社宅には、社有型の社員寮と借り上げ型の社宅があります。コスト面の問題から、企業が有する建物を寮とする社有型ではなく、物件を企業が借りて社員に貸し出す借り上げ型が多く利用されています。近年、人と人のつながりを強め、コミュニケーションを活発化させる仕組みとして社員寮が見直され始めています。今回は、社員寮の運用と規則の定め方について解説していきます。
社宅の運用方法
社宅の運用方法としては、社有型の社員寮と借り上げ型の社宅の2つがあります。両者の違いを確認していきます。
- 社有型の社員寮
企業の所有する建物に社員を住ませるという方法です。メリットとして、社員同士のコミュニケーションが多くとれる、社員が賃貸を探す手間や煩雑な手続きをする手間がなくなることが挙げられます。デメリットとしては、社員のプライベートが干渉されやすくなる、施設管理が必要になるという点があります。 - 借り上げ型の社宅
企業または社員が選んだ物件と企業が賃貸契約を結び、予算内で住宅手当を援助するという方法です。メリットとしては、企業が家賃を一部払うため家賃が非課税になること、企業は施設管理の手間が省けることがあります。デメリットは、契約や賃料を支払う手間ができてしまうことにあります。
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社員寮の規則の定め方
今回は社宅の中でも社員寮に注目して、社員寮の規則として定めるべき項目を以下に示しました。これらを1つずつ決めていくことによって規則を体系化して作ることができます。
管理体制
管理人を置くかどうか、置く場合はその業務内容と業務時間を決める必要があります。
基本的に運営は、社員寮の住人が行うことになります。そのためには、運営委員会などを作る必要があるので、委員会の役割や、委員長の決め方などを定めておきましょう。また、管理人に掃除の業務がない場合や、掃除を外注していない場合などは、社員寮に住む人たちで掃除を行わなくてはいけません。そのため、当番制などのルールを決めておきます。
入寮
入寮資格や入寮手続きの方法について定めておきましょう。また、社員寮の場合は入寮期限を定めることが多いです。これは、あまりに長期間の寮生活は人間関係形成という目的から離れてしまいかねないことが理由です。入寮を許可されても入居しない人がいますが、対策として何日以内に入寮しなくてはいけないと定めておくと良いでしょう。
遵守事項
- 食事
食堂がある場合には、食事の時間、配膳・片付けの分担、食事が必要ない場合の連絡方法などのルールを定める必要があります。また、食事の費用に関しても、社員寮住人の負担分や、会社の補助の有無を決めておきます。 - 門限
門限がある場合は、門限の時間や、門限に遅れる場合の連絡方法、門限を過ぎてからの外出のルールなどを定めておきましょう。 - 部外者の立ち入り
家族や恋人、友人などの部外者の立ち入りに関してもルールを定めましょう。面会場所を制限するのか、事前の申請によって宿泊を認めるのかなどの事項が挙げられます。寮内でのトラブルの元になりやすい問題なので、ルールを明確にしておきましょう。 - 整理整頓と清潔さの保全
寮内での共有物の整理整頓や、共有施設を清潔に保つことなども並べて遵守事項とすることによって、生活環境が良くなることが望めます。また、明文化することで悪質な利用者への対処が容易になります。
禁止事項
- 政治活動・宗教活動
寮内の共有スペースにおける政治活動や宗教活動は禁止しましょう。トラブルの原因となります。 - ペット
ペットについては、全て飼ってはいけないのか、一部は認めるのかなど、基準を明確に定めておきましょう。その際、社員寮の構造的な性質を考慮に入れて、騒音問題や衛生問題を鑑みた上で決めるようにしましょう。 - 部屋の改装
一般的には、退寮する際には原状回復が定められているので、それが可能である範囲の改装のみ許可するなど、改装して良い範囲なども提示する必要があります。 - 火気
火災のリスクなどを考えれば、火気の使用は決められた場所でのみ許可するといった制限があっても良いでしょう。
寮費
寮費の金額や支払い方法なども定めましょう。また、社員寮に住む人が、施設や備品を破壊した場合には、修繕費を全額または一部弁償しなくてはいけないという旨の取り決めも必要です。
退寮
どのような時に退寮となるのかを決めましょう。たとえば、会社を辞めた時や、退寮を希望した時、規則に反した時などと決めておきましょう。これに関連して、規則違反者への措置に関しても具体的内容を詰めておく必要があります。
規則を定める際のポイント
規則制定に際して、以下のようなポイントも合わせて確認しましょう。
- 目的を考える
特に重要なのは、社員寮を作るという目的を考えることです。会社にもよりますが、人と人のつながりを育む場の提供という目的の場合が多いと思われます。このような場合には、コミュニケーションが増えるよう、食事のできる時間を決めるなどの施策が考えられます。意図を持った規則作りを行うと、社員寮の効果が上がるでしょう。 - 過干渉にならない
同時に注意しなくてはいけないポイントとして、過干渉になりすぎないことがあります。会社の意図する点を規則に反映させるのは良いものの、度を過ぎると、住むのに息苦しい空間になりかねません。ある程度は居住者に任せるといったスタンスも必要になります。
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まとめ
今回は、社員寮の規則の定め方について中心に説明してきました。上記で示してきたような規則を定めておけば、大きなトラブルなどを避けることができるでしょう。規則には、企業からのメッセージを残せる部分でもあるので、じっくりと考えて制定しましょう。