財形貯蓄制度を導入し、福利厚生を充実させましょう!

公開日:2017.4.14

労働者の福利厚生の一つとして、労働者の財産形成を企業や国が支援する「財形貯蓄制度」があります。財形貯蓄制度は、労働者にとって手軽に貯蓄を行うことができ、税制上の優遇措置も受けられます。企業にとっては、財形貯蓄制度を取り入れることで、採用力向上や従業員のモチベーション向上・定着率向上に役立ちます。

今回は、財形貯蓄制度の概要や種類、導入手続きについて解説します。

 

財形貯蓄制度とは

財形貯蓄制度は、労働者が退職後の生活の安定や住宅の取得、その他の財産形成のために行う貯蓄について企業と国が援助する制度であり、「勤労者財産形成促進法」に基づいて行われています。

財形貯蓄制度では、企業が労働者に支払う給与から一定額を天引きし、金融機関に払い込むことによって貯蓄を行います。給与からの天引きにより貯蓄されるため、労働者は手間をかけることなく安定的・計画的に貯蓄を行うことができます。また、老後資金や住宅取得を目的とした貯蓄の場合、利子が非課税となる税制上の優遇措置が受けられるというメリットもあります。

企業にとって、財形貯蓄制度の導入は福利厚生の充実につながり、企業の魅力向上や従業員の定着率向上、優秀な人材確保などの効果を得ることができます。

 

財形貯蓄制度の種類

財形貯蓄制度には、その目的によって「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3種類があります。

 

一般財形貯蓄

一般財形貯蓄は、貯蓄目的が限定されていない財形貯蓄です。労働者と金融機関等とが契約を結び、原則3年以上の期間にわたって定期的に積み立てを行います。

一般財形貯蓄は、使用目的が限定されていないため、車の購入費用や海外旅行費用、結婚資金や教育資金など、幅広い目的に使用することができます。また、複数の契約もできることから、目的別に貯蓄することも可能です。

契約期間は原則3年以上となりますが、貯蓄開始から1年が経過した後は、利用者は自由に払い出し可能となります。

 

財形年金貯蓄

財形年金貯蓄は、老後の資金づくりを目的とした財形貯蓄です。満55歳未満の労働者が利用でき、金融機関等と契約を結んで5年以上の期間にわたって定期的に積み立てを行います。貯蓄した資金は、60歳以降の所定の時期から5年以上の期間にわたり、年金として受け取ることができます。

財形年金貯蓄は、次に説明する財形住宅貯蓄と合わせ、貯蓄残高550万円(保険等の商品の場合は払込額385万円)まで、利子等が非課税となる税制上の優遇措置を受けられます。

ただし、財形年金貯蓄を年金以外で払い出した場合、利子等に対する非課税措置はなくなり、残額も「財形年金貯蓄」として認められません。このとき、預貯金などの商品は過去5年間の利子に課税され、保険などの商品は差益について課税されます。

 

財形住宅貯蓄

財形住宅貯蓄は、マイホームの取得やリフォームなど、住まいの資金づくりを利用目的とした財形貯蓄です。満55歳未満の労働者が利用でき、金融機関等と契約を結んで5年以上の期間にわたって定期的に積み立てを行います。貯蓄した資金は、マイホームの建設や購入、工事費が75万円を超えるリフォームなどに利用することができます。

財形住宅貯蓄は、財形年金貯蓄と合わせ、貯蓄残高550万円(保険等の商品の場合は払込額385万円)まで、利子等が非課税となる税制上の優遇措置を受けられます。

ただし、財形住宅貯蓄を住宅の建設・購入・リフォーム以外で払い出した場合、利子等に対する非課税措置はなくなります。このとき、預貯金の場合は払い出しが行われた月から5年間さかのぼり、この間に生じた利子のすべてに課税され、保険商品の場合は全期間の差益に課税されます。

 

財形貯蓄制度の導入手続き

財形貯蓄制度は、従業員を1人でも雇用していれば導入することが可能です。財形貯蓄制度を導入するためには、下記の手続きが必要です。

 

取扱金融機関の選定・事務分担の取り決め

福利厚生制度として財形貯蓄制度の導入を決定したら、財形貯蓄制度の取扱金融機関を選定します。また、財形貯蓄制度をスムーズに実施・運営するため、取扱金融機関と事務分担について取り決めるようにしましょう。

 

労使協定の締結・社内規程の整備

財形貯蓄では、企業が従業員の給与の一部を控除することになることから、労使協定を締結することが必要です。また、財形貯蓄制度の取扱金融機関や申込対象者、預入の時期・金額や払い出しの受付時期等については、財形貯蓄規程などの社内規程に定めるようにしましょう。

 

従業員への説明・募集

従業員に対して財形貯蓄制度に関する説明を行い、契約希望者を募ります。財形貯蓄制度は、パートやアルバイトなど正社員以外の従業員も利用可能な制度であることから、これらの従業員もぜひ対象とすることが望まれます。契約希望者が集まったら申込書を提出してもらい、これを取扱金融機関に提出して契約を締結します。

 

財形貯蓄制度の運営(賃金控除・払込代行)

従業員の契約内容に基づき、個々の積立金額を確認しながら毎月の給与やボーナスから控除し、従業員に代わって積立金を取扱金融機関に払い込みます。

 

財形持家転貸融資制度

財形貯蓄を行っている労働者は、「財形持家転貸融資」という住宅ローンを利用することができます。財形持家転貸融資は、財形貯蓄を行っている労働者のマイホーム取得資金を、勤労者退職金共済機構が企業を通じて融資する公的融資制度であり、労働者は財形貯蓄の残高に応じた融資を長期・低利で受けることができます。

財形持家転貸融資制度を導入することで、企業は大きな負担を負うことなく社内融資制度の充実を図ることができます。

財形持家転貸融資制度を導入するためには、以下の条件を満たしていることが必要です。

 

  • 一般財形貯蓄・財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄のいずれかの制度を導入していること
  • 従業員に対して利子補給金の支給等の「負担軽減措置」を行っていること
  • 社内融資規程として「財形持家転貸融資規程」を作成していること

 

福利厚生会社の利用

財形持家転貸融資制度を導入するにあたり、「福利厚生会社」と契約して福利厚生会社に融資業務を委託することも可能です。福利厚生会社を利用する場合、上記の負担軽減措置は必要ありません。

また、企業が債権・債務・保証の当事者となる必要がないことや、事務負担が軽減されることなどもメリットとして挙げられます。

 

 

まとめ

財形貯蓄制度を導入することで、企業は大きな負担を負うことなく福利厚生制度を充実させることができ、採用力向上や従業員の定着率向上に役立てることができます。

財形貯蓄制度は、従業員を1人でも雇用していれば導入することが可能ですので、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、財形貯蓄制度と同様に企業が従業員の給与を天引きして貯蓄する制度として「社内預金制度」があります。社内預金制度については下記の記事で解説していますので、こちらも併せて確認してください。

 

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