企業がテレビやパソコン、事務机や社用車などの固定資産を所有している場合、会計処理において「減価償却」を行うことが必要です。
減価償却の仕組みは一見複雑に見えますが、ポイントを押さえて適切に減価償却をしていくことが大切です。
今回は、減価償却の概要や、減価償却が必要となる減価償却資産の種類、定額法・定率法等といった減価償却の具体的な計算方法について解説します。
減価償却は、時の経過によって価値が減少する「減価償却資産」を所有した際に必要な、会計処理における手続きの一つです。
通常の消耗品等を購入した際の会計手続きでは、購入した分の金額を全額経費として計上します。しかし、減価償却資産を購入した場合は、その資産の取得に要した金額を、その資産の使用可能期間の全期間にわたって分割し、減価償却費として経費計上することが必要であり、この手続きを「減価償却」といいます。
減価償却資産の使用可能期間は、「減価償却資産の耐用年数」として財務省令により定められており、これを「法定耐用年数」といいます。法定耐用年数は、「金属製の事務机は15年」「パソコンは4年」など、資産の種類や材質等によって具体的に定められています。
減価償却が必要となる「減価償却資産」は、時の経過によって価値が減少してしまう固定資産です。減価償却資産に該当する勘定科目には、建物、建物附属設備、構築物、車両・運搬具、工具、器具・備品、機械・装置、生物などがあり、具体的には以下のようなものが含まれます。
ただし、減価償却資産に該当するものであっても、使用可能期間が1年未満のものや、取得価額が10万円未満のものの場合は減価償却を行わず、取得金額の全額をその年の必要経費として計上することになります。
減価償却の計算方法としては、主に「定額法」と「定率法」の2種類があります。どちらの方法をとるかは、減価償却資産の種類ごとに選定します。この場合、所轄の税務署長に償却方法の選定の届出が必要です。
また、減価償却の取得金額によっては「一括償却資産」として処理することができたり、事業者の属性によっては「少額減価償却資産」として処理することができたりします。
ここでは、定額法、定率法、一括償却、少額減価償却の4点について解説します。
定額法は、減価償却費の額が原則として毎年同額となる方法です。毎年経費として計上される減価償却費の額は、(取得価額)×(定額法の償却率)によって計算されます。
定額法の償却率は、法定耐用年数ごとに財務省令の別表に規定されており、法定耐用年数が10年であれば0.1、5年であれば0.2のように定まっています。
定率法は、毎年一定の割合で減価償却を行う方法です。減価償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少していきます。
毎年の減価償却費は、(未償却残高)×(定率法の償却率)によって計算され、これを「調整前償却額」といいます。ただし、調整前償却額が「償却保証額」に満たなくなった年分以後は(改定取得価額)×(改定償却率)で計算されることとなり、毎年同額となります。
償却補償額とは、資産の取得価額に当該資産の耐用年数に応じた保証率を乗じて計算した金額をいいます。保証率は、財務省令の別表により定められています。
改定取得価額とは、調整前償却額が初めて償却保証額に満たないこととなる年の、期首未償却残高をいいます。
改定償却率とは、改定取得価額に対しその償却費の額がその後同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率をいいます。改定償却率は、財務省令の別表により定められています。
減価償却資産の取得価額が10万円以上20万円未満の場合、「一括償却資産」として処理することができます。この場合、該当する減価償却資産を一括し、一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1相当の額を、取得した年以後3年間にわたって経費に計上することになります。
中小企業者が、取得価額30万円未満である少額減価償却資産を2006年4月1日から2018年3月31日までの間に取得した場合、その全額を経費として計上することができます。ただし、少額減価償却資産として処理する資産の合計額は、1年で300万円が上限とされます。
減価償却資産を所有する場合、「固定資産台帳」に記帳して管理していくことが必要です。固定資産台帳には、個々の資産ごとに取得年月日や取得価額、耐用年数、減価償却額等を記載するようにしましょう。なお、固定資産台帳は帳簿に該当し、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しておくことが必要です。
また、減価償却資産を所有している場合は、それを自治体に申告しなければなりません。具体的には、毎年1月1日現在所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数等)について、1月31日までに償却資産の所在する自治体へ申告することが必要です。
減価償却は難しい仕組みのように思えるかもしれませんが、償却資産をきちんと管理することを意識したうえで、毎年地道に計算していけば難しいものではありません。この記事をきっかけに、減価償却の仕組みや計算方法について理解していただければ幸いです。
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