2016年12月、「均等・両立推進企業表彰」表彰式が行われました。この表彰は、働く女性の能力を発揮させるための積極的な取組や、仕事と育児・介護の両立を支援する取組を行っている企業を表彰するものであり、受賞企業の取組には参考にすべき点が多くあります。
今回は、均等・両立推進企業表彰受賞企業の取組や、社員の能力を発揮させるために企業に求められる取組について解説します。
目次
「均等・両立推進企業表彰」は、「女性労働者の能力発揮を促進するための積極的な取組(ポジティブ・アクション)」や「仕事と育児・介護との両立支援のための取組」について、他の企業の模範となるような取組を行っている企業を厚生労働大臣等が表彰する制度です。
優れた取組を行っている企業を表彰し、これを広く周知することで、男女ともにそれぞれの職業期間の全期間を通じて能力を発揮できる職場環境の整備を促進することを目的として実施されています。
「ポジティブ・アクション」とは、固定的な性別による役割分担意識等から「営業職に女性がほとんどいない」「課長以上の管理職は男性がほとんどを占めている」など男女労働者の間に事実上生じている差があるとき、それを解消するために企業が行う自主的かつ積極的な取組のことをいいます。
ポジティブ・アクションは、単に女性を「優遇」する取組ではなく、これまでの慣行や固定的な性別の役割分担意識などが原因で、女性が男性よりも能力を発揮しにくい環境に置かれている場合に、それを「是正」するための取組です。具体的な取組としては、女性の採用拡大や職域拡大、管理職への登用などが挙げられます。
ポジティブ・アクションを行うことで、女性社員の労働意欲や生産性の向上、それによる男性社員への刺激、多様な人材による新しい価値の創造、労働力の確保、企業イメージの向上などの効果が期待されます。
また、ポジティブ・アクションを進めていくためには、能力や成果に基づいた公正な評価を実施することが必要になってきます。公正な評価の実施は、女性社員だけでなく、社員全員、さらには企業にとっても大きなメリットとなります。
均等・両立推進企業表彰は、「均等推進企業部門」と「ファミリー・フレンドリー企業部門」の2つの部門に分かれています。今年度、厚生労働大臣優良賞を受賞した企業は以下の6社です。
女性の能力発揮を促進するために、他の模範というべき取組を推進し、その成果が認められる企業が表彰されます。
◯2016年度厚生労働大臣優良賞受賞企業
DHL ジャパン株式会社(東京都)、株式会社池田泉州銀行(大阪府)、塩野義製薬株式会社(大阪府)
仕事と育児・介護が両立できる様々な制度を持ち、多様で柔軟な働き方を労働者が選択できるような他の模範というべき取組を推進し、その成果が認められる企業が表彰されます。
◯2016年度厚生労働大臣優良賞受賞企業
大和証券株式会社(東京都)、株式会社リコー(東京都)、社会医療法人明和会医療福祉センター(鳥取県)
ここでは、均等・両立推進企業表彰を受賞した企業が行っている取組やその成果を紹介します。重要なポイントとして、均等推進企業部門では「管理職に占める女性の割合増加」、ファミリー・フレンドリー企業部門では「育児休業制度・介護休業制度の充実」が挙げられます。
均等・両立推進企業表彰を受賞した企業の一部は、ポジティブ・アクションとして、女性の管理職比率の増加を目標に掲げた取組を行っています。
例えば、塩野義製薬株式会社では「2020年度までに、幹部職(マネジャー)に占める女性比率を10%以上にすること」を目標として取り組み、実際に管理職に占める女性の割合が増加しています。2014年度から2016年度の変化を見ると、係長クラスでは17.6%から21.0%、課長クラスでは5.9%から8.5%と、着実に成果を上げていることがうかがえます。
均等・両立推進企業表彰を受賞した企業は、育児休業や介護休業の制度を充実させるとともに、休業を取得しやすい環境整備を図るなどの取組を行っています。
例えば、株式会社リコーでは、育児休業について「子の満2歳の誕生日が属する月の末日まで取得可能、休業期間が3ヶ月以内の場合10日間は有給」という制度を設けており、2015年度の育児休業取得率は女性97.5%、男性30.1%と高い取得率になっています。
また、株式会社リコーでは、介護休業についても「対象家族1人につき、通算2年間取得可能、何度でも取得可能」という制度を設けており、過去3年間に男性9名、女性6名が取得しています。
さらに、育児や介護と仕事との両立を支援するため、勤務時間の短縮を推進している企業もあります。社会医療法人明和会医療福祉センターでは、短時間正職員の制度を設け、勤務時間の短縮や休日の拡充(週休3日制など)という働き方を選択できるようになっています。
男女均等や仕事と育児・介護の両立を目指す取組は、働く女性の需要が今後高まっていく中で、より一層重要になってくると考えられます。
企業は今後どのような取組を行っていくべきか、均等・両立推進企業表彰を受賞した企業の取組を参考にしながら解説します。
女性の活躍推進のためには、まずはポジティブ・アクションに取り組む体制を整えることが第一です。人事担当部署が中心となって取組推進委員会を設置したり、労使による取組推進委員会を設置したりするなど自社の状況に合わせた体制整備を行うようにしましょう。
次に、自社における女性の活躍についての現状を分析し、問題点を発見します。なぜ女性の活躍が少ないのか、その理由を突き詰めることで、解決策を検討しましょう。
ポジティブ・アクションの具体的な取組としては、女性の採用・職域の拡大や、女性の管理職の増加、女性の勤続年数の伸長、職場環境・風土の改善などが挙げられます。自社の実態に即した取組を、積極的に進めていくことが大切です。
なお、女性活躍推進法の施行により、2016年4月から、女性の活躍に関する課題分析や、課題解決のための事業主行動計画の策定等が企業に義務づけられています。こちらも併せて確認するようにしましょう。
・関連記事:徹底解説!女性活躍推進法
https://www.somu-lier.jp/goodstory/woman-activity/
仕事と育児・介護の両立のためには、育児休業や介護休業の制度を整備し、充実させていくことが必要です。2017年1月より改正育児・介護休業法が施行され、仕事と育児・介護の両立に関する支援制度がさらに充実することになっています。法律の規定をしっかりと理解し、必要な措置を講じるようにしましょう。
また、制度を整備するだけでなく、男女ともに育児休業・介護休業を取得しやすい職場環境を整えていくことも重要です。制度について社員に周知したり、該当の社員に声かけしたりするなどにより、制度の利用促進を図っていくようにしましょう。
・関連記事:【2017年1月~】育児・介護休業法が改正されます
男女均等や、仕事と育児・介護の両立推進に向けた取組は、男女すべての社員が能力を最大限に発揮しながら働けるようにするために大切な取組です。また、企業にとっても人材確保や能力開発などの面で多くのメリットが生じます。
均等・両立推進企業表彰受賞企業の取組を参考にしながら、ぜひ積極的な取組を行っていくようにしましょう。
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