社内相談窓口とは?設置が必要な理由や設置時のポイント

最近では、社内のパワハラやモラハラが社会的な問題となっているほか、従業員の心身の健康に配慮した経営を行う健康経営が重視されています。従業員が問題を抱えた際に相談できる「社内相談窓口」があることは従業員の健康に配慮した環境づくりにつながります。しかし、設置しただけで従業員が気軽に社内相談窓口を利用できなければ意味がありません。今回は社内相談窓口の設置が必要な理由、社内相談窓口の設置フロー、運用を成功させるポイントについて解説します。

社内相談窓口を設置する企業が増えている

社内相談窓口とは

社内相談窓口は、パワハラやモラハラなどのハラスメント、また仕事や職場環境が起因となるストレスやメンタル不調など、従業員が社内で抱える問題について対応する窓口です。健康経営が注目される昨今、従業員が心身ともに健全に働ける職場環境をつくるために、社内相談窓口のような取り組みが企業から重要視されるようになりました。

社内相談窓口が必要な理由

労働安全衛生法第69条では、事業者は労働者の健康に関する教育や相談を行い、健康を保持増進する措置を取るよう定められています。また、近年は職場におけるパワハラ問題が顕著化されるようになりました。2016年度に厚生労働省が行った「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」では、32.5%の人が「過去3年に勤務先でパワハラを受けたことがある」と回答しています。このような背景から、2019年5月に労働施策総合推進法の改定が行われされ、職場におけるパワハラの防止対策が義務付けられました。2020年6月の施行当初は大企業が対象でしたが、2022年4月からは中小企業においても義務化されています。

ハラスメントについて整理しよう

ハラスメントは、本来「いじめ」や「嫌がらせ」という意味を持ちます。職場で発生しやすく、社内相談窓口での対応が必要となる代表的な3つのハラスメントについて解説します。

  • パワーハラスメント(パワハラ)
    職場におけるパワハラとは、職場における上司と部下といった優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものと定義されています。部下を指導するための適切な言動であれば問題ないため、パワハラに当たるかどうかはその場の状況に応じて客観的に判断しなければなりません。
  • セクシュアルハラスメント(セクハラ)
    職場において労働者本人の意に反する性的な言動により、労働者が不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることをセクハラといいます。性的な冗談を言ったり、身体を触ったりすることはセクハラに該当する行為の1つです。また、容姿や身体的な特徴について批判めいた発言も例外ではありません。男性から女性に対してだけではなく、女性から男性、また同性同士の場合など、性別問わず性的な言動はセクハラとみなされます。
  • マタニティハラスメント(マタハラ)
    マタハラとは、職場で、妊娠や出産、子育てに関する精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、育児休業または介護休業等を取得した労働者の就業環境が害されることを指します。妊娠・出産・育児を理由に、仕事を減らしたり解雇をほのめかしたりする行為はマタハラです。妊娠や出産、育児は大事なライフイベントであるため、職場は業務などに関して十分考慮する必要があります。

    

社内相談窓口の設置フロー

社内相談窓口の方針を決定する

社内相談窓口の設置にあたっては、まず職場の安全衛生委員会などで相談窓口のルールや方針を話し合う必要があります。社内相談窓口は、職場側と従業員側、両者の抱える問題を解決する役割を持ちます。職場の現状を踏まえ、社内相談窓口に何を期待するか、どのような問題を解決してもらいたいかを整理しましょう。また、アンケートなどを行い、従業員が抱えている問題を洗い出すことも必要です。

相談対応を行う体制を構築する

社内相談窓口設置の方針が決定した後は、実際に対応する体制構築の整備を進めます。スムーズな対応を実現するには、以下の内容を定めることが重要です。

  • 相談対応担当の決定、研修
  • 相談時間や場所、方法などの枠組み
  • 予約方法や予約時間など申し込みのシステム
  • 産業医・保健師・人事労務スタッフなど事業場内産業保健スタッフとの連携
  • クリニックなどの医療機関や地域保健機関など事業場外資源との連携

従業員や家族へ周知する

体制が整ったら、従業員や家族に社内相談窓口について周知しましょう。相談対応者についてや相談可能な内容、相談後の対応などを具体的に理解してもらい、従業員が利用しやすい環境を整えることが大切です。社内イントラネットの活用やポスターの掲示、リーフレットの配布など従業員の目に入りやすい方法で定期的に告知すれば、社内相談窓口の存在が浸透しやすくなります。また、従業員の家族が従業員本人のメンタル不調にいち早く気付くケースも珍しくありません。そのため、家族も目を通す機会がある社内報などにも社内相談窓口について記載しておくと効果的です。

相談窓口の運用をスタートする

従業員に社内相談窓口について正しく認識してもらったうえで、社内相談窓口の運用をスタートします。ハラスメントは、部下が上司から受けているケースが比較的多く認められます。弱い立場の従業員が社内で問題を告発することは難しく、勇気がいる行動です。従業員が安心して相談し、問題を告発できるような運用を心がけましょう。

    

社内相談窓口の運用を成功させるポイント

相談対応者への研修を実施する

相談対応者は、相談者に共感しながら中立的な立場で対応する必要があります。相談者に同情して肩入れしたり反対に批判的な態度を取ったりすると、相談者の意思が正しく伝わらず問題が解決できなくなるリスクが高まります。相談対応者が相談を受けた際に、適切な対応を行えるようにするためにも、事前に研修を実施することが重要です。

相談対応マニュアルを作成する

ハラスメントの相談対応では、事実確認が重要となります。しかし、事実確認に重点を置きすぎるあまり、担当者によって対応の仕方が異なると混乱を招きかねません。相談者が安心して話せる場を作るために、相談の前後にしておくべき準備や、対応の流れについて統一した基準が必要です。相談対応をスムーズに進めるためにもマニュアルを作成しましょう。

相談しやすい環境を整備する

相談に対するハードルを下げるため、気軽に相談しやすい環境整備が重要です。相談者の考え方や性格だけではなく、相談内容によっても心理的な負担感は変化します。対面ではなかなか話しにくいという相談者のために、メールやチャット、電話相談などの方法も有効です。また、相談者が人目を気にしないで窓口を訪問できるよう、相談時間を就業時間外にするなどの工夫も必要です。

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まとめ

労働施策総合推進法の改定により、社内相談窓口の設置は企業にとって重要な課題となっています。ただし、社内相談窓口は義務として設置しておけばよいというわけではありません。職場内でのハラスメントやストレスを軽減し、従業員にとってより働きやすい健全な職場環境をつくることが社内相談窓口の役割です。利用環境や運用を工夫して、従業員の心の拠りどころとなるような社内相談窓口を目指しましょう。

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