近年、ハラスメントという言葉が新聞やニュース、ドラマなどに出てきて注目されています。しかし、一口にハラスメントと言ってもその種類はたくさんあります。自分では迷惑をかけていないつもりでも、相手から見れば不快に感じるかもしれません。そのようなことがないように、今回は数あるハラスメントの中から、特に職場でよく起こりやすいハラスメントについて紹介します。
2020年6月にパワーハラスメント防止法が施行され、企業は「雇用管理上必要な措置を講じること」が義務付けられるようになりました。この法律ではパワハラの判断基準が明確化されており、以下の3つの条件がすべて揃うことが基準となっています。
例えば、ある人に対して明らかに冷徹な態度をとること、他の社員の前でわざと怒鳴りつけること、他人のミスの責任を負わせること、一人では明らかに不可能な仕事を押し付けることなどがパワーハラスメントとして挙げられます。
また、新人社員に雑務しかやらせない、事務職なのに倉庫業務のみ命じる、といったように、能力に比べて過少な要求しか求めないものもパワーハラスメントに該当します。自分の部下を持っている人は、気付かないうちに加害者にならないよう、注意が必要です。
モラルハラスメントとは、個人の持っている道徳観を他人の意志に反して強要することを指します。主に言葉や態度によって相手の心を精神的に傷つける行為なので、肉体的な外傷は発生しませんが、受けた側は心に深い傷を負うことになります。
具体的には、「大卒なのにこんなこともできないのか」といった言葉や、有給休暇を取得したときに嫌味を言うなどといった言動がモラルハラスメントとして挙げられます。
モラルハラスメントは、二人間の問題であるため、第三者から気付かれにくいという特徴があります。また、ふとしたタイミングで「そんなこともできないのか」とつぶやいてしまい、それを聞いた本人が嫌な思いをした、というのもモラルハラスメントに該当します。無意識に相手を傷つけることのないよう、気を付けましょう。
リストラハラスメントとは、リストラ候補者に対するパワーハラスメントやモラルハラスメントのことを指します。本人がいないうちにデスクを別の場所に移動する、人事異動で志望していない部署に配置する、といった行為が該当します。また、急に上司が厳しくなった、無理難題な仕事を押し付けられるようになった、というようなことが起きたらリストラハラスメントを疑ってみましょう。
被害を与える側は、リストラ候補者に対して故意に嫌がらせをしているので、このハラスメントは極めて悪質です。会社内のメンバーと綿密にコミュニケーションを取り、突然に嫌がらせを受けたのが自分だけではないか、などを把握することがリストラハラスメント対策につながります。
レイシャルハラスメントとは、人種差別を示唆するような言動や嫌がらせを指します。アメリカでは、セクシャルハラスメントとともに就業環境を害する行為とみなされています。
ある国を誹謗するポスターが職場に貼られているのを放置しておくと、その環境自体がレイシャルハラスメントであると認識されます。ほかにも、ヒジャーブと呼ばれる頭髪を覆う布を被ったイスラム教徒に、「室内では被るな」などと声をかけることなどもレイシャルハラスメントに該当します。
日本ではまだなじみの薄いハラスメントですが、職場のグローバル化が進んでいる昨今、レイシャルハラスメントを行うことのないよう気を付ける必要があります。気付かないうちに加害者にならないためにも、職場の仲間の国や宗教についてよく理解しておきましょう。
テクノロジーハラスメントとは、パソコンをはじめとする電子機器に関する知識がない人を不当に扱うことを指します。パワーハラスメントの一種で、テクニカルハラスメントとも呼ばれます。
例えば、「コピー機の使い方もわからないのか、使えないな」といった言動や、わざと苦手な機器を使わせて嫌がらせをするといった行為がテクノロジーハラスメントに該当します。また、わざとではなくても、「エクセルの使い方、教えなきゃわからないの?」と高圧的な質問を投げかけることも、相手側が傷ついてしまえばテクノロジーハラスメントと認識されます。
一方で、部下から上司に対してもテクノロジーハラスメントは起こります。例えば、「出張に関する報告をしなさい」と上司に言われ、「メールで送っておきましたよ」と、上司がメールを使えないほどパソコンが苦手なことを知りながら答えることも該当します。
無意識のうちに自分の知識をひけらかすことで、部下であっても加害者になりうるので注意が必要です。
ハラスメントを予防するには、個人として気を付けなければならないことはもちろんですが、会社全体で環境を整えていく必要もあります。同僚や上司とコミュニケーションを密にとって、よりよい職場環境を作っていきましょう。
また、もし自分がハラスメントの被害にあっていると感じたら、まずは落ち着いて証拠集めをしましょう。いつ、どこで、誰に、何をされたのかを明確に記録したうえで、職場内の頼れる人や、労働局などの相談機関に相談するようにしましょう。
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