退職後の従業員の豊かな生活を支える企業年金のうち、「企業型確定拠出年金」とは企業が掛金を拠出し、従業員が管理を行うといった特徴を持つ制度です。平成24年の法改正より、加入者が事業主の掛金に拠出金を上乗せできる「マッチング拠出」が可能となったことで、利用が拡大しています。今回は企業型確定拠出年金について、「個人型(iDeCo)」との相違点や「マッチング拠出」制度について、また企業が導入するメリットを解説します。
企業型確定拠出年金(以下「企業型」とします。)と個人型確定拠出年金(以下「個人型」とします。)に分かれている確定拠出年金は、国民年金などの公的年金に上乗せして給付される私的年金の一種で、元本となる掛金とその運用収益の合計額によって将来の年金給付額が決定される制度です。
現行の企業年金制度は離転職時の年金資産の管理が完全ではないなどの問題点があり、それらを改善する新たな選択肢の1つとして平成13年10月に確定拠出年金が導入されました。
個人型確定拠出年金については以下の記事で詳しく解説しています。
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個人型と企業型の大きな違いは、資産運用の元本となる掛金を拠出する主体が個人か企業か、という点にあります。個人型は加入者個人が資金を積み立てるのに対し、企業型は会社が退職金の一部として従業員の口座に毎月一定額の資金を拠出します。
個人型の場合、積み立てた資金をどの金融機関に運用してもらうかは加入者個人が自由に選択できますが、企業型の場合は、企業があらかじめ用意している複数の運用商品の中から従業員が運用方法を選択することになります。
なお、運用商品を提示する企業は、必ず3つ以上の商品を選択肢として提示する必要があります。
マッチング拠出制度とは、企業型を採用している会社が毎月拠出する掛金に、従業員が一定の範囲内で個人の資金を上乗せ拠出できる制度のことです。この制度は平成24年1月の年金確保支援法改正によって実現したもので、退職後の資産形成を支援する画期的な制度といえます。
マッチング拠出制度を利用する際、従業員が個人の資金を拠出するには以下の制限が設けられています。
2点目の拠出限度額は、厚生年金基金などの確定給付型年金を採用していない場合で55,000円、確定給付型年金を採用している場合で27,500円と定められています。
確定給付型年金を実施していない企業(拠出限度額:55,000円)がマッチング拠出制度を採用した場合を考えてみましょう。上記のルールに従うと、従業員が拠出できる掛金は以下のようになります。
従来の企業年金は確定給付年金と呼ばれ、退職後の年金支給額があらかじめ決められていました。その決められた支給額を目標として資産を管理・運用するのは会社側で、仮に運用に失敗しても他の財源で補うなど、従業員には一切影響のない年金制度でした。
一方、確定拠出年金は企業の拠出額が決まっていますが、管理・運用は従業員に任せられます。確定給付年金から確定拠出年金に移行することで、企業側の資産管理に関する負担が軽減されるメリットがあります。
企業型の場合、従業員は個人型と違って自分が掛金を負担する必要がありません。元手が無くても運用次第で将来の年金を増やすことができます。
また、マッチング拠出を行う際は、個人型と同様、加入者が拠出する掛金は全額が所得控除の対象となります。運用益に対しての課税が全くないこともメリットの1つです。
多くのメリットが挙げられる企業型確定拠出年金ですが、運用のリスクを背負うのは加入者である従業員自身です。企業はリスクを軽減できるためメリットとなりますが、従業員は選択する運用商品によっては元本割れを起こして将来の年金額が減ってしまうことを忘れてはいけません。そして、従業員の退職後をしっかり支えるために、企業も従業員に対して資産運用に関する教育を行うことが大切です。
今回は、企業型確定拠出年金制度に関して、個人型との比較やマッチング拠出、そのメリットを解説しました。平成24年にマッチング拠出が可能になったことで、企業と従業員の双方が確定拠出年金を活用し、退職後の安定した生活を送るための準備が可能になりました。確定給付型年金に代わって一般的となりつつある企業型確定給付型年金。そのメリット・デメリットを抑えたうえで、制度の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
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