コロナ禍において、感染症対策の一環として時差出勤を導入する企業が増えています。時差出勤には、通勤のストレス解消やワークライフバランスの向上、定時に帰ることへの抵抗を無くすことなど様々なメリットがあります。一方で、従業員ごとに始業と終業の時間が異なることから、残業時間の把握や一斉休憩のルールが困難になってしまうため、それぞれ対策を行いましょう。今回は、コロナ禍における時差出勤のメリットや残業時間把握のポイント、労務手続きについて解説していきます。
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時差出勤を取り入れることで、電車やバスなどの公共交通機関の混雑する時間帯を避けることができます。そのため、従業員の通勤時の負担を軽減し、ストレスを緩和することができます。通勤ラッシュの時間帯は駅や車内が混雑しやすいため、この時間帯を避けることは、新型コロナウイルス感染症への対策としても有効です。
時差出勤では、通常の勤務時間よりも「早く出て、早く帰る」パターンと、「遅く出て、遅く帰る」パターンが想定されますが、いくつかの勤務パターンの中から従業員が自由に選択できるため、家族と過ごす時間や趣味の時間がとれるようになります。そのため、時差出勤は従業員のワークライフバランスの向上に繋がるといわれています。また、多様な所定労働時間があることで、定時に退社しにくいと感じていた従業員も、気にせず帰れるようになる効果もあります。
通勤の負担が軽減され、ワークライフバランスが保てるようになることで、従業員のモチベーションが上がり、労働生産性の向上が期待できます。また、柔軟性のある働き方は、従業員の満足度に繋がるでしょう。企業は、時差出勤が業務改善のきっかけとなるとともに、優秀な人材の確保や雇用継続などのメリットを得られます。
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時差出勤の場合、従業員ごとに出退勤時間がことなるため、従業員ごとの実労働時間を把握しておかなければなりません。実労働時間の把握は、タイムカードやパソコンの使用時間の記録などの客観的な記録が適していますが、より効率的・正確に把握するためには勤怠管理システムの導入が望ましいでしょう。
時差出勤によって始業時刻を遅らせた結果、勤務時間が深夜時間帯にかかってくる可能性があります。午後10時から翌日午前5時までの間に労働させる場合は、深夜割増賃金として25%以上を上乗せして支払う義務があるので注意が必要です。また、時差出勤で始業時刻が遅くなり、残業もする場合は、深夜労働と時間外労働、両方の割増賃金を支払わなければなりません。さらに、出社時間を早めた場合には、終業時刻になってもつい仕事を続けてしまい、かえって残業時間が増えてしまうケースもあるため、注意が必要です。
労働基準法において、労働時間が6時間を超えて8時間以下の場合は最低限でも45分、8時間を超える場合は最低限でも1時間の休憩を一斉に与えなければならないとされています。しかし、時差出勤の場合は一斉休憩が難しいため、就業規則における休憩の項目について変更が必要です。この場合は労働基準法第34条第1項「一斉休憩の例外」に従い、労使協定の締結を行う必要があります。この協定は労働基準監督署への届出が不要であるため、時差出勤の導入は比較的簡単にできるといって良いでしょう。なお、運輸交通業や商業、金融・広告業、その他の該当業種では一斉休憩が適用外とされているため、労使協定の締結は必要ありません。
就業規則上に勤務場所や就業時間の変更の可能性が定められていれば、時差出勤についての具体的に規定は必要ありません。就業規則の、「労働時間」の項目がある箇所に、「業務の都合その他やむを得ない事情がある場合は、これらを繰り上げまたは繰り下げることがあります」といった趣旨の文言があるかどうか確認しましょう。もし無い場合は、就業規則の変更が必要です。
また、労働契約法第8条、第9条により、「従業員の個別同意なく、就業規則の変更により労働条件を不利益に変更することは原則としてできない」とされていますが、時差出勤の導入による不利益は、あったとしても、その程度は大きくないと考えられますし、新型コロナウイルス感染症の予防という合理的な理由があることから、従業員の個別合意は不要とされています。
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新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、多くの企業が従業員の働き方について変化を迫られています。また、政府が主導する「働き方改革」においても、企業が柔軟な働き方を認めていくことで、生産性や従業員満足度が向上することが謳われています。このような働き方の変化には、デメリットばかりではなく、メリットも大きいことに気付いた方も多いでしょう。この機会に、自社に合った働き方を模索し、感染対策と従業員満足度をどちらも向上する働き方を検討してみてはいかがでしょうか。
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