感染症には空気感染や飛沫感染、接触感染といった感染経路がありますが、オフィスで感染症対策に取り組む際には特に接触感染に注意する必要があります。接触感染を防ぐためには、従業員が触れることの多いデスクやドア、コピー機などの消毒をこまめに行うことが重要です。オフィス用品によっては損傷の原因となるような消毒液もあるため、正しい方法で消毒を行えているか確認してみましょう。今回は、オフィスで重点的に消毒すべきポイントやオフィス用品別の消毒液と消毒方法、感染症対策のための消毒ルールの作成方法について解説していきます。
目次
オフィスで重点的に消毒すべきポイント
デスク周り
人が密集しやすいデスク周りは、飛沫感染や接触感染が発生するリスクが高い場所です。パソコンのマウスやキーボード、机の上などはウイルスや細菌が付着しやすく、人の手が触れることで接触感染を起こすリスクが高くなります。デスクで食事をとる場合などは特に気を付けて消毒を行いましょう。
トイレ
排泄物にはウイルスや細菌が含まれる場合があります。症状が出ていない感染者がオフィスのトイレを利用している可能性もあり、トイレでは特に接触感染に注意が必要です。そのため、便座や水を流すレバー、ペーパーホルダー、ドアノブや手すりなどは、重点的に消毒を行いましょう。人の手が触れる場所を全て清掃・消毒することで、接触感染のリスクを低減できます。
エントランス
エントランスは頻繁に人が出入りするため、外部からウイルスや細菌が持ち込まれるリスクがあります。感染者が出入りしていないとしても、外部の感染リスクの高い場所を通ったり、不特定多数の人が触れる場所に触ったりした人が、知らないうちにウイルスを持ち込む可能性があります。エントランスの受付カウンターや椅子などを定期的に消毒することで、オフィス内にウイルスを運び込まない意識が大切です。
ドアノブやスイッチなど人が触れる場所
プラスチックなどの非多孔質な素材の上では、ウイルスは数日間に渡り、感染力を保ったまま生存することができるといわれています。そのため、オフィス内で人の手が触れやすい場所は定期的に消毒を実施しなくてはなりません。できれば一日に数回行うと良いでしょう。また、意識せずに触れている可能性のあるアクリル板の仕切りやビニールカーテンは、見逃されがちな場所なので、忘れずに消毒しましょう。
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消毒液に関する基礎知識
主な消毒液
消毒に使う薬品で一番に思い浮かぶのが「アルコール」でしょう。アルコールの主成分はエタノールです。エタノールの消毒の仕組みは、ウイルスや細菌類の生体膜を透過してタンパク質を変性させ、気化する際に水分を奪うことが殺菌効果として働きます。エタノールは濃度70%以上95%以下で最も殺菌効果を発揮するといわれていますが、濃度60%以上でもウイルスや細菌に対し一定の効果があることが確認されています。家庭内で消毒用エタノールが多く使われているように、オフィスでの消毒にもエタノールを使用することができます。
その他では、「界面活性剤」にも殺菌作用があります。「界面活性剤」は石鹸や洗剤の主成分であるため、手軽に入手でき、素材を傷めるリスクが低いメリットがあります。ただし、真菌類など一部のウイルスや細菌には効果がないため注意しましょう。
使用不可の薬品
以下の薬品をオフィス用品の消毒に使用すると製品が破損、故障するリスクが高いので、使用は避けてください。
- 次亜塩素酸ナトリウム
いわゆる漂白剤として市販されています。細菌類、真菌類、ウイルス等の病原体に効果があり、さまざまな箇所の殺菌に用いられます。しかし、金属腐の食性があるため、OA機器をはじめとするオフィス用品の消毒には向きません。
なお、「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」は異なる物質なので、混同しないように注意が必要です。「次亜塩素酸水」は「次亜塩素酸ナトリウム」よりも金属の腐食性が弱いため、拭き取る程度であればオフィス用品の消毒にも使うことができます。
- 過酸化物
オキシドールとして傷口の消毒液として使われたり、衣料用酸素系漂白剤の原料として使われたりします。オキシドールは生体と接触すると、分解して大量の酸素を発生させます。この酸素の泡が殺菌効果として働きます。オキシドールはプラスチックの黄ばみを取る際に活用されることもありますが、金属の腐食性があるので、オフィス用品の消毒に使わない方が無難でしょう。
- 高濃度のエタノール
消毒用エタノールはWebカメラのレンズを除きオフィス用品全般の消毒に有効ですが、濃度が高すぎる場合コーティングや油性の印字を剥がす作用があるので注意しましょう。
オフィス用品別の消毒液と消毒方法
パソコン本体やマウス
パソコンやマウスなどにも、消毒用エタノールが有効です。実際に消毒作業を行う際には、消毒用エタノールをマイクロファイバークロスなどに染み込ませてから消毒する物の表面を軽く拭き取りましょう。消毒液を用いる際には手袋を装着することで、ウイルスとの接触や手荒れを防ぐことができます。消毒作業を行う際の注意点としては、消毒用エタノールや中性洗剤などをパソコンやマウスなどに直接吹きかけないように注意して作業を行うことが大事です。通電している部分に液体が入り込んだ場合、感電事故や火災などを引き起こすリスクがあります。
キーボード
キーボードの消毒を行う際には、消毒用エタノールを染み込ませたマイクロファイバークロスやOA機器用除菌ウェットティッシュでキー部分を軽く拭き取ります。キーボードに水分は厳禁なので、エタノールがかからないように気を付けましょう。また、拭き取る際に毛が落ちやすい布を使うと細かい繊維が入り込み故障の原因になります。エアダスターや掃除機などの使用も、かえってゴミが内部に入り込み故障を引き起こすリスクがあるため、キーの隙間の掃除にはブラシを使いましょう。
Webカメラ
Webカメラは、柔らかい布で乾拭きします。多くのカメラのレンズは、光の透過率を上げるためレンズコーティングがされています。消毒用アルコールを使うと、レンズコーティングが剥がれ、カメラの映りが悪くなったり、故障したりする原因になるので、消毒液や洗剤、水などは使わずに清掃を行うようにしましょう。
液晶ディスプレイ
液晶ディスプレイの消毒を行う際には、消毒用エタノールをマイクロファイバークロスに染み込ませてから軽く拭き取ります。液晶ディスプレイは強くこすると表面が損傷したり割れたりするリスクがあるので、軽く拭き取ることを心がけましょう。液晶の隙間から消毒液が入ると故障の原因になるので、液晶に向けて直接スプレーしないように注意を払う必要があります。
感染症対策のための消毒ルールの作成方法
チェックリストを作成する
消毒・除菌を行う場所や方法、換気を実施するタイミングなどを決めておくことで、感染症対策の効果を高めやすくなります。たとえば、オフィスの換気は1時間に2回以上行うのが望ましいとされているため、換気をする人を当番制で決めてしまうのも良い方法です。手指の消毒に関しては、オフィス入口、トイレ入口など、社員の動線を考慮して複数配置するのが効果的です。消毒作業は毎日のことですから、このように必要な作業をチェックリストにまとめておくと便利です。
状況に応じて内容をアップデートする
新しいオフィス用品を導入したり、業務内容を変更したりするなど、職場に変化があった際には、消毒ルールやチェックリストのアップデートを検討することが大切です。厚生労働省が定める、消毒・減菌に関する手引き(ガイドライン)の見直しが行われた場合にも、自社のオフィス内で改善が必要な場所は無いか確認し、消毒ルールのアップデートを行うことが望ましいです。近年はガイドライン見直しが頻繁に実施されているので、業種別のガイドラインは定期的に確認することをおすすめします。
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まとめ
オフィスは接触感染や飛沫感染が発生しやすい場所です。さらに、多くの社員は電車やバスなど、人ごみの中を通って通勤してくるため、感染者でなくともウイルスを運び込んでしまうリスクがあります。そのため、ウイルスや細菌を完全にシャットアウトするのは難しいといえるでしょう。
そこで、オフィス内や手指の消毒を徹底することで、感染のリスクを低減することが重要になります。こうした取り組みは社員の健康を守るためだけでなく、社員が安心して出社するためにも大切です。今一度社内の消毒ルールを見直し、社員で力を合わせて感染リスクの少ないオフィスを構築しましょう。