企業には、従業員が健康で安全に働けるよう対策をする安全配慮義務があります。緊急時の従業員の安否確認を行うことは安全配慮義務の一環として含まれます。安否確認システムを導入し、有事の際でも従業員の安全と健康を把握できるようにしましょう。今回は、安全配慮義務の意味や安否確認システムの主な機能、コロナ禍における安否確認の重要性について解説していきます。
安全配慮義務とは
従業員が雇用主の指示のもと労働をするということは、その瞬間は従業員の行動や思考は雇用主の支配下にあるといえます。そのため、雇用主が従業員に労働させるということは、業務を遂行させると同時に、その過程において物的・人的な労働災害から守らなくてはなりません。このような義務を安全配慮義務といいます。
このような安全配慮義務のため施策として、従業員の安否確認を行うためのシステムの導入が推奨されています。安全確認システムとは、緊急事態が発生した場合、従業員の携帯電話への自動メール配信機能や安否報告に関する自動集計機能によって全従業員の安否確認を迅速かつ容易に行うサービスです。新型コロナウイルス感染症の流行においては、職場はクラスター発生の原因にもなるため、企業には従業員の健康管理により一層の気を配る必要がありますが、在宅勤務や自宅待機の従業員が増えれば、一人一人の状況を把握するのは困難です。そのため、安否確認のシステムを利用して、従業員の健康管理を行う企業が増えています。
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安否確認システムの主な機能
一斉連絡機能
災害など、緊急事態発生時に事前に登録しておいた全従業員の連絡先へ安否の回答依頼を一斉配信する機能です。アプリやガラケー、パソコンなどに対応しているため、インターネットやメール、電話などあらゆる手段での安否報告が可能です。また、プライバシー保護のため、安否確認の通知先として登録しているメールアドレスはシステム管理者が閲覧できないようになっています。
自動送信機能
地震や津波、特別警報など気象庁からの災害情報に連動して、従業員に自動的にメールが送信される機能です。安否確認システムのサーバー上から自動送信されるため、システム管理者が災害時にシステム操作できない、インターネット環境がない、などの場合でも自動連絡が可能です。
グループ機能
企業グループにおいて、本社の管理者がグループ全体の安否確認結果を閲覧できる機能です。この機能によって、グループ間での人的支援や備蓄品の相互手配などが可能になります。企業グループ全体だけでなく、特定の組織や部署、取引先、サプライヤー企業など、グループごとの安否確認ができる機能です。
家族の安否確認・代理回答機能
家族のメールアドレスの登録によって、家族間限定の専用掲示板を利用できる機能です。1人の従業員につき、複数名の家族の登録ができます。また、従業員に万が一のことがあった場合に、本人に代わって職場に連絡できる家族代理回答機能が備わっている安否確認システムもあります。
自動集計機能
一斉連絡やアンケートに対する従業員からの回答をシステムによって自動集計できる機能です。管理者は、無事と回答した人や出社可能な人の数などを管理画面で確認できます。また、集計結果はPDFでダウンロードできるため、被害状況の報告書の迅速な作成にも役立てることができます。
模擬訓練機能
想定する災害の内容や対象者、訓練日を事前に設定し、模擬訓練を行う機能です。社内で定期的に安否確認の模擬訓練を行うことで、実際の災害時でも安否確認がスムーズになります。安否確認システムのなかには、模擬訓練に伴う訓練計画や実施後の評価、改善提案などのコンサルティングを実施しているものもあります。
感染症確認機能
新型コロナウイルス感染症拡大の対策として、感染症確認機能を備えている安全確認システムもあります。選択回答式の病状報告アンケートによって、従業員やその家族の感染状況を速やかに把握することが可能です。万が一、感染者が発生した場合は、施設立ち入り禁止や出社禁止の指示、感染経路確認、感染者との接触の有無の確認などにも活用できます。
コロナ禍における安否確認の重要性
新型コロナウイルス感染症による職場クラスターが発生した場合、企業は安全配慮義務を果たしていたかどうかを厳しく問われる可能性があります。満足に感染防止策を講じていなかった場合は、訴訟のリスクや事業継続が困難になる可能性もあります。このような状況を回避するために、施策の一つとして安否確認の仕組みを整えるということは重要です。また、事業は従業員の労働によって支えられているものであるため、安否確認で従業員の安全の確認をすることは、事業継続の可否の判断にも繋がります。
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まとめ
従来の安否確認は、地震などの災害時に従業員の状況を確認することが主な目的でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、感染しているのか否かという情報だけでなく、家族の体調はどうか、いつ出社したか、など、感染の可能性や経路を想定するための情報までもが必要とされるようになりました。自社に合う機能を備えた安全確認システムを導入し、従業員の安全を確保できるような体制を整えましょう。