職場におけるセクシャルハラスメントは「対価型」と「環境型」の2種類に分類されます。「環境型」セクハラとは、労働者がセクハラにより精神的苦痛を感じ、労働環境を悪化させることをいいます。「対価型」と違い、降格や減給などの不利益が出ていないため、個別の状況を斟酌して判断することが必要です。今回は、「環境型」セクハラの内容と法律の見解、そして企業ができるセクハラの把握方法、対応策を解説していきます。
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環境型セクハラは、「労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」と定義されています。
セクハラをはじめとする、職場におけるハラスメント行為は、加害者と被害者がはっきりとわかる場合がほとんどです。しかし、環境型セクハラに関しては、判断が難しい場合が多いといわれています。これは、定義における「意に反する性的な言動」に、どの程度の言動が該当するかについては、人によって感じ方が違うからです。そのため、本人に性的な思惑がなかったとしても、相手が不快に感じたり、業務に支障が生じたりした場合は、誰でも環境型セクハラの加害者になる可能性があります。これについて、厚生労働省は、男性被害者の場合は「平均的な男性労働者の感じ方」、女性被害者の場合は「平均的な女性労働者の感じ方」を基準として判断することが適当だとしています。
しかし、環境型セクハラに対する認識が深まったことで、これまでコミュニケーション上の冗談として取り沙汰されて来なかった発言が、セクハラとして認定される可能性が出てきたということを認識しなければなりません。
一般的なセクハラというと、身体に触れたり、性的な発言をしたりするイメージがありますが、環境型セクハラには、以下のようにさまざまな行為が該当します。
このように、ひと昔前であれば、冗談で済まされていたかもしれない行為も、相手を不快にし、業務に支障をきたした時点で重大なセクハラとみなされてしまいます。職場のコミュニケーションには、これまで以上の配慮が必要になっているといえるでしょう。
セクハラには、環境型セクハラのほかに「対価型セクハラ」というタイプもあります。対価型セクハラは、「性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことで、解雇・降格・減給される、労働契約の更新が拒否される、昇進・昇格の対象から除外されるなどの不利益を受けること」と定義されています。例えば、上司からのボディタッチを拒否したことを理由に、左遷や解雇されるケースなどは、明らかな対価型セクハラです。目に見える形で不利益が生じる対価型セクハラは、より悪質に感じますが、環境型セクハラは被害者のメンタルや労働環境などに支障が生じるため、深刻さの度合いは比べられるものではないでしょう。
男女雇用機会均等法の第11条では、職場におけるセクシュアルハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を企業に義務付けています。具体的には、以下の項目が企業に義務付けられています。
あわせて、当事者のプライバシー保護についての規定や、相談・協力などを理由に不利益な取扱いをされない旨の定めと周知・啓発が必要です。また、企業内だけで解決が難しい場合は、男女雇用機会均等法に基づく紛争解決援助制度を利用できます。これは、労使の紛争について、都道府県労働局長による解決に向けた援助や、調停会議による調停が受けられる制度です。
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セクハラの実態を知るためには、社内アンケートの実施が効果的です。いくら相談できる体制を整えていても、セクハラの状況次第では言い出しにくいこともあります。そのため、セクハラの被害を訴える方法は複数用意すると良いでしょう。また、全社一斉のアンケートであれば、当事者の周囲の指摘からセクハラ被害を把握することもできるかもしれません。アンケート用紙を配布する方法のほか、インターネットにて無料で利用できるアンケートフォームを活用するのもおすすめです。
企業としてセクハラに対する方針を明確にする必要があります。どのような内容をセクハラとして扱うのか、加害者にはどのような処分をするのか、しっかりと周知することが大切です。このように規定化することで、実際にセクハラ事件が起きた際に迅速に対処できるようになります。それだけではなく、従業員間でセクハラへの認識が高まることにより、職場においてセクハラが起こらないよう従業員同士で気遣い合う風土も生まれやすくなるでしょう。
すぐに相談できる窓口をつくることが大切です。相談窓口では、ただ話を聞くだけではなく、困っている内容に対して適切な対応が取れるよう、担当者への教育も大切です。
社内でセクハラが発生した場合、まずは被害者の話を丁寧に聞きましょう。デリケートな問題を含む場合も多いため、被害者が女性従業員の場合は女性担当者が対応するなど、配慮が大切です。また、加害者に対しても、最初から決めつけるのではなく公正な視点で事実確認を行わなければなりません。このとき、当事者たちの話を否定せず、説教や指導もしないようにします。そして、被害者が望む解決方法を導き出しましょう。
パワーハラスメントとは職場内の優位性を利用した嫌がらせ行為です。より厳密に定義すると、以下の3つの要素をすべて満たすものがパワーハラスメントと考えましょう。
例えば、上司が部下に対して周囲の目がある環境で相手をひどく侮辱する叱責をすることはパワーハラスメントに該当する恐れがあります。
マタニティハラスメントとは、企業で働く女性の妊娠や出産を理由とした嫌がらせ行為です。マタニティハラスメントの例としては以下のような行為が挙げられます。
こうしたマタニティハラスメントは、男性従業員の妊娠出産への理解不足や協力不足、企業の支援制度の設計や運用の不備などが原因で発生するケースが目立ちます。
モラルハラスメントとは、道徳や倫理に反する精神面に対する嫌がらせ行為を指します。 殴る蹴るなどの暴力行為ではなく、言葉や態度で相手に嫌な思いをさせることがモラルハラスメントに該当します。例えば、以下の行為はモラルハラスメントとみなされる可能性があるので注意しましょう。
また、モラルハラスメントが生じるのは職場だけに限定されません。上下関係などの優越性も関係がないため、生活のさまざまな場面で発生する可能性があります。たとえ仲の良い同僚であったとしても、行き過ぎた言動には気をつけましょう。
リモートワークの普及が進むなか、問題になっているのがリモートハラスメントです。リモートハラスメントとは、リモートワーク中に発生する嫌がらせ行為で、具体例としては以下が挙げられます。
Web会議などでの思わぬ言動がリモートハラスメントに該当する恐れもあるので、相手の立場に立った思いやりのある振る舞いを心がけましょう。
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現代では、さまざまな行為がハラスメントとして定義されており、その数は30以上にものぼると言われています。何もかもがハラスメントと認定されてしまい、社内コミュニケーションが取りにくいと感じる人もいるでしょう。しかし、現在のハラスメントに該当する行為が許されていたひと昔前までは、心無い言動に傷付けられ、泣き寝入りした被害者達の存在があることを忘れてはいけません。環境型セクハラはその代表的なものといえるでしょう。ハラスメントは重大な人権侵害であることをしっかりと認識し、誰も傷付くことのない職場環境を構築しましょう。
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