているような場合、スモークハラスメントを受けているといえるでしょう。
悪質なものの中には、社内の分煙を会社側に求めても認められず、労働基準監督署に通告したところ、会社側から突然の異動や解雇を言い渡されたという例もあります。
スモークハラスメントを解決するには、個々人でたばこの煙が嫌であることを明確に伝えることも重要ですが、社内の分煙環境を整えるという会社としての意識も必要です。職場の受動喫煙防止対策については、下記の記事も参考にしてください。
・関連記事:職場の受動喫煙防止対策は出来ていますか?社員の健康を守る対策を
ハラスメントの厄介な点として、何がハラスメントに該当するかを知らないために無意識にハラスメント行為を行ってしまう場合がある、という点があります。気付かないうちにハラスメントの加害者になることのないよう、今回紹介したハラスメントをしっかりと覚えておいてください。
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