2016年9月27日に、政府の「働き方改革実現会議」の初会合が開催され、働き方改革に向けた議論が開始されました。今回の議論の中で、とりわけ高い注目を集めているのが「36(さぶろく)協定」の運用見直しです。
会議では、残業時間の無制限の延長を事実上認めている36協定の運用を見直し、残業時間の上限規制を設けることが検討されます。私たちの働き方は、どう変わるのでしょうか? 今回は、36協定の運用見直しについて説明します。
「働き方改革」を取り巻く現状
2016年8月の内閣改造で、「働き方改革」担当大臣というポストが新たに設置されました。「働き方改革」は政府の最重要課題の一つと位置づけられ、9月には首相を議長とした「働き方改革実現会議」が発足。9月27日に、官邸で第1回目の会合が開かれました。
「働き方改革実現会議」では、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現、高齢者やがん患者の就業促進、柔軟な働き方の実現など様々なテーマについて議論を行い、2016年度内にも働き方改革の具体的な実行計画を取りまとめることとされています。
今回の議論の中でも特に高い注目を集めているのが、「36(さぶろく)協定」の運用見直しです。現在は、労使間で36協定を締結すれば残業時間を事実上無制限に延長できることになっていますが、働き方改革実現会議ではその運用を見直し、具体的な残業時間の上限規制を設けることが検討されています。
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36(さぶろく)協定とは?
今回見直しが検討されている「36(さぶろく)協定」とは、一体どのようなものなのでしょうか? 36協定とは、労働時間の延長に関する労使協定のことをいいます。
労働基準法では、原則として、労働時間の上限を1日8時間、1週40時間と定めており、これを「法定労働時間」といいます。
ただし、使用者と労働者が労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出た場合は、協定で定めるところにより、労働者を時間外や休日に労働させることができるとされています。この労使協定は、労働基準法第36条に定められていることから、一般的に「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。
36協定を締結すると、労働時間を延長することができますが、無制限に延長できるわけではありません。延長時間は厚生労働大臣告示により、「1ヶ月45時間」「1年360時間」等と上限が規定されており、これを「限度時間」といいます。
一方で、予算・決算業務やボーナス商戦に伴う業務の繁忙、納期の逼迫などといった特別の事情の発生が予想される場合、「特別条項付き36協定」を結ぶことで、例外的に年間最大6ヶ月まで限度時間を超えて労働者を働かせることができます。
そして、特別条項については、その上限時間が規定されていません。すなわち、特別条項付き36協定を締結すれば、1年のうち最大6ヶ月までの間、事実上無制限に労働時間を延長することができるのです。
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36協定の運用見直しで、働き方はどう変わる?
働き方改革実現会議では、36協定の運用を見直し、労働時間の延長時間に上限規制を設定することが議論されています。これにより、私たちの働き方はどう変わるのでしょうか?
厚生労働省の調査によると、36協定を締結している事業場の割合は55.2%にのぼりますが、延長時間の定めのある事業場における通常の延長時間は、ほぼ100%の事業場で限度時間の範囲内に収まっています。
その一方で、特別条項付きの協定を締結している事業場の割合は、大企業を中心に全体の22.4%にのぼります。そして、特別条項がある事業場のうち、20%超の事業場において、特別延長時間が80時間超に設定されているのです。
具体的にどの程度の残業規制が設定されるかは現在のところ不明ですが、企業によっては、特別延長時間を見直す必要が生じることが予想されます。もちろん、実際の残業時間も制限されることとなるでしょう。
長時間労働の見直しを行いましょう!
厚生労働省の調査結果によると、残業削減の取組により所定外労働時間が短縮した企業は、自社の労働生産性が高いと回答する割合が高いといいます。長時間労働是正の必要性は一般的に浸透しつつあり、実際に超過勤務縮減に取り組む企業も増加しています。
東京都(都庁)では、知事主導のもと超過勤務縮減に取り組み、2016年10月中旬以降は原則として午後8時以降の残業を禁止することとしています。また、大手IT企業も、週休3日制の導入を検討していることを表明しました。
働き方改革は政府の最大のチャレンジと位置づけられており、今後は各企業にも、働き方改革が強く求められてくることが予想されます。会議での議論に先がけて、できることから率先して取り組んでいくことが重要であるといえるでしょう。
まとめ
かつて高度経済成長時代にもてはやされた“モーレツ社員”は、もはや時代遅れ。これからは、長時間労働を見直して労働生産性を高め、ワークライフバランスを実現することがトレンドです。総務が中心となって、自分たちの「働き方改革」を進めていきましょう!