育児・介護休業法が改正され、平成29年1月より施行されます。これにより、仕事と育児・介護の両立に関する支援制度がさらに充実することになりました。
制度改正に伴い、各企業においては、従業員への周知や就業規則の改訂などの対応が必要となります。今回は、改正育児・介護休業法の具体的な内容や、企業が講ずべき措置について解説します。
目次
育児・介護休業法は、育児休業・介護休業に関する制度や子の看護休暇・介護休暇に関する制度を設けるとともに、育児・介護を行いやすくするために所定労働時間等に関して事業主が講ずべき措置を定めたり、育児・介護を行う労働者等に対する支援措置を講じたりすることなどにより、育児や介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるよう支援することで、その福祉を増進するとともに、経済や社会の発展に資することを目的として定められた法律です。正式名称は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。
少子化が進行し、人口減少時代を迎えている局面の中で、持続可能で安心できる社会を作るためには、「就労」と「結婚・出産・子育て」、あるいは「就労」と「介護」の二者択一構造を解消し、仕事と生活の調和を実現することが必要不可欠です。そこで、育児・介護を理由とする離職を防止し、仕事と家庭が両立しやすい就業環境の整備等をさらに進めていくため、平成28年3月に育児・介護休業法が改正されました。改正法は、平成29年1月1日から施行されることになっています。
関連記事:
・雇用のルールを完全マスター!労働関連制度まとめ<前編>
・雇用のルールを完全マスター!労働関連制度まとめ<後編>
改正育児・介護休業法のポイントは、以下のとおりです。
要介護状態にある対象家族を介護するための介護休業について、分割して取得することが可能になります。
改正前の制度では、介護休業について、介護を必要とする家族1人につき通算93日まで、原則1回に限り取得可能となっており、休業期間の分割は認められていませんでした。
今回の改正により、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業を分割して取得することができるようになります。
介護休暇について、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能になります。
介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者が、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇です。改正前の制度では、介護休暇は1日単位での取得のみとなっていましたが、今回の改正により、1日単位または半日単位での取得が可能になります。
介護のための所定労働時間の短縮措置について、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能になります。
介護のための所定労働時間の短縮措置とは、要介護状態にある対象家族の介護をする労働者に関して、事業主は、①所定労働時間の短縮措置、②フレックスタイム制度、③始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、④労働者が利用する介護サービス費用の助成等のうち、いずれかの措置を選択して講じなければならないという仕組みです。
改正前の制度では、この措置につき、介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能となっていました。今回の改正により、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能になります。
対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまでの期間について、残業の免除が受けられる制度が新設されます。
改正前においても、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求した場合には、事業主は、1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働や、深夜業をさせてはならないという規定がありました。
今回の改正では、これらの規定に加えて、介護を要する労働者が請求した場合、介護の必要がなくなるまでの期間について、残業の免除が受けられる規定が新設されます。
育児休業について、有期契約労働者が取得できる要件が緩和され、将来的に雇用契約があるかどうか分からない人でも取得可能となります。
育児休業とは、子を養育するためにする休業のことをいい、原則として子が出生した日から1歳に達する日までの期間について取得することができます。
改正前の制度では、有期契約労働者については、以下の要件を満たす場合に育児休業の取得が可能とされていました。
しかし、改正後は以下の要件に緩和されます。
これにより、子供が1歳になった後に雇用契約があるかどうか分からない有期契約労働者でも、育児休業が取得できるようになります。
子の看護休暇について、時間単位での取得が可能となります。
子の看護休暇は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで子の看護等のために取得できる休暇です。
改正前の制度では、子の看護休暇は半日単位での取得となっていましたが、2021年1月1日より、時間単位での取得が可能となります。
育児休業等の対象となる子の範囲が拡大します。
改正前の制度では、育児休業や子の看護休暇などが取得できる対象は、法律上の親子関係がある実子・養子に限られていましたが、改正後は、特別養子縁組の監護期間中の子や養子縁組里親に委託されている子等も新たに対象になります。
いわゆるマタハラ(女性労働者に対する、妊娠・出産等を理由とした嫌がらせ)やパタハラ(男性労働者に対する、育児休業の取得等を理由とした嫌がらせ)などを防止するために、企業が措置を講じることが義務化されます。
改正前の制度でも、事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益な取り扱いは禁じられていました。今回の改正では、これらに加えて、上司や同僚からの妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等を防止する措置を講じることを、事業主に新たに義務付けています。
法改正により、仕事と育児・介護の両立を支援する制度は整いましたが、従業員が実際にこのような制度をきちんと活用できることが大切です。制度について、従業員に対する周知をしっかりと行うようにしましょう。
育児・介護休業や子の看護休暇、介護休暇、時間外労働、所定外労働の制限等については、あらかじめ就業規則などに制度を定めておく必要があります。必要な規定がきちんと整備されているか、改めて確認を行いましょう。
また、育児・介護休業法の改正に伴って、各企業においては就業規則の改訂等の対応が必要になります。厚生労働省は、「育児・介護休業等に関する規則の規定例」を公開していますので、こちらを参考するとよいでしょう。
育児・介護休業法の改正により、仕事と育児・介護の両立に関する支援制度が大幅に変わります。各企業においては、就業規則の改訂等の必要な措置を講じるとともに、法律に則って適切に制度を運用していくことが必要です。
また、従業員が制度を利用しやすくするよう、企業全体で意識をしていく必要があります。改正法の内容を従業員にしっかりと周知するとともに、該当の従業員には声かけをするなどにより、制度の利用促進を図るようにしましょう。
This website uses cookies.