育児休業中の社会保険料免除の対象はどうなる?育児・介護休業法改正後の社会保険免除対象について詳しく解説します

2021年6月の健康保険法と厚生年金保険法の改正により、育児休業中の社会保険料の免除要件が改正されました。これに加えて2022年10月から改正育児・介護休業法の施行にともない、育児休業中の社会保険料免除の対象も変更されます。現行社会保険免除の要件と10月から施行される改正育児・介護休業法の両者について理解して、適切な対応をおこなえるようにしましょう。今回は社会保険免除制度の概要、現在の社会保険料免除の要件、現在と法改正後における育児休業中の社会保険免除対象の違いを詳しく解説します。

育児休業で社会保険料は免除されるの?

そもそも社会保険料とは

社会保険は、生活上の困難が考えられる事態に対して一定の給付を行い、生活基盤の安定を支えることを目的とした強制加入の保険制度です。原則として、条件を満たす人は社会保険への加入と社会保険料の支払いが義務付けられています。日本における主な社会保険は以下の5つです。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

このうち雇用保険と労災保険を合わせて労働保険と呼びます。企業は雇用形態を問わず、社員を1人でも雇用していれば成立手続きを行い、労働保険料を納付しなければなりません。保険料の負担について、労災保険は企業が全額負担しますが、それ以外は社員と企業で折半します。

産前産後休業の社会保険料免除制度を活用しよう

産前産後の休業期間にある社員がいる場合、企業が年金事務所に申請すれば、健康保険および厚生年金保険の保険料支払いが社員と企業ともに免除されます。妊娠・出産により業務に従事しなかった期間が対象で、最長の場合産前42日・産後56日が該当します。双子や三つ子などの多胎妊娠では、産前期間の上限が98日に延長されます。保険料免除期間中は保険料を納めていた期間として扱われるため、将来の年金額にも影響しません。

改正育児・介護休業法がスタートしている

育児・介護休業法が2021年6月に改正され、2022年4月から段階的に施行されています。今後2022年10月と2023年4月にも内容が追加され、3段階に分けての施行予定となっています。改正後の内容は以下の通りです。

  • 2022年4月1日施行
    1.育児休業を取得しやすい雇用環境整備および妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
    2.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
  • 2022年10月1日施行
    1.男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組み(産後パパ育休)の創設
    2.育児休業の分割取得
  • 2023年4月1日施行
    1.育児休業の取得の状況の公表の義務付け

    

改正育児・介護休業法による社会保険免除の要件変更

月内に短期間の育児休業等を取得した場合

現行の制度では、月をまたぐ形で育児休業を取得している場合に限り、休暇取得開始日が含まれる月の保険料支払いが免除されます。2022年10月1日の育児・介護休業法の改正後は、同月内に14日以上の育児休業を取得していることが、保険料支払い免除の条件に追加されます。必ずしも月末時点で休業している必要がなくなるため、免除条件が緩和される見込みです。

賞与月に育児休業などを取得している場合

現行の制度では賞与が支給される月に育児休業を取得する場合、その月の保険料に加え賞与にかかる保険料も免除されます。しかし、法改正により賞与にかかる保険料免除には条件が設けられました。2022年10月1日以降、育児休業の期間が暦上で1ヶ月を超えた場合に限り、賞与にかかる保険料の支払いが免除されます。連続した1ヶ月の休業が対象であり、短期間で取得した日数を合算する方法は認められないため注意が必要です。

連続する二つ以上の育児休業などを取得している場合

複数の育児休業を連続して取得する場合、まとめて1つの育児休業とみなす方法が適用されます。例えば月をまたぐ期間の育児休業を取得し、その後間を空けずに再び休業した場合は、取得した育児休業は1回と判断されます。このケースでは、同月内に14日以上休業を取得した場合の保険料支払い免除条件を2ヶ月にわたって適用することが不可能です。したがって、育児休業を開始した月の保険料のみ支払いが免除されます。

     

育児休業のケース別の社会保険免除のポイント

育児休業を延長した場合

社員が育児休業の延長を希望する場合、社会保険料の免除期間も同時に延長されます。育児休業は子どもが1歳になるまで利用できる制度ですが、1歳時点で社員の職場復帰ができない場合2歳まで延長可能です。育児休業の延長を希望する社員がいる場合、企業は育児休業等取得者申出書を作成し、日本年金機構へ提出します。延長の申請は、社員が以下の休業を取得している期間に行わなくてはなりません。

  • 1歳に満たない子を養育するための育児休業
  • 保育所待機等特別な事情がある場合の1歳6カ月に達する日までの育児休業
  • 保育所待機等特別な事情がある場合の2歳に達する日までの育児休業
  • 1歳(保育所待機等特別な事情がある場合は1歳6カ月または2歳)から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業

育児休業が早く終わった場合

当初申請していた育児休業終了日より早く復職する場合、日本年金機構に育児休業等取得者終了届の提出が必要です。育児休業終了予定日の前日までに提出すれば、終了月の前月までに課される保険料が免除されます。また、社員が育児休業を終了する前に産前産後休業取得者申出書を提出した場合は、育児休業等取得者終了届の提出は不要です。

産後パパ育休を利用する場合

2022年10月1日以降に制度が開始される産後パパ育休は、子どもの出生日から8週間以内に4週間まで取得可能です。休業する2週間前までに申請を行い、あらかじめ希望を出すことで2回に分割できます。産後パパ育休の取得により通常の育児休業と同様に社会保険料が免除されるだけではなく、条件を満たしている場合は出生時育児休業給付金の対象となります。

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まとめ

育児休業における社会保険料免除について、概要や法改正の影響、育児休業の各ケースにおけるポイントを解説しました。改正育児・介護休業法では、今後社会保険の免除を受けるために必要な条件が変更になります。段階的施行により、内容も追加されていくため、企業は対応できるように確認しておかなくてはなりません。出産・育児休業中の保険料免除は、社員の経済的な負担を大きく軽減できる制度です。社員のライフワークバランスをサポートできるよう体制を整えましょう。

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